この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第16話生誕記念パーティーの夜
コロナがしばらくウォルティア城に住まう事になった翌日、一昨日アライア姫が言っていた新たな水の姫巫女生誕記念パーティーの為の準備の為に、午後からは大忙しかった。
「別に私は普段通りの巫女服でいいと思うのですけど」
「それでは駄目なんですよ巫女様。主役には主役らしい格好をしてもらわないと」
「だからと言ってこんなドレスを着せなくても……」
セリーナから渡されたのは、何と純白のドレス。もっと簡単に説明すれば、結婚式で女性が着るようなあのウェディングドレスだ。それを俺は今回のパーティーの為に着させられようとしているのだから、少し抵抗感を感じてしまう。しかも男の俺が一生着ることのない代物だから余計に感じてしまう。
「もしかして巫女様、こういうの着たことないのですか?」
「あるわけないじゃないですか! あったらそれは変態ですから!」
「あ、そうでしたね」
でも結局着ることは避けられず、それから一時間後俺は巫女服ではなくウェディングドレス(のようなもの)への着替えを完了。初めてきるそれに最初は戸惑いを隠せなかったが、時間が経つ毎に慣れ始め、着てから二時間後くらいには着ていても違和感を感じなくなっていた。
「もうすぐパーティーの時間ですが、やはり緊張していますか?」
「当たり前ですよ。大勢の人の前に立つのは初めてなんですから」
「でも今後はそういう機会が増えていきますよ?」
「それは分かっているんですけど、今日はスピーチもするじゃないですか。正直内容に少々不安を感じているのですけど」
「でも善は急げと言いますから、ちゃんと言っておきましょうよ」
「果たしてそれが善なのか、分からないですけど」
実は俺の中で、今日のスピーチであの事を言って話そうとセリーナが提案してきたのだが、俺はどうしても賛成出来なかった。まだこの姿になってから一週間も満たないというのに、早い内にそれを公に話すなんて流石に抵抗を感じる。
「でも話しておけば、多くの協力を得られるのですよ。抵抗を感じてしまう気持ちも分かりますが、成仏したい気持ちがあるのでしたら、少しでも踏み出さなければ駄目ですよ」
「私……いや俺は、もう少しだけ長く水の姫巫女でいてもいいと思います。成仏してしまったら、折角もう少しだけ生きられるチャンスをもらえたんです。だから早まる必要はないんじゃないかって、最近思ったりするんです」
「咲田様……」
「咲田でいいよこの時は。まあ滅多に素になることはないですけど。だからセリーナさん、ちゃんとその時になるまで待ってもらえないですか?  いつかは皆の協力を得られくらいまで成長しておきますから」
「約束ですよ? 咲田さんのその言葉信じますからね?」
「はい」
こうして今回は自分の事を話すこと見送る事になり、そのまま記念パーティーを迎えることになったのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夜の六時半、ウォルティア城内の大広間にて、多方面から多くの人が集まる中で、水の姫巫女生誕記念パーティーが開催された。俺は主役ということで、後からの登場になるのだが、扉から中を覗いた所かなりの人のお偉いさんが集まっていて、俺の緊張は大きくなり始めていた。
「やはり緊張する? 初めて大勢の人の前に立つの」
そんな緊張している俺を見かけたのか、アライア姫が優しく声をかけてくれた。
「もう緊張しすぎて、息が出来ないくらいですよ」
「ふふっ、やはりそうよね。でもこれくらいの事はこなせるようにならないと駄目よ」
「分かっていますよそれくらい。でも今日は初めてなのですから、緊張くらいさせてください」
「分かっているわよ。誰だって最初はそうだったんだから」
「やっぱり皆同じなんですね。どんな人だって初めて大勢の人の前に立たされれば、緊張する」
「そういう事よ。私だって初めは緊張したんだから」
「姫として大勢の前に立たされた時にですか?」
「そうよ。本当大変だったんだから。っと、そろそろ時間見たいよ」
「え、あ、本当ですね」
入口に耳を澄ますと、水の姫巫女の入場の合図らしきものが聞こえてきた。あとは扉が開かれるので、それを待つのみとなる。
「それでは行って来ますね」
「ちゃんと仕事して来なさいよ」
「分かっていますよ」
そして扉がゆっくりと開かれ、俺は会場内へと一歩足を踏み入れたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
入場すると共に会場からは大きな歓声が湧く。まるで世界大会で優勝して凱旋した日本人みたいな感覚だ。そこまで歓迎されるような存在では決してないのに、こうも盛大な拍手で迎えられると、ちょっと恥ずかしい。
「では巫女様、こちらへ」
大勢の前にある壇上へとセリーナに案内される。どうやらいきなりスピーチをやらされるようだ。
『では水の巫女様が入場されたということで、彼女の方から挨拶をしてもらおうと思います』
俺が壇上に立ったことを確認すると、司会が次へと進行させる。どうやら俺の予想は当たったらしい。近くにあったマイクを手に取った俺は、一つ呼吸をした後にこの二日で考えたスピーチを始めた。
