この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第54話ムウナの行方
ムウナが行方不明になるという非常事態が起きる中、俺は冷静に状況を判断した。
(昨日の言葉から察するに、ムウナが向かったのは……)
おそらく地下の国。だが彼女は裏切り者である以上、帰ることができないはずだ。
(ということは、もしかすると)
行方不明というよりは誰かの手によって連れて行かれた可能性が高い。そしてそれを、ムウナは承知した。大地の歌姫に会う為に。
「皆聞いてくれ。ムウナがどこへ行ったのか大体分かった」
「本当ですか咲田さん」
「ああ。一番可能性が高い場所は地下だ」
「地下ってまさか」
「そうだ。あいつは単独で歌姫に会いに行こうとしたんだ。勿論この前見た通り、ムウナは大地の民から追放されている。だから恐らく彼女はスウを利用したんだと思う」
「話の筋は通るけど、その根拠はあるの?」
「実は昨日な」
四人に昨日のムウナとの会話を話す。迷惑をかけるということは、必ず大地の民が絡んでくると思って、この結論に至った。
「迷惑をかけるって、ムウナちゃんは何も悪くないのに」
「俺達がそう思っているだけで、ムウナ自身は自分に責任があると思っているんじゃないのか。勿論俺もムウナは何も悪くないと思っているよ」
「そのムウナさんという方は大地の民なのですか?」
「正式に言うとだった、の方が近いかもな。そう言えばライノとクスハは大地の歌姫の居場所とか分からないのか?」
「もう何年も会ってないから分からないわ。そもそも存在しているのかすら分からないし」
「存在しているか分からない? それはどういう意味だ」
「大地の歌姫というのは私達と違って、ほとんど噂に近いものなんです。実際にその姿を見た人はほとんどいません。私もその内の一人なんですけど」
「見たことないって、じゃあこの世界には歌姫が三人しかいないってことか?」
「そうとも言い切れないんだけどね」
(その答えを知っているのは、大地の民のみって事か)
そうだとしたら、確かめるしかない。
「よし、今から行くぞ。地下へ」
「地下へって、そもそも私達地下の国がどこにあるのか分からないわよ。ムウナも入口が変わっているって言っていたし」
「だったら探すまでだ。ムウナの足取りさえ掴めれば、それだけでも大分違うだろ?」
「でもどうやって掴むんですか? その足取りを」
「それはだ、えっと……」
何か方法があると思うけど、これと言った方法が思いつかない。そんな時、名案を出したのはシャイニーだった。
「そういえばムウナさんが初めて咲田さん達の目の前に現れたのって、ここでしたよね」
「そうだけど、それがどうかしたか?」
「地下の国から直接ここに来たのなら、道があったりするんじゃないですか?」
「あ、そういえば」
ムウナは確か、地面からいきなり出てきた。それはスウも一緒だった。だとしたら、何かしらの道があるのではないか? 地下の国へと繋がる道が。
「よし、あの場所へ行ってみよう」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
何かあった時の為にと、シャイニーとライノを宿に留守番させて、俺とグリアラとクスハの三人で例の場所へ向かうと、案の定人が通れそうな穴が残っていた。
(そうか、あの時からムウナはこの入口を使ってないんだよな)
「流石にあの時のままというわけにはいかないけど、残っているもんだな」
「何で誰も埋めようとしなかったのかしら?」
「姫巫女の手際が悪いのよ」
「何よ文句ある?」
「お前ら一々喧嘩するなよ……」
とりあえず道を発見した事に安心した俺達は、一度その報告をする為に宿屋へ。
だがその途中に事件は起きた。
「ちょっと待ちなさい。そこの三人」
もうすぐ着くというところで、後ろから声をかけられる。この声に俺は聞き覚えがあった。
「犯人は現場に戻ってくる、てか。スウさんよ」
「犯人? 何を言っているのよ」
振り返るとそこには、スウがいた。ムウナが腐れ縁と言っていた女の子だ。そして、ムウナを連れて行った犯人だと思われる人物。
「だってそうだろ? ムウナは今行方不明になっている。あくまで俺達の予想だが、あいつは地下の国へ行ったんじゃないかってら睨んでいるんだ。けど、彼女はその場所を知らない。だからその案内をあんたがしたんだろ?」
「え? ムウナ行方不明なの?!」
「何だよその意外みたいな反応」
「だって私、あの子を連れ戻す気なんてなかったし、今日だってからかいに来ただけなの。だってあの子今戻ったりなんかしたら……」
「戻ったりなんかしたら?」
結構焦った様子を見せるスウ。この反応のしかた、演技のようには見えない。
(まさか本当に……)
「お願い! あの子を助けて。私も協力するから」
「どうするグリアラ。これ演技のように見えないけど」
「うーん、信じてもいいけど、一つ聞かせなさい。今ムウナが戻ったら何が起きるの?」
「ムウナは大地の民の裏切り者。裏切り者には制裁を、それが私達のモットーなの。それがどういう意味か分かる?  あの子が戻ったら……」
「処刑されるのか?」
「そういうこと。急がないと」
「分かった。今すぐ準備する」
彼女の話が本当なら、急いで地下の国へと向かわなければならない。
