この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第4話語られるはもう一つの歴史
「な、どうして俺がそんな事をしなきゃいけないんだよ」
『異世界の者であるお主であれば、セリーナの命を奪ったのち時空門によって元の世界に帰る。そうすれば罪に問われる事はない』
「そんなの出来るわけないだろ!」
皆が寝ているのを忘れて思わず声を出してしまう。慌てて口を塞いで様子を見てみるけど、どうや誰も起きずに済んだらしい。
「とにかく俺にはそんな事はできない。何で彼女を殺されなければならないんだ。そんな起きるかも分からない事の原因を、勝手にセリーナのせいにして、殺せだなんておかしすぎる」
『何もおかしな話はしておらぬ。セリーナが起こすというのは確かな根拠の元、我は言っておる』
「確かな根拠って、そのセリーナの秘密みたいな事か?」
『そう。それを知った上でお主には、今一度答えを聞かせてもらう』
そう前置きをすると、天の声は語り始めた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
これは咲田が四年前に水の姫巫女になるよりも更に以前の話。まだ先代の姫巫女カルミナが生きていた頃の話である。
「カルミナ様、お食事の方お持ちいたしました」
「ありがとう、セリーナ」
先代は代々の巫女の中でも、清楚淡麗で誰よりもその任を全うする素晴らしい巫女だった。それに使えるセリーナも然り、二人は他国からも注目されるくらいの存在であった。
「ところでカルミナ様、最近私こんな噂を耳にしたのですが」
同時にウォルティア自体にある噂が立っていた。
「何?」
「ウォルティアの地下深くに、世界で起きている例の事に関連している何かが眠っているらしいんですけど、カルミナ様はご存知ですか?」
「そういえば私の二つ前の代が、何かを隠したって話は聞いた事あるけど」
それはウォルティアの奥深くに、何百年も続く呪いの元凶とも呼べる何かが眠っているらしいとの事だった。
「それって今も眠っているのか?」
『それはもう存在しておらぬ。丁度お主がこの世界に来る前に消失しておる』
「そもそもその元凶というのは、何なんだよ」
ここまで話を聞いたところで、俺は一つ尋ねる。
『お主も一度聞いた事があるはず。三百年前に起きた悲劇の事』
「ああ、全ての始まりとなったあの事か?」
以前初代水の姫巫女からこの国の歴史の事は聞いた事がある。何かの方法で世界を変えようとしていたが、それが失敗し闇の牢獄とラファエルを生み出してしまった。
結局それを俺や他の巫女達の手で、全てを終わらし世界の平和を手に入れたのだが、それより以前に何かが起きていたみたいだ。
『ウォルティアの奥深くに眠っておったのは、初代水の姫巫女の身体そのもの。その身体には世界を変えようとした代償として多くの闇が潜んでおった』
「え? マリアーナは自殺したって自分で言ってたから、てっきりその身体はどこかの墓に眠っていると思ったんだけど」
『自殺したのは確かな話じゃ。しかし、どこで亡くなったのかまでは聞いておらぬだろ?』
「あ」
確かにそこまでは語られていなかった。別にこだわるところでもなかったし、そこまで知る理由は俺にもなかった。
「で、でも自殺場所がそこなら誰かが見つけてちゃんとした場所に……。そもそも、二百年以上前に亡くなった身体が残っているわけないだろ」
『それも呪いみたいなもの。我もそうであるように、彼女もまた、呪われてしまった』
「呪いってそんな……」
非現実的な話ばかりで、少々混乱してしまう。
『それに世界は悲しいもので、元凶である彼女が行方不明になっても、皆が罰当たりだと捜索すらしてもらえなかった』
「だから二百年もの間、眠っていたっていうのか」
それなら合点がつくが、あまりに非常すぎるそれに怒りさえ覚える。確かに彼女のした事は罪かもしれないがら何もそこまでする必要はない。
『そしてそれを再び発見する事ができたのが、カルミナとセリーナの二人。二人はそこで新たな悲劇を生み出す事になる』
「か、カルミナ様」
「セリーナ、逃げて……。私は大丈夫だから……」
「わ、私だけ逃げるなんてそんな……」
マリアーナのその死骸を見つけ、一度触れてしまったカルミナは死骸から溢れ出す闇に、身体が飲まれてしまう。それを目の当たりにしてしまったセリーナは、ただ混乱するばかりだった。
(私どうすれば……)
恐らくこのままだとカルミナは力尽きてしまう。そこで彼女が思いついたのは……。
「魂の転移? それってもしかして……」
『お主がこの世界に来てしまった事と同じ事を彼女はその時行った。その魂を移したのは当然マリアーナの身体。それで闇を制御して、カルミナを助け出した』
「じゃ、じゃあセリーナのあの身体は」
『初代水の姫巫女、マリアーナの身体そのもの。お主が一度入った身体こそがマリアーナの物と言っていたが、それは嘘。セリーナのその身体こそがマリアーナの物になる』
「つまり俺にセリーナを討ってほしいというのは」
『そう。マリアーナの身体を打ち滅ぼして世界から完全に闇を消し去ってほしいという事じゃ』
「でもそんな事をしたらセリーナは」
『既に彼女の体は消えておる。その魂も存在も全て、消え去る事になる』
つまり俺はまた、一つの命と世界を股にかけないって事なのか?