「えっと、皆様はじめまして。この度水の姫巫女になりましたミスティアと申します。どうぞよろしくお願いしま
「別に私は普段通りの巫女服でいいと思うのですけど」
「それでは駄目なんですよ巫女様。主役には主役らしい格好をしてもらわないと」
「だからと言ってこんなドレスを着せなくても……」
セリーナから渡されたのは、何と純白のドレス。もっと簡単に説明すれば、結婚式で女性が着るようなあのウェディングドレスだ。それを俺は今回のパーティーの為に着させられようとしているのだから、少し抵抗感を感じてしまう。しかも男の俺が一生着ることのない代物だから余計に感じてしまう。
「もしかして巫女様、こういうの着たことないのですか?」
「あるわけないじゃないですか! あったらそれは変態ですから!」
「あ、そうでしたね」
でも結局着ることは避けられず、それから一時間後俺は巫女服ではなくウェディングドレス(のようなもの)への着替えを完了。初めてきるそれに最初は戸惑いを隠せなかったが、時間が経つ毎に慣れ始め、着てから二時間後くらいには着ていても違和感を感じなくなっていた。
「もうすぐパーティーの時間ですが、やはり緊張していますか?」
「当たり前ですよ。大勢の人の前に立つのは初めてなんですから」
「でも今後はそういう機会が増えていきますよ?」
「それは分かっているんですけど、今日はスピーチもするじゃないですか。正直内容に少々不安を感じているのですけど」
「でも善は急げと言いますから、ちゃんと言っておきましょうよ」
「果たしてそれが善なのか、分からないですけど」
実は俺の中で、今日のスピーチであの事を言って話そうとセリーナが提案してきたのだが、俺はどうしても賛成出来なかった。まだこの姿になってから一週間も満たないというのに、早い内にそれを公に話すなんて流石に抵抗を感じる。
「でも話しておけば、多くの協力を得られるのですよ。抵抗を感じてしまう気持ちも分かりますが、成仏したい気持ちがあるのでしたら、少しでも踏み出さなければ駄目ですよ」
「私……いや俺は、もう少しだけ長く水の姫巫女でいてもいいと思います。成仏してしまったら、折角もう少しだけ生きられるチャンスをもらえたんです。だから早まる必要はないんじゃないかって、最近思ったりするんです」
「咲田様……」
「咲田でいいよこの時は。まあ滅多に素になることはないですけど。だからセリーナさん、ちゃんとその時になるまで待ってもらえないですか?  いつかは皆の協力を得られくらいまで成長しておきますから」
「約束ですよ? 咲田さんのその言葉信じますからね?」
「はい」
こうして今回は自分の事を話すこと見送る事になり、そのまま記念パーティーを迎えることになったのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
夜の六時半、ウォルティア城内の大広間にて、多方面から多くの人が集まる中で、水の姫巫女生誕記念パーティーが開催された。俺は主役ということで、後からの登場になるのだが、扉から中を覗いた所かなりの人のお偉いさんが集まっていて、俺の緊張は大きくなり始めていた。
「やはり緊張する? 初めて大勢の人の前に立つの」
そんな緊張している俺を見かけたのか、アライア姫が優しく声をかけてくれた。
「もう緊張しすぎて、息が出来ないくらいですよ」
「ふふっ、やはりそうよね。でもこれくらいの事はこなせるようにならないと駄目よ」
「分かっていますよそれくらい。でも今日は初めてなのですから、緊張くらいさせてください」
「分かっているわよ。誰だって最初はそうだったんだから」
「やっぱり皆同じなんですね。どんな人だって初めて大勢の人の前に立たされれば、緊張する」
「そういう事よ。私だって初めは緊張したんだから」
「姫として大勢の前に立たされた時にですか?」
「そうよ。本当大変だったんだから。っと、そろそろ時間見たいよ」
「え、あ、本当ですね」
入口に耳を澄ますと、水の姫巫女の入場の合図らしきものが聞こえてきた。あとは扉が開かれるので、それを待つのみとなる。
「それでは行って来ますね」
「ちゃんと仕事して来なさいよ」
「分かっていますよ」
そして扉がゆっくりと開かれ、俺は会場内へと一歩足を踏み入れたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
入場すると共に会場からは大きな歓声が湧く。まるで世界大会で優勝して凱旋した日本人みたいな感覚だ。そこまで歓迎されるような存在では決してないのに、こうも盛大な拍手で迎えられると、ちょっと恥ずかしい。
「では巫女様、こちらへ」
大勢の前にある壇上へとセリーナに案内される。どうやらいきなりスピーチをやらされるようだ。
『では水の巫女様が入場されたということで、彼女の方から挨拶をしてもらおうと思います』
俺が壇上に立ったことを確認すると、司会が次へと進行させる。どうやら俺の予想は当たったらしい。近くにあったマイクを手に取った俺は、一つ呼吸をした後にこの二日で考えたスピーチを始めた。
「えっと、皆様はじめまして。この度水の姫巫女になりましたミスティアと申します。どうぞよろしくお願いしま
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