高校生は蛇になる

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130話 ソノ頃ノ現人神

「手続きは以上となります。ラーダスの町へようこそ。地図は必要ですか?」

「貰っておこう。ありがとな」

 いやー、ようやく滅びてない町を見つけた。
 今までの町は焼け跡しかなかったからな。これで数ヶ月ぶりにゆっくり眠れる。

 それにしてもカヴァタは何を考えてるんだ。フィートを置いていくわ、俺を飛ばすわ。国を一つ飛び越してたぞ。

 とりあえず、当面の金を稼ぐか。俺が色々迂回して移動したせいでフィートがどっちに行ったのか分からなくなったし。空を飛んだ時に財布落としたし。

 金稼ぐんだったら、やっぱ冒険者ギルドかな。
 地図を見ると、町の中央広場に行けば在るみたいだ。

 それにしても、何で現人神が使えなくなったのだろうか?……いくら考えても思い当たる節が無い。カヴァタにそんな力が有るとは思えないし。

 考えていると冒険者ギルドに着いたみたいだ。冒険者ギルドか、転生して5年位して家出して、冒険者ギルドで金を稼ぎ始めたんだよな。そう言えばこっちの世界の両親に家出したっきり会ってないな。まあいいか。とりあえず冒険者ギルドに入るか。

 中は、やっぱりどこも変わらないんだな。横に長い受付と、そこに並んだ冒険者やクエストの依頼に来たと思われる人達。今は昼だからか、冒険者の数は少ない。

 受付の一番左側、討伐クエスト受注の列に、俺は並んだ。列と言っても、今はパーティーと思われる、4人しか居ない。

 前のパーティーが退き、俺が前に出た。

「冒険者カードの提示をお願いします」

 そうそう、こんな感じだった。冒険者カードの提示は義務らしくて、毎回顔見知りにわざわざカードを見せた記憶が有る。

「これだ」

 カード入れから、俺の冒険者カードを受付嬢に渡す。

「っ! アストリオス様ですね。本日はどのような要件で」

 お、予想通り驚いた。そりゃそうだろう。俺はこの大陸に10人しか居ない、ランクS+冒険者なのだから。

「財布を落としたから、金を稼ごうと思って。一番報酬が高いクエストを頼む」

 現人神の能力で、持ってることは持ってるのだが、なぜか取り出せない。本当に何でだ?

「今最も報酬が高いクエストとなりますと、こちらの、氷結山に進入した魔物の調査及び討伐となります」

 氷結山に進入する魔物?どう切ってもどう割っても断面が滑らかな氷と口内でふわりと溶ける雪しかないようなあの山に?

「その魔物って何だ?」

 余程の氷好きか、雪好きか、あの山の真実を知るやつしか入らないと思うんだが。

「それが2体確認されてまして、一体は、大きな蛇の魔物です。胴体の太さに合わない、短い身体だったそうです。それでも十分長いのですが。物凄い速さだったそうで、撮影の魔道具を持ってしても、これだけの情報しか手に入りませんでした。山に入るのが確認されたのが、3ヶ月だったそうです。もう一体は、フェニックスの上位種と思われる魔物で、全身に酷く傷を負った状態で飛んできたそうです。傷を癒すこともせず、吹雪の中に入って行きました。こちらは、山に入ったのが一昨日の昼でした」

「その依頼受けた」

 間違いなくカヴァタとフィートじゃねぇか。

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