『異世界の者であるお主であれば、セリーナの命を奪ったのち時空門によって元の世界に帰る。そうすれば罪に問われる事はない』
「そんなの出来るわけないだろ!」
皆が寝ているのを忘れて思わず声を出してしまう。慌てて口を塞いで様子を見てみるけど、どうや誰も起きずに済んだらしい。
「とにかく俺にはそんな事はできない。何で彼女を殺されなければならないんだ。そんな起きるかも分からない事の原因を、勝手にセリーナのせいにして、殺せだなんておかしすぎる」
『何もおかしな話はしておらぬ。セリーナが起こすというのは確かな根拠の元、我は言っておる』
「確かな根拠って、そのセリーナの秘密みたいな事か?」
『そう。それを知った上でお主には、今一度答えを聞かせてもらう』
そう前置きをすると、天の声は語り始めた。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
これは咲田が四年前に水の姫巫女になるよりも更に以前の話。まだ先代の姫巫女カルミナが生きていた頃の話である。
「カルミナ様、お食事の方お持ちいたしました」
「ありがとう、セリーナ」
先代は代々の巫女の中でも、清楚淡麗で誰よりもその任を全うする素晴らしい巫女だった。それに使えるセリーナも然り、二人は他国からも注目されるくらいの存在であった。
「ところでカルミナ様、最近私こんな噂を耳にしたのですが」
同時にウォルティア自体にある噂が立っていた。
「何?」
「ウォルティアの地下深くに、世界で起きている例の事に関連している何かが眠っているらしいんですけど、カルミナ様はご存知ですか?」
「そういえば私の二つ前の代が、何かを隠したって話は聞いた事あるけど」
それはウォルティアの奥深くに、何百年も続く呪いの元凶とも呼べる何かが眠っているらしいとの事だった。
「それって今も眠っているのか?」
『それはもう存在しておらぬ。丁度お主がこの世界に来る前に消失しておる』
「そもそもその元凶というのは、何なんだよ」
ここまで話を聞いたところで、俺は一つ尋ねる。
『お主も一度聞いた事があるはず。三百年前に起きた悲劇の事』
「ああ、全ての始まりとなったあの事か?」
以前初代水の姫巫女からこの国の歴史の事は聞いた事がある。何かの方法で世界を変えようとしていたが、それが失敗し闇の牢獄とラファエルを生み出してしまった。
結局それを俺や他の巫女達の手で、全てを終わらし世界の平和を手に入れたのだが、それより以前に何かが起きていたみたいだ。
『ウォルティアの奥深くに眠っておったのは、初代水の姫巫女の身体そのもの。その身体には世界を変えようとした代償として多くの闇が潜んでおった』
「え? マリアーナは自殺したって自分で言ってたから、てっきりその身体はどこかの墓に眠っていると思ったんだけど」
『自殺したのは確かな話じゃ。しかし、どこで亡くなったのかまでは聞いておらぬだろ?』
「あ」
確かにそこまでは語られていなかった。別にこだわるところでもなかったし、そこまで知る理由は俺にもなかった。
「で、でも自殺場所がそこなら誰かが見つけてちゃんとした場所に……。そもそも、二百年以上前に亡くなった身体が残っているわけないだろ」
『それも呪いみたいなもの。我もそうであるように、彼女もまた、呪われてしまった』
「呪いってそんな……」
非現実的な話ばかりで、少々混乱してしまう。
『それに世界は悲しいもので、元凶である彼女が行方不明になっても、皆が罰当たりだと捜索すらしてもらえなかった』
「だから二百年もの間、眠っていたっていうのか」
それなら合点がつくが、あまりに非常すぎるそれに怒りさえ覚える。確かに彼女のした事は罪かもしれないがら何もそこまでする必要はない。
『そしてそれを再び発見する事ができたのが、カルミナとセリーナの二人。二人はそこで新たな悲劇を生み出す事になる』
「か、カルミナ様」
「セリーナ、逃げて……。私は大丈夫だから……」
「わ、私だけ逃げるなんてそんな……」
マリアーナのその死骸を見つけ、一度触れてしまったカルミナは死骸から溢れ出す闇に、身体が飲まれてしまう。それを目の当たりにしてしまったセリーナは、ただ混乱するばかりだった。
(私どうすれば……)
恐らくこのままだとカルミナは力尽きてしまう。そこで彼女が思いついたのは……。
「魂の転移? それってもしかして……」
『お主がこの世界に来てしまった事と同じ事を彼女はその時行った。その魂を移したのは当然マリアーナの身体。それで闇を制御して、カルミナを助け出した』
「じゃ、じゃあセリーナのあの身体は」
『初代水の姫巫女、マリアーナの身体そのもの。お主が一度入った身体こそがマリアーナの物と言っていたが、それは嘘。セリーナのその身体こそがマリアーナの物になる』
「つまり俺にセリーナを討ってほしいというのは」
『そう。マリアーナの身体を打ち滅ぼして世界から完全に闇を消し去ってほしいという事じゃ』
「でもそんな事をしたらセリーナは」
『既に彼女の体は消えておる。その魂も存在も全て、消え去る事になる』
つまり俺はまた、一つの命と世界を股にかけないって事なのか?
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