この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第46話人生のロスタイム
道中かなり危険な道を進み、何とか目的地へ到着。
(やっぱり、そこにいたんだな)
彼女はあの場所にいた。一ヶ月と少し前、初めて彼女の歌声を聞いたあの場所に。あの日は結局、話しかけられずで終わってしまったが、ようやく会話することができる。
「来てくれたのね」
「ああ。忘れていなくてよかったよ」
「あの時あなた姫巫女の姿をしていたけど?」
「やっぱり見えていたのか。けど今は、訳あって元の体に戻っている」
理由は分からないが、どうやら彼女もミスティアの秘密について分かっていたらしい。
「それよりも大丈夫なの? 世界はかなりやばい状況になっていると聞いたんだけど」
「この世界からほとんどの人間が闇に飲まれ、今は人がいないらしい。姫巫女達は何とか無事だったけど、誰までが無事なのは分からない」
「そう。じゃあまだ希望があるわね」
「それはどういう事?」
「あなたは知らないと思うけど、この世界には姫巫女が四人いるように、私達の歌姫も四人いるの」
「歌姫?」
セリーナが最初の方に言っていたが、確か彼女は人魚族という種族らしく、歌姫のうの字もなかった気がする。
「恐らく他の姫巫女にも聞いてみるとされば分かるわ。そして四人集めた時に、この世界はまた変わるから」
「それは本当なのか?」
「ええ。代々伝えられている事だから、自信を持って言える。あとはあなた達次第」
「ちなみに一つ聞くけど、水の歌姫は?」
「私がどうしてわざわざ呼んだのか分かる?」
「じゃあもしかして」
「初めましてになるのかしら。私は水の歌姫ポルメルよ。よろしくね水の姫巫女さん」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
とりあえず俺は、ポルメルを連れて地上へと帰還。他の人達に彼女について説明をした。
「それ私聞いたことあるわよ。というか友達だし」
「妾もじゃ」
「わ、私はまだ……」
「うわ、すごくフレンドリー」
「長く姫巫女でいればそれだけ輪が広いの。現にあなたと私が会ったのは一月前でしょ?」
「会ったとは言いにくいけどな」
俺が彼女の歌を聞いたってだけだし。シャイニーが知らなかったのは、何となく察していたけど。
(残すは一人、って事か)
どうやらセイランスに直接向かわなければならないらしい。
「森と大地は二人に任せるとして、光の方は直接会いに行かないと駄目だな」
「で、でも私、その歌姫がどこにいるのか分からないです」
「そこら辺は探すしかないだろ。善は急げだし、早速だけど向かうぞ」
「ここからセイランスって、結構距離あるけど大丈夫なの?」
「セリーナ、飛空挺は?」
「瓦礫の中ですよ」
「当然馬車もありませんから」
「ということはつまり……」
徒歩?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
という事でセイランスまでまさかの徒歩で向かうことになった俺達。グリアラとムウナもそれぞれの歌姫を呼びに行かなければならないので、四人で長旅へ。善は急ぐどころか遠回りするになるとは……。
「正気ですか? この状況で徒歩で向かうなんて」
まあ、アライア姫にそれを話したら、当然怒られる事になりましたけど。
「無茶なのは分かっていますけど、今はそれしか方法がないんですよ」
「危険すぎるわよ! まだ何が起きるかも分からないのよ」
「だからって、このまま放置はできないです。世界を救う為ならやるしかないんです」
「歌姫の話は勿論私も知っていた。四人が揃ったら、大きな力になる事も。けれど、あなたは分かっているの? いつ何が起きるのか分からないの、あなた自身に」
「それは、俺が既に死んだ身だからですか?」
「そう。あなたは死んでいるの。だからいつ倒れたっておかしくはない。下手したら元の世界に戻ることだってできないの。だから今は、急がずもう少し落ち着いて行動しましょ」
元の世界に帰れなくなる。
一ヶ月前の俺だったら、迷わず安全策を選ぶだろう。だって帰れなくなるのかもしれないのだから。
だけど今は違う。戻りたいという気持ちもあるけど、それ以上に俺は、この世界を救い出したいという気持ちの方が大きい。
「それでも俺は……この世界の為に危険をおかします」
「咲田君……」
僅か一ヶ月。されど一ヶ月。俺はこの世界で過ごした。最初は嫌々で水の姫巫女になったが、グリアラ達と出会い、色々な経験をして、人生のロスタイムを良くも悪くも楽しく過ごせた。だから、せめて恩返しがしたい。一ヶ月、生かしてくれたこの世界に。
「分かったわよ。そこまで言うなら、私はあなたを、いやあなた達を信じる。この世界の代表としてあなたを信じる」
「アライア姫様……」
「ただし、一つ約束。必ず生きてここに戻って来なさい。そして、見届けて。この世界が元に戻る時を。そしたら、私も最善を尽くして、あなたを元の世界に戻すから」
「……はい!」
「よし、いい返事。じゃあ行って来なさい。ある程度の物は準備するから」
「ありがとうございます!」
旅が始まる。
世界の命運をかけた最後の旅が。
果たしてこの体があとどの位続くのかは分からない。けれど、必ず生き通してみせる。世界が光を取り戻すその時まで。
それが俺春風咲田の、水の姫巫女ミスティアの最後の仕事なのだから。
(やっぱり、そこにいたんだな)
彼女はあの場所にいた。一ヶ月と少し前、初めて彼女の歌声を聞いたあの場所に。あの日は結局、話しかけられずで終わってしまったが、ようやく会話することができる。
「来てくれたのね」
「ああ。忘れていなくてよかったよ」
「あの時あなた姫巫女の姿をしていたけど?」
「やっぱり見えていたのか。けど今は、訳あって元の体に戻っている」
理由は分からないが、どうやら彼女もミスティアの秘密について分かっていたらしい。
「それよりも大丈夫なの? 世界はかなりやばい状況になっていると聞いたんだけど」
「この世界からほとんどの人間が闇に飲まれ、今は人がいないらしい。姫巫女達は何とか無事だったけど、誰までが無事なのは分からない」
「そう。じゃあまだ希望があるわね」
「それはどういう事?」
「あなたは知らないと思うけど、この世界には姫巫女が四人いるように、私達の歌姫も四人いるの」
「歌姫?」
セリーナが最初の方に言っていたが、確か彼女は人魚族という種族らしく、歌姫のうの字もなかった気がする。
「恐らく他の姫巫女にも聞いてみるとされば分かるわ。そして四人集めた時に、この世界はまた変わるから」
「それは本当なのか?」
「ええ。代々伝えられている事だから、自信を持って言える。あとはあなた達次第」
「ちなみに一つ聞くけど、水の歌姫は?」
「私がどうしてわざわざ呼んだのか分かる?」
「じゃあもしかして」
「初めましてになるのかしら。私は水の歌姫ポルメルよ。よろしくね水の姫巫女さん」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
とりあえず俺は、ポルメルを連れて地上へと帰還。他の人達に彼女について説明をした。
「それ私聞いたことあるわよ。というか友達だし」
「妾もじゃ」
「わ、私はまだ……」
「うわ、すごくフレンドリー」
「長く姫巫女でいればそれだけ輪が広いの。現にあなたと私が会ったのは一月前でしょ?」
「会ったとは言いにくいけどな」
俺が彼女の歌を聞いたってだけだし。シャイニーが知らなかったのは、何となく察していたけど。
(残すは一人、って事か)
どうやらセイランスに直接向かわなければならないらしい。
「森と大地は二人に任せるとして、光の方は直接会いに行かないと駄目だな」
「で、でも私、その歌姫がどこにいるのか分からないです」
「そこら辺は探すしかないだろ。善は急げだし、早速だけど向かうぞ」
「ここからセイランスって、結構距離あるけど大丈夫なの?」
「セリーナ、飛空挺は?」
「瓦礫の中ですよ」
「当然馬車もありませんから」
「ということはつまり……」
徒歩?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
という事でセイランスまでまさかの徒歩で向かうことになった俺達。グリアラとムウナもそれぞれの歌姫を呼びに行かなければならないので、四人で長旅へ。善は急ぐどころか遠回りするになるとは……。
「正気ですか? この状況で徒歩で向かうなんて」
まあ、アライア姫にそれを話したら、当然怒られる事になりましたけど。
「無茶なのは分かっていますけど、今はそれしか方法がないんですよ」
「危険すぎるわよ! まだ何が起きるかも分からないのよ」
「だからって、このまま放置はできないです。世界を救う為ならやるしかないんです」
「歌姫の話は勿論私も知っていた。四人が揃ったら、大きな力になる事も。けれど、あなたは分かっているの? いつ何が起きるのか分からないの、あなた自身に」
「それは、俺が既に死んだ身だからですか?」
「そう。あなたは死んでいるの。だからいつ倒れたっておかしくはない。下手したら元の世界に戻ることだってできないの。だから今は、急がずもう少し落ち着いて行動しましょ」
元の世界に帰れなくなる。
一ヶ月前の俺だったら、迷わず安全策を選ぶだろう。だって帰れなくなるのかもしれないのだから。
だけど今は違う。戻りたいという気持ちもあるけど、それ以上に俺は、この世界を救い出したいという気持ちの方が大きい。
「それでも俺は……この世界の為に危険をおかします」
「咲田君……」
僅か一ヶ月。されど一ヶ月。俺はこの世界で過ごした。最初は嫌々で水の姫巫女になったが、グリアラ達と出会い、色々な経験をして、人生のロスタイムを良くも悪くも楽しく過ごせた。だから、せめて恩返しがしたい。一ヶ月、生かしてくれたこの世界に。
「分かったわよ。そこまで言うなら、私はあなたを、いやあなた達を信じる。この世界の代表としてあなたを信じる」
「アライア姫様……」
「ただし、一つ約束。必ず生きてここに戻って来なさい。そして、見届けて。この世界が元に戻る時を。そしたら、私も最善を尽くして、あなたを元の世界に戻すから」
「……はい!」
「よし、いい返事。じゃあ行って来なさい。ある程度の物は準備するから」
「ありがとうございます!」
旅が始まる。
世界の命運をかけた最後の旅が。
果たしてこの体があとどの位続くのかは分からない。けれど、必ず生き通してみせる。世界が光を取り戻すその時まで。
それが俺春風咲田の、水の姫巫女ミスティアの最後の仕事なのだから。
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