(何とか無事でいてくれ、ムウナ)
(昨日の言葉から察するに、ムウナが向かったのは……)
おそらく地下の国。だが彼女は裏切り者である以上、帰ることができないはずだ。
(ということは、もしかすると)
行方不明というよりは誰かの手によって連れて行かれた可能性が高い。そしてそれを、ムウナは承知した。大地の歌姫に会う為に。
「皆聞いてくれ。ムウナがどこへ行ったのか大体分かった」
「本当ですか咲田さん」
「ああ。一番可能性が高い場所は地下だ」
「地下ってまさか」
「そうだ。あいつは単独で歌姫に会いに行こうとしたんだ。勿論この前見た通り、ムウナは大地の民から追放されている。だから恐らく彼女はスウを利用したんだと思う」
「話の筋は通るけど、その根拠はあるの?」
「実は昨日な」
四人に昨日のムウナとの会話を話す。迷惑をかけるということは、必ず大地の民が絡んでくると思って、この結論に至った。
「迷惑をかけるって、ムウナちゃんは何も悪くないのに」
「俺達がそう思っているだけで、ムウナ自身は自分に責任があると思っているんじゃないのか。勿論俺もムウナは何も悪くないと思っているよ」
「そのムウナさんという方は大地の民なのですか?」
「正式に言うとだった、の方が近いかもな。そう言えばライノとクスハは大地の歌姫の居場所とか分からないのか?」
「もう何年も会ってないから分からないわ。そもそも存在しているのかすら分からないし」
「存在しているか分からない? それはどういう意味だ」
「大地の歌姫というのは私達と違って、ほとんど噂に近いものなんです。実際にその姿を見た人はほとんどいません。私もその内の一人なんですけど」
「見たことないって、じゃあこの世界には歌姫が三人しかいないってことか?」
「そうとも言い切れないんだけどね」
(その答えを知っているのは、大地の民のみって事か)
そうだとしたら、確かめるしかない。
「よし、今から行くぞ。地下へ」
「地下へって、そもそも私達地下の国がどこにあるのか分からないわよ。ムウナも入口が変わっているって言っていたし」
「だったら探すまでだ。ムウナの足取りさえ掴めれば、それだけでも大分違うだろ?」
「でもどうやって掴むんですか? その足取りを」
「それはだ、えっと……」
何か方法があると思うけど、これと言った方法が思いつかない。そんな時、名案を出したのはシャイニーだった。
「そういえばムウナさんが初めて咲田さん達の目の前に現れたのって、ここでしたよね」
「そうだけど、それがどうかしたか?」
「地下の国から直接ここに来たのなら、道があったりするんじゃないですか?」
「あ、そういえば」
ムウナは確か、地面からいきなり出てきた。それはスウも一緒だった。だとしたら、何かしらの道があるのではないか? 地下の国へと繋がる道が。
「よし、あの場所へ行ってみよう」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
何かあった時の為にと、シャイニーとライノを宿に留守番させて、俺とグリアラとクスハの三人で例の場所へ向かうと、案の定人が通れそうな穴が残っていた。
(そうか、あの時からムウナはこの入口を使ってないんだよな)
「流石にあの時のままというわけにはいかないけど、残っているもんだな」
「何で誰も埋めようとしなかったのかしら?」
「姫巫女の手際が悪いのよ」
「何よ文句ある?」
「お前ら一々喧嘩するなよ……」
とりあえず道を発見した事に安心した俺達は、一度その報告をする為に宿屋へ。
だがその途中に事件は起きた。
「ちょっと待ちなさい。そこの三人」
もうすぐ着くというところで、後ろから声をかけられる。この声に俺は聞き覚えがあった。
「犯人は現場に戻ってくる、てか。スウさんよ」
「犯人? 何を言っているのよ」
振り返るとそこには、スウがいた。ムウナが腐れ縁と言っていた女の子だ。そして、ムウナを連れて行った犯人だと思われる人物。
「だってそうだろ? ムウナは今行方不明になっている。あくまで俺達の予想だが、あいつは地下の国へ行ったんじゃないかってら睨んでいるんだ。けど、彼女はその場所を知らない。だからその案内をあんたがしたんだろ?」
「え? ムウナ行方不明なの?!」
「何だよその意外みたいな反応」
「だって私、あの子を連れ戻す気なんてなかったし、今日だってからかいに来ただけなの。だってあの子今戻ったりなんかしたら……」
「戻ったりなんかしたら?」
結構焦った様子を見せるスウ。この反応のしかた、演技のようには見えない。
(まさか本当に……)
「お願い! あの子を助けて。私も協力するから」
「どうするグリアラ。これ演技のように見えないけど」
「うーん、信じてもいいけど、一つ聞かせなさい。今ムウナが戻ったら何が起きるの?」
「ムウナは大地の民の裏切り者。裏切り者には制裁を、それが私達のモットーなの。それがどういう意味か分かる?  あの子が戻ったら……」
「処刑されるのか?」
「そういうこと。急がないと」
「分かった。今すぐ準備する」
彼女の話が本当なら、急いで地下の国へと向かわなければならない。
(何とか無事でいてくれ、ムウナ)
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