34話 ゴブリンの村長

　俺の名前はグリード、この村の村長をやっている。
　俺、そしてこの村のゴブリン達は他のゴブリンと比べて頭が良い。
それは俺が知能魔王だからだ。

　そもそもなぜゴブリンであるこの俺が魔王になれたのか？
正直俺にも分からない。
知能魔王で叡智を手に入れたこの俺がだ。
なんとも皮肉な話であろう。
　ただ、昔から俺は、ゴブリンにしては珍しくいろいろなことに疑問を持ったことが関係しているのでは？と今では考えている。
　なぜ俺達は他の生き物を殺し喰らうのか？
　なぜ仲間達は勝てるはずも無い相手に戦いを挑むのか？
　なぜ仲間達はたくさん死んでいるのに俺は生きているのか？
　なぜ俺は今ここに居るのか？
　なぜ俺はこの世界に生まれたのか？
もしかしたら俺は、ゴブリンとして生まれないはずだったのかもしれない。

　生まれながらにしてゴブリンには無い知性を持ち、気付かれないように敵を殺し、ゴブリンには使えないはずのSPを使う。
疑問の答えを得るために育てたスキルが王ノ叡智に成ったとき、知能魔王の卵を授かった。
　そのとき俺は、ハイゴブリンに進化した。
スキルが一定個数貯まったことにより、進化することが出来たのだ。
　進化したことにより、寿命が伸びた。
そして長く生き、王ノ叡智が帝王ノ叡智に成り、神ノ叡智に進化したとき、知能魔王の卵が孵化した。
そして俺は、魔王種に進化した。
　基本的に魔王種には寿命が無い。
つまり、殺されない限り生き続けるのだ。
　俺ははさらに長く生きた。
　いつの間にか周りのゴブリン達から慕われるようになった。
本来ゴブリンには慕うという感情が無い。
知能魔王の配下に対する能力が発動したのだ。
つまり、この村のゴブリン達は全て俺の配下である。

　俺は配下のゴブリン達と協力して村を作った。
そのせいで、俺は今までよりSPを稼ぎづらくなった。
なにせ俺はこの村の村長だからだ。
ただ、俺以外のゴブリン達も、長く生きるようになった。
だから後悔はしていない。
だが、俺が死んだらこの村は壊滅する。

「グリード様！巨大な蛇の魔物とフェニックスの上位種が来ております。蛇が言うには、配下に成るか破滅するか、だそうです。どうするのですか？」

　だからこの瞬間、そいつの配下に成ることに決めた。
ゴブリン達には死んでほしくない。その一心で俺は走った。
　門を出ると、そこには魔王がいた。
自分とは比べ物に成らない程の上位の魔王だった。

　俺は叫んだ。

「お前の配下に成る！だから、誰も殺さないでくれ！」