異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第30話 バレ・・・そうになった

「本当に貴方は5歳なのかしら?」

「はっ?・・・」

突然の事でフリーズしてしまう。

「いえ、貴方の事を色々調べたのですけど正直私の3歳年下とはとても思えなくてちょっと気になっただけですわ」

と言われやっと言葉が頭に染み込む。
だが口から出る言葉は

「は、はあ〜、えーっと・・・」

とかしか出てこない。
とりあえず頭はなんとか回ってきた。

(な、なんでだ?!いや、そうだ、迂闊すぎた!年単位で暮らしていて、ついうっかり忘れて調子に乗ってしまった部分は確かにあった!調べたと言っていた!なら、そう思っても仕方がないだろう。
くそ!天才が!!どうする?
異世界人だとばれたか?いやいやまてまてそんな事は一言も言ってない!なら、俺のとる道は否定しないまでもまわりより少し優れてると言うところをアピールすればいいんだ!
よし!!)

と何とか言葉を絞り出す。

「ああ、そうですね〜、確かにまわりの子供達よりは少し「かなり」・・・オッホン、かなり早くに色々な事ができていた、という事はお認めいたします。
私と申しましても、決して!決して年齢を詐称しているわけではなくてですね」

途中で言葉を挟まれたがなんとか言い訳を絞りだせた。

「別に年齢を詐称している事は疑ってはいないわよ。
ただそうね、侍女たちがいては話ずらいでしょうからさがらせましょう。
貴方達、下がってちょうだい」

と言うと、事前に言ってあったのだろう、サッとした動きで十秒とかからずさがっていった。

「では、僕も本音で話すとしよう」

侍女達が居なくなってすぐに彼女は路地であった時の様な話し方になった。

「あ・・・えっと・・・」

(いや突然口調変えられても対応に困るんだが・・・)

「ああ、この口調の方が僕の素だよ。
お母様譲りでね、御付きの侍女もこんな感じの女性達だったからね。
嫌なら元に戻すけど?」

「い、いえどちらでもお構いなく楽な方でどうぞ」

(断っ然ボクっ娘の方がいいです!!
気持ち的にも!!まあ聞き取りやすさも)

「そうかい?ならこのまま話させてもらおう。

で、僕が聞きたいのはそんな事ではない。
君の話はお父様からお聞きした。
なんでも過去最高のスキル数を持っているとか」

「あ〜、そうですね。非才の身ながら恥ずかしい限りです」

(この話は続けるとボロが出るから本当にやめて欲しい)

「ハハハ、君が非才?冗談だろ?間違いなくこの国始まって以来の天才だよ。
さっきも言った通り僕は君を調べた。
お父様に聞いた、なんて簡単なものじゃなくお金で専門家を雇ってね」

「は?専門家まで雇われたのですか?そのお年で?」

(いやいやいややばいぞこの状況早く帰りたい!!)

「お母様に頼んだら即実行してくれたよ」

「あ、なるほど」

(そういうところは8歳なんすね
少し安易すぎるような気もするが)

「うん、僕の喋り方でわかる通り、お母様も少しお転婆気味でね、考えたら即実行だよ。
そして君の情報を聞いた」

「・・・」

(やばい、緊張して気持ち悪い、胃がキュンキュンしてきた)

「僅か一歳と半年ちょっとで言葉を喋り出すのと同時に本を文字も習ってもいないのに読み出す。
それから僅か2歳で外を出歩くようになり、しかも家を出た初日に奴隷を購入した。
異常すぎる。

そして勘が異常に鋭く、異常な程の身体能力を持っている」

(所々ちょいちょい違うな、君たちの密偵はザルなのか?
ああ、お父様の情報操作か!
うわ〜踊らされてるよ)

だがわからないことがある。

「いやあの言っている事は大体正しいのですが最後の部分がわかりませんね。
僕の勘の良さと身体能力は何故お分かりに?」

「それはもちろん試したからだよ」

「?
試したとは何をですか?」

「君、僕と初めてあった時の事は憶えているよね?」

「もちろんです」

(なにいっているんだ?)

と疑問に思っている俺に

「あれね、僕が仕組んだんたよ」
と爆弾を投下してきた。

「は?」

「だからあれは僕が仕組んだんだよ。
全部演技さ」

「は?え?な、何故そのような事を?」

「だから言ったろ。君を試すためさ。わざわざゴロツキを雇ってね。
まずは僕が君に付けたゴロツキに気づいていたのだろう?
しかもなによりその次だ。
君はまだ見えていないはずの3人の姿を捉えていた。しかも何故かずた袋を持っている事さえ見透かしてね。
すぐに護衛達に指示を出していたそうだね。
あの袋ね、実は中からだと外が見える仕組みになっているんだよ。

そう、僕は見た。君のありえない速度の踏み込みを。
神速を含めても明らかにおかしいんだよ。
速さもそうだけど拳の威力が、だ。
あの後ゴロツキに聞いた。
尋常じゃない威力だったそうじゃないか。
君の年での平均レベルは3から5だ。
ちなみに僕は15だ。とある事情から3歳になってすぐに鍛え続けてやっとこのレベルだよ。
君が殴ったのはゴロツキの中でも一番体格のいい男だった。
その男が断言したよ。
生きてきた人生で一番重かった、と。
だから僕は許婚として是非ともそこのところを聞きたい。
どうなんだい?」

と一気にまくし立てた。
(な、なんつー女だ!やばい!あの場には確かに2、3人だが人がいた!
見られているだけなら神速で言い訳がつく。
だがやられた本人までグルだと言い訳ができなくなる!
クソ!人殴ったのなんて久々だったから興奮してそこまで気が回らