この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第56話潜入!地下の国ロクランスタ
ムウナ救出組は、俺を含めグリアラとライノの三人。囚われている可能性がある場所は予めスウから聞いていたので、俺達はそれを辿って道を進んだ。
「でも何で、一々隠れながら進むの?」
「俺達はあくまで不法入国者だ。見つかったら何が起きるか分からないだろ? まあ、あっちはムウナがいるから心配ないだろうけど」
「そっか。でも見つかるかなムウナ」
「大丈夫さ。きっと見つかる」
道中かなり危ないとは分かっているが、見つかりさえしなければどうという事はない。あとは何とかムウナの元に辿り着いて、助け出したらそのまま地上へ出ればいい。
「どなたかお探しかしら?」
次の場所へお動こうとすると、背後から誰かに話しかけられる。しまった、見つかってしまったか。
「えっと、わ、私達はですね……」
その問いに対してライノが答えようとするが、動揺した素振りを見せる。何かシャイニーみたいだな彼女。
「そんな慌てなくても大丈夫。あなた達が何者かしっかりと分かっているから。そうでしょ? 不法入国者さん達」
そう言うと彼女は指を鳴らした。それと同時に俺達は大人数に囲まれてしまう。俺達が国に入った時点で、ばれてしまっていたのか?
「無駄な抵抗をしようとするなら、確実に殺すわ。でも大人しくついて来ればまだ生かしてあげる」
「くそ、こんなに早く見つかるなんて」
「どうしますか?」
「どうするもなにも、大人しくするしかないだろ」
「でもこんな所で捕まったら、助けにも行けないわよ」
「分かっている。でも今殺されるよりは」
「ジャッジメント」
ライノが何かを唱えたのか、突然周りに光が落ちて敵を掃討する。
「お、おいライノ。いきなりそんな事したら」
「敵襲! 森の姫巫女三人を含む地上の人間が、我々の国に侵入。直ちに増援を」
「ほら言わんこっちゃない。逃げるぞ二人とも」
その場から逃げることはできるとはいえ、これだけ派手なことをしたら隠れることなんてできない。急いで救出に向かわなければ。
「どうしていきなり、あんな事をしたんですかライノさん」
「捕まるの嫌だったんです。もういつまでも暗い所にいるのが」
「だからってここまでしなくても……」
「とにかく今は、この場から離れるわよ」
ライノによって、何とか俺達はその場を抜け出すことに成功したものの、俺達のピンチはまだこの後も続く。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ロクランスタで騒ぎが起き始めた頃、別行動のスウ達は早くも大地の歌姫と出会っていた。
「これはこれは、大地の姫巫女様ではございませんか」
「あなたが大地の歌姫と呼ばれている子ね」
「はい。わたくしは大地の歌姫ミラですわ。以後よろしくですわ。ところで後ろのお二方は?」
「あなたと同じ森の歌姫と光の姫巫女よ」
「まあ地上の人間を! あなたはそれがどれだけ罪なことかご存知で?」
「知っているわよそのくらい」
先の大災害により地上から地下へと追いやられた大地の民は当然地上の人間に恨みを持っている。それはスウ自身もだった。しかし最近、ムウナが地上から帰って来なくなった事により、もしかしたら地上もいいところなのではないかとさえ思ってしまっていた。何とも情けない話だ。
「だったら今すぐ兵士団を呼びますわ。あなたも先代と同じように処刑させるがいいですわ」
「私はあなたにお願いがあってきたの」
「反逆者のお願いを聞くほど私の心は広くない。殺されない内に出て行くのが身の為ですわよ」
「あなたの力を貸してほしいの。世界を救う為に」
「聞こえませんか? 私は協力しないと。世界が滅んだかなんだか、知りませんけど私達には関係ありませんわ」
「これは私のお願いじゃない。咲田のお願いなの。それならどうかしら」
「そうた? どなたですかそれは」
「地上の人間でも、この世界の人間でもない一人の男よ」
「スウさん、どうしてそれを」
咲田に出会って間もない彼女が、咲田の事情を知るはずがない。それなのになぜ彼女は知っているのか、シャイニーとクスハは疑問に思う。
「噂には聞いていたけど、やはり存在するのですわね」
「そうよ。その人まで偏見するのかしら、あなたは」
「その取引、少し考えさせてほしいですわ。私にも立場というのがありますから」
「考えるってどのくらいよ」
「そうね。あなた達が牢獄から戻って来れたら、かしら」
「え?」
会話に気を取られていて三人は気づいていなかった。自分達が既に包囲されていることを。
「あなた達の他にも侵入者がいるみたいだけど、捕まるのも時間の問題ですわ。あなた達は無断でこの地に足を踏み入れた。重大な罪ですわよ」
「無断でって、私は大地の姫巫女よ!」
「残念だけど、あなたは今日を持って反逆者とさせていただきますわ。あのムウナという反逆者と一緒にね」
絶望的な状況に陥る三人。誰もが諦める中、一人だけ諦めていない人物がいた。
「スウ、このままだと……」
「分かったわ。大人しくあなた達について行くわよ」
「スウさん!」
「あら、意外と大人しいのですわね。こちらもそうしてくれると、助かりますわ」
「ただし」
突然大きな揺れが発生する。スウ達を囲んでいた人達が揺れに耐えられず、陣形が崩れ出す。
「私以外はちゃんと逃げさせてもらうわ」
「スウさん?」
「逃げて二人とも。二人には耐震性の魔法かけておいたから、揺れに影響ないはず」
「でもそれだと、スウさんが」
「いいの。この歌姫には意地でも分からせてあげたいから。あの子、ムウナが考えていたことを!」
「スウ、あなた本当は……」
「早く!」
シャイニーとクスハは戸惑いながらも一瞬の隙を見て逃げ出す。残されたスウは、二人を逃がせた事に一安心し、その場に座り込んだ。
(慣れないことするんじゃなかった。まだまともに操りもできないくせに、何格好つけているのかな私)
でも、悪い気はしなかった。これでムウナを助け出し、この歌姫を説得さえできれば作戦は成功する。説得するのは容易な事ではないかもしれないけど、きっとできるはずだ。何故なら、
(あの子の考えを分かっているのは、私くらいしかいないもの)
「でも何で、一々隠れながら進むの?」
「俺達はあくまで不法入国者だ。見つかったら何が起きるか分からないだろ? まあ、あっちはムウナがいるから心配ないだろうけど」
「そっか。でも見つかるかなムウナ」
「大丈夫さ。きっと見つかる」
道中かなり危ないとは分かっているが、見つかりさえしなければどうという事はない。あとは何とかムウナの元に辿り着いて、助け出したらそのまま地上へ出ればいい。
「どなたかお探しかしら?」
次の場所へお動こうとすると、背後から誰かに話しかけられる。しまった、見つかってしまったか。
「えっと、わ、私達はですね……」
その問いに対してライノが答えようとするが、動揺した素振りを見せる。何かシャイニーみたいだな彼女。
「そんな慌てなくても大丈夫。あなた達が何者かしっかりと分かっているから。そうでしょ? 不法入国者さん達」
そう言うと彼女は指を鳴らした。それと同時に俺達は大人数に囲まれてしまう。俺達が国に入った時点で、ばれてしまっていたのか?
「無駄な抵抗をしようとするなら、確実に殺すわ。でも大人しくついて来ればまだ生かしてあげる」
「くそ、こんなに早く見つかるなんて」
「どうしますか?」
「どうするもなにも、大人しくするしかないだろ」
「でもこんな所で捕まったら、助けにも行けないわよ」
「分かっている。でも今殺されるよりは」
「ジャッジメント」
ライノが何かを唱えたのか、突然周りに光が落ちて敵を掃討する。
「お、おいライノ。いきなりそんな事したら」
「敵襲! 森の姫巫女三人を含む地上の人間が、我々の国に侵入。直ちに増援を」
「ほら言わんこっちゃない。逃げるぞ二人とも」
その場から逃げることはできるとはいえ、これだけ派手なことをしたら隠れることなんてできない。急いで救出に向かわなければ。
「どうしていきなり、あんな事をしたんですかライノさん」
「捕まるの嫌だったんです。もういつまでも暗い所にいるのが」
「だからってここまでしなくても……」
「とにかく今は、この場から離れるわよ」
ライノによって、何とか俺達はその場を抜け出すことに成功したものの、俺達のピンチはまだこの後も続く。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
ロクランスタで騒ぎが起き始めた頃、別行動のスウ達は早くも大地の歌姫と出会っていた。
「これはこれは、大地の姫巫女様ではございませんか」
「あなたが大地の歌姫と呼ばれている子ね」
「はい。わたくしは大地の歌姫ミラですわ。以後よろしくですわ。ところで後ろのお二方は?」
「あなたと同じ森の歌姫と光の姫巫女よ」
「まあ地上の人間を! あなたはそれがどれだけ罪なことかご存知で?」
「知っているわよそのくらい」
先の大災害により地上から地下へと追いやられた大地の民は当然地上の人間に恨みを持っている。それはスウ自身もだった。しかし最近、ムウナが地上から帰って来なくなった事により、もしかしたら地上もいいところなのではないかとさえ思ってしまっていた。何とも情けない話だ。
「だったら今すぐ兵士団を呼びますわ。あなたも先代と同じように処刑させるがいいですわ」
「私はあなたにお願いがあってきたの」
「反逆者のお願いを聞くほど私の心は広くない。殺されない内に出て行くのが身の為ですわよ」
「あなたの力を貸してほしいの。世界を救う為に」
「聞こえませんか? 私は協力しないと。世界が滅んだかなんだか、知りませんけど私達には関係ありませんわ」
「これは私のお願いじゃない。咲田のお願いなの。それならどうかしら」
「そうた? どなたですかそれは」
「地上の人間でも、この世界の人間でもない一人の男よ」
「スウさん、どうしてそれを」
咲田に出会って間もない彼女が、咲田の事情を知るはずがない。それなのになぜ彼女は知っているのか、シャイニーとクスハは疑問に思う。
「噂には聞いていたけど、やはり存在するのですわね」
「そうよ。その人まで偏見するのかしら、あなたは」
「その取引、少し考えさせてほしいですわ。私にも立場というのがありますから」
「考えるってどのくらいよ」
「そうね。あなた達が牢獄から戻って来れたら、かしら」
「え?」
会話に気を取られていて三人は気づいていなかった。自分達が既に包囲されていることを。
「あなた達の他にも侵入者がいるみたいだけど、捕まるのも時間の問題ですわ。あなた達は無断でこの地に足を踏み入れた。重大な罪ですわよ」
「無断でって、私は大地の姫巫女よ!」
「残念だけど、あなたは今日を持って反逆者とさせていただきますわ。あのムウナという反逆者と一緒にね」
絶望的な状況に陥る三人。誰もが諦める中、一人だけ諦めていない人物がいた。
「スウ、このままだと……」
「分かったわ。大人しくあなた達について行くわよ」
「スウさん!」
「あら、意外と大人しいのですわね。こちらもそうしてくれると、助かりますわ」
「ただし」
突然大きな揺れが発生する。スウ達を囲んでいた人達が揺れに耐えられず、陣形が崩れ出す。
「私以外はちゃんと逃げさせてもらうわ」
「スウさん?」
「逃げて二人とも。二人には耐震性の魔法かけておいたから、揺れに影響ないはず」
「でもそれだと、スウさんが」
「いいの。この歌姫には意地でも分からせてあげたいから。あの子、ムウナが考えていたことを!」
「スウ、あなた本当は……」
「早く!」
シャイニーとクスハは戸惑いながらも一瞬の隙を見て逃げ出す。残されたスウは、二人を逃がせた事に一安心し、その場に座り込んだ。
(慣れないことするんじゃなかった。まだまともに操りもできないくせに、何格好つけているのかな私)
でも、悪い気はしなかった。これでムウナを助け出し、この歌姫を説得さえできれば作戦は成功する。説得するのは容易な事ではないかもしれないけど、きっとできるはずだ。何故なら、
(あの子の考えを分かっているのは、私くらいしかいないもの)
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