この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第10話解放されし姫巫女 後編
「お前何をしたんだ、ラファエル」
ラファエルが原始の姫巫女を解放するという予期せぬ行動に俺は驚きを隠せなかった。まさか割れそうにないあの水晶を触れただけで壊してしまうとは……。
「何をしたも僕は原始の姫巫女様を閉じ込めていた水晶から、解放してあげただけだよ」
「何故そんな事をする」
「君は分かっているはずだよ。姫巫女に呪いがあるように、彼女にも呪いがかかっている事を」
「まさか、生きているのか?」
「ご名答。まあすぐには意識を取り戻さないだろうけど、彼女は利用させてもらうよ」
「っ、させるか!」
ラファエルがこの場から消えるその寸前で、何とかそれを阻止する事に成功する。まだ怪我した後だから、思うように動かせない。だけど彼女から原始の姫巫女を奪還さえする事ができれば、
「僕の計画をそう簡単には邪魔させないよ」
「ぐっ」
だがラファエロも負けじと対抗。俺に原始の姫巫女を奪わせまいと闇の魔法を使用する。俺は痛みに耐えながらも、決して離さないで彼女の手から一人の少女を救い出す。
「っ! 姫巫女でもないくせになかなかやるね。だけど奪い取ったところで、また奪い返せばいいだけの話」
だが次の瞬間、この部屋の入口が開け放たれた。
「咲田君!」
「咲田!」
「うっ、光が……」
開け放たれた扉から漏れた光がラファエルの目くらましとなり、俺はその隙をついてラファエルと一度距離を置く。
「大丈夫ですか咲田君」
「ああ、何とか」
「咲ちゃん」
「咲田! 大丈夫か」
俺を助けにやって来たのはグリアラとシャイニー、そしてその二人の後ろに向日葵と雄一の姿も見えた。
「お前ら…」
「久しいわねラファエル。一度では足らずによくも咲田に手を出したわね」
「森の姫巫女と光の姫巫女。よくも僕の計画を邪魔してくれたね」
「あなたの計画は知りませんが、ここで会った以上決着を」
「残念だけど、今は君達と戦う理由はないから、ここで退却させてもらうよ」
「おい、待て!」
ラファエルはそう捨て台詞を吐くと、自らが作った闇の中へと消えていってしまった。
「ちっ、逃がしたか」
「咲田、怪我はない?」
「何とか……な」
「それより咲田君が抱えているその子はもしかして……」
「ああ。原始の姫巫女だ」
■□■□■□
ラファエルとの騒ぎがひと段落し、原始の姫巫女を部屋で寝かせた後に、俺は向日葵と雄一を部屋に呼んだ。
「俺は二人だけを呼んだんだけど」
「いいじゃないですか。私達も聞きたい事があるんですから」
「そうよね、シャイニー」
のだが、シャイニーとグリアラもついてきて五人で話をする事に。
「咲ちゃん、さっきどうしてあんなところにいたの?」
「ちょっと俺も考え事したかったんだよ。でもまさか、ラファエルが現れるなんて考えてなかったけど」
「そのラファエルってのは誰なんだ」
「簡単に説明すると、今回の一連の事件の犯人だ」
「じゃあ咲ちゃんもそのラファエルって人に?」
「ああ」
まさかそこから、原始の姫巫女が解放される展開になるとは思っていなかったけど。
「やはりそうだったんですね。でもどうしてラファエルは原始の姫巫女様を?」
「計画とか何とか言っていたけど、俺も詳しくは分からない。でもあの水晶をあいつは目の前で壊したんだ」
「にわかには信じがたい話だけど、部屋で眠っている以上本当なのね」
「俺も流石にあれはビックリしたよ」
何はともあれ原始の姫巫女をこちらで守る事ができたのだから、とりあえずこの話はしばらく置いておく。原始の姫巫女が目を覚まさないと何も始まらないわけだし。
それよりも二人を呼び出したのには別の理由がある。
「向日葵、雄一、俺は二人に頼みたい事がある」
「何だよいきなり」
「昨日俺が話した事なんだけど、二人は元の世界に戻ってくれないか?」
「え? 昨日は選択肢があるって言ったでしょ?」
「言ったけど、やっぱりお前達二人だけは安全な世界に帰ってほしいんだ」
「何をふざけた事を言っているんだよ咲田! お前と俺達の仲はそんな薄いものだったのかよ」
「そうじゃない、そうじゃないんだ」
今回ラファエルが本当に生きている事が確認された事により、二人の安全性が低くなってしまった。現にムウナも負傷し、次いつ誰がこうなるか分からない。
二人だけにはそうなって欲しくない。
「聞いたと思うけど、昨日ムウナも怪我を負った。そして一連の事件の犯人の正体も見えた。ラファエルは危険すぎるんだよ」
「だったら、咲田も帰ればお終いじゃないか。何も残る必要はないだろ。仮にそうでなくても、俺達もここに残ったっていいじゃないか」
「私も昨日一日ずっと考えて、この世界に残りたいって決めたの。咲田君だけを一人にさせるなんてできない」
「二人の気持ちも嬉しい。俺もこの事件を雄一達を含めて一緒に解決するのがいいのではないかと考えた。でも二人が残るという選択をしたら、多分全てが終わった時ぐ一番辛い思いをすることになると思うんだ」
「何だよそれ、どういう意味だよ」
次の言葉が出てこない。シャイニーもグリアラも黙って俺達を見ている。
「これは俺だけじゃない。シャイニーにも、いや下手すれば姫巫女全員に関わってくる問題があるんだ」
「私達に? 咲田君、それってまさか……」
「もし今回の一連の事件が解決して、原始の姫巫女の願いを叶えた時、既に死者である俺とシャイニーはもうこの世の存在ではなくなる」
ラファエルが原始の姫巫女を解放するという予期せぬ行動に俺は驚きを隠せなかった。まさか割れそうにないあの水晶を触れただけで壊してしまうとは……。
「何をしたも僕は原始の姫巫女様を閉じ込めていた水晶から、解放してあげただけだよ」
「何故そんな事をする」
「君は分かっているはずだよ。姫巫女に呪いがあるように、彼女にも呪いがかかっている事を」
「まさか、生きているのか?」
「ご名答。まあすぐには意識を取り戻さないだろうけど、彼女は利用させてもらうよ」
「っ、させるか!」
ラファエルがこの場から消えるその寸前で、何とかそれを阻止する事に成功する。まだ怪我した後だから、思うように動かせない。だけど彼女から原始の姫巫女を奪還さえする事ができれば、
「僕の計画をそう簡単には邪魔させないよ」
「ぐっ」
だがラファエロも負けじと対抗。俺に原始の姫巫女を奪わせまいと闇の魔法を使用する。俺は痛みに耐えながらも、決して離さないで彼女の手から一人の少女を救い出す。
「っ! 姫巫女でもないくせになかなかやるね。だけど奪い取ったところで、また奪い返せばいいだけの話」
だが次の瞬間、この部屋の入口が開け放たれた。
「咲田君!」
「咲田!」
「うっ、光が……」
開け放たれた扉から漏れた光がラファエルの目くらましとなり、俺はその隙をついてラファエルと一度距離を置く。
「大丈夫ですか咲田君」
「ああ、何とか」
「咲ちゃん」
「咲田! 大丈夫か」
俺を助けにやって来たのはグリアラとシャイニー、そしてその二人の後ろに向日葵と雄一の姿も見えた。
「お前ら…」
「久しいわねラファエル。一度では足らずによくも咲田に手を出したわね」
「森の姫巫女と光の姫巫女。よくも僕の計画を邪魔してくれたね」
「あなたの計画は知りませんが、ここで会った以上決着を」
「残念だけど、今は君達と戦う理由はないから、ここで退却させてもらうよ」
「おい、待て!」
ラファエルはそう捨て台詞を吐くと、自らが作った闇の中へと消えていってしまった。
「ちっ、逃がしたか」
「咲田、怪我はない?」
「何とか……な」
「それより咲田君が抱えているその子はもしかして……」
「ああ。原始の姫巫女だ」
■□■□■□
ラファエルとの騒ぎがひと段落し、原始の姫巫女を部屋で寝かせた後に、俺は向日葵と雄一を部屋に呼んだ。
「俺は二人だけを呼んだんだけど」
「いいじゃないですか。私達も聞きたい事があるんですから」
「そうよね、シャイニー」
のだが、シャイニーとグリアラもついてきて五人で話をする事に。
「咲ちゃん、さっきどうしてあんなところにいたの?」
「ちょっと俺も考え事したかったんだよ。でもまさか、ラファエルが現れるなんて考えてなかったけど」
「そのラファエルってのは誰なんだ」
「簡単に説明すると、今回の一連の事件の犯人だ」
「じゃあ咲ちゃんもそのラファエルって人に?」
「ああ」
まさかそこから、原始の姫巫女が解放される展開になるとは思っていなかったけど。
「やはりそうだったんですね。でもどうしてラファエルは原始の姫巫女様を?」
「計画とか何とか言っていたけど、俺も詳しくは分からない。でもあの水晶をあいつは目の前で壊したんだ」
「にわかには信じがたい話だけど、部屋で眠っている以上本当なのね」
「俺も流石にあれはビックリしたよ」
何はともあれ原始の姫巫女をこちらで守る事ができたのだから、とりあえずこの話はしばらく置いておく。原始の姫巫女が目を覚まさないと何も始まらないわけだし。
それよりも二人を呼び出したのには別の理由がある。
「向日葵、雄一、俺は二人に頼みたい事がある」
「何だよいきなり」
「昨日俺が話した事なんだけど、二人は元の世界に戻ってくれないか?」
「え? 昨日は選択肢があるって言ったでしょ?」
「言ったけど、やっぱりお前達二人だけは安全な世界に帰ってほしいんだ」
「何をふざけた事を言っているんだよ咲田! お前と俺達の仲はそんな薄いものだったのかよ」
「そうじゃない、そうじゃないんだ」
今回ラファエルが本当に生きている事が確認された事により、二人の安全性が低くなってしまった。現にムウナも負傷し、次いつ誰がこうなるか分からない。
二人だけにはそうなって欲しくない。
「聞いたと思うけど、昨日ムウナも怪我を負った。そして一連の事件の犯人の正体も見えた。ラファエルは危険すぎるんだよ」
「だったら、咲田も帰ればお終いじゃないか。何も残る必要はないだろ。仮にそうでなくても、俺達もここに残ったっていいじゃないか」
「私も昨日一日ずっと考えて、この世界に残りたいって決めたの。咲田君だけを一人にさせるなんてできない」
「二人の気持ちも嬉しい。俺もこの事件を雄一達を含めて一緒に解決するのがいいのではないかと考えた。でも二人が残るという選択をしたら、多分全てが終わった時ぐ一番辛い思いをすることになると思うんだ」
「何だよそれ、どういう意味だよ」
次の言葉が出てこない。シャイニーもグリアラも黙って俺達を見ている。
「これは俺だけじゃない。シャイニーにも、いや下手すれば姫巫女全員に関わってくる問題があるんだ」
「私達に? 咲田君、それってまさか……」
「もし今回の一連の事件が解決して、原始の姫巫女の願いを叶えた時、既に死者である俺とシャイニーはもうこの世の存在ではなくなる」
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