この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第22話闇への誘い

 二人の姫巫女がここで寝泊まりするようになってから既に三日が経つ。もういい加減帰れると思っていたのだが、予想以上に天候は悪く、未だに国までの馬車は出せない状況にあるらしい。

「というかお二人共、国を守る姫巫女なのに守れていないんじゃ、意味がないような気がするのですけど」

「いくら世界を守る姫巫女と言えど、天候を操るなんてことはできないわよ。魔法でも使わない限り」

「そうですよね。でもどうして異常気象ばかりが続くのですかね」

「わ、私調べてみたんですけど、ど、どうやら最近起きた異空間の出現と何かしらの関係があるみたいですよ」

「やはりそうなりますよね」

 この世界に異変が起き始めたのは、それが起きた後なのは知っている。では何故俺の世界とこの世界が繋がってしまったのだろうか? 考えられるのは二つ。誰かが意図的に開いた、もしくは開く原因となる何かが起きたか。でも話を聞く限りでは、後者の原因となるものが起きたという記憶はないらしい。

(だとしたら誰かが意図的に開いたのか?)

 そうだとしたら何故?

「そういえばお二人に一つ聞きたいことがあるのけど」

「聞きたいこと?」

「実は以前、セリーナさんが私に見てほしい世界の現状がある、と言っていたのですが、何かこの世界は問題でも抱えているのですか?」

「この世界が抱えている問題? 特別な何かがあるとしたら、あれかしらね」

「そうかもしれませんね」

「あれ?」

「『闇の牢獄ダークプリズン』、それがこの世界が抱えている一番の問題よ」

「闇の牢獄?」

 何だその中二病が使いそうな技名は。

「か、簡単に説明すると世界が闇に蝕まれているという感じです。み、ミスティアさんはこの国の外には出たことがないですよね?」

「はい。まだ出る機会がないので」

「じゃあ出てみれば分かると思うわよ。この世界の現状が。遠くに行かなくても分かるから出てみましょ」

「え、あ、ちょっと。今からですか?」

「当たり前でしょ。百聞は一見に如かず、さあ行くわよ」

 半ば強引に連れららて、俺は初めてグリアラとシャイニーと共にウォルティアから出ることに。セリーナには内緒で出ることになったけど、大丈夫かな。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 ウォルティア城から小舟で出発して十分。ここまで一度も来ることがなかったウォルティアの入口へと到着した。巨大な外壁にくっついているそのこじんまりとした扉は、何と言うか国の入口というよりは一つの豪邸の入口にさえ思えた。

「それにしても何度見ても大きいわよねこれ」

「セリーナさん曰く、ウォルティアを守る為に作られたとか言っていましたけど、一体何から守るのですかね」

「その答えも、ここを出れば分かるわよきっと」

 そう言って扉を開け始めるグリアラ。一体この扉が開かれた先に何が待っているのだろうか? 俺の想像はあくまで全土に広がる草原や森、海と言った自然豊かなものだと思っている。どこぞのRPGみたいな想像しかできないのだが、それしか思い浮かばないので仕方ない。

「さて出るわよ」

 扉が完全に開かれ、いよいよ外のへと出る。そこで俺を待っていたのは……。

「え? これって……」

「驚くのも無理はないわよね。私だって最初は驚いたんだから」

「わ、私もです」

 その先で俺を待ち受けていたのは、自然豊かな大地ではなく、一面に広がる荒廃した大地。水も何もかもが枯れ、花一つも咲いていない。一言で言い表すなら砂漠。

「昔はこんなんじゃなかったらしいわ。もっと自然豊かな世界だったんだけど、数百年前に起きた未曾有の大災害により世界のほとんどの自然が消滅。災害のトリガーと言われている大地の民達は地下へと追いやられ、それ以降姿を見せなかったらしいわよ」

「大地の民?」

「く、詳しくは分かりませんが、どうやらこの世界にはそう言った民族が存在しているらしいです」

「前に言ったと思うけど、四人存在する巫女のうち一人例外がいるというのは、実はその大地の民が生み出した大地の巫女の事なのよ」

「大地の民と大地の巫女……」

 数百年前に起きた未曾有の大災害のトリガーとなった存在。今は地上に存在せず、地下で暮らしている民族。まだまだ俺が知らない事ばかりなこの世界は、果たしてこの先どんな道を辿って行くのだろうか?

「そしてもう一つ、これも知っておいてほしいの」

 そう言ってグリアラはどこかへ向かって歩き出す。先ほど言っていた闇の牢獄というやつだろうか?

「ほら、少し先僅かだけど森が残っているでしょ?」

 数分後、歩みを止めたグリアラは少し遠くを指さす。そこには僅かではありながらも頑張って生い茂っている、ちょっおした森みたいなのがあった。

「あれがどうしたのですか?」

「近寄らないと分からないか。仕方がない」

 そう言うとセリーナは、小声で何かを話し始めた。一体何をしているのだろうか?

「まだ完全に蝕まれていないから近づいても大丈夫だって」

「大丈夫って何がですか?」

「勿論あの森よ。実はへたに闇に蝕まれて居る所に近づくと、身体に影響を及ぼす可能性があるの。だから今はさちょっと聞いてみたのよ。ここは近づいても大丈夫かって」

「聞いてみたって、森にですか?」

「当たり前よ。私を誰だと思っているのよ」

 当然だと言わんばかりの態度を取るグリアラ。確かに彼女は森の姫巫女だ。そういう能力の一つや二つ、あってもおかしくない話だ。

(もしかして俺にも、そんな能力備わっていたりするのか)

 例えば水の声が聞こえるようになるとか。

「さて安全も確認できたことだし、行くわよ」

「はい」

「ふ、二人とも待ってください」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 森の目の前までやってくると、何も迷いもせずに先頭をきって森の中へと足を踏み入れて行くグリアラ。その後を俺達も追うのだが、突如異変が起きた。

(な、何だ)

 突如暗闇に覆われる視界。前を歩いていたはずのグリアラの姿も見えない。

(何が起きたんだ?)

 後ろを振り返ってもシャイニーはいない。今俺はまさに一人ぼっちの状態だった。

『ようこそ我が牢獄へ。新たに生まれし巫女よ』

 未だに現状が掴めず戸惑っていると、どこからか声が聞こえる。

「だ、誰ですか?」

「私はこの世界に住まう全ての闇。今宵はあなたを闇の世界へと誘いましょう」

「な、何をいきな……り……」

 意味不明な言葉に、言葉を返そうとするが急に目眩がして、立てなくなってしまう。そして気がつけば、眠っているか起きているか分からないか深い闇への中へと吸い込まれていった。

「この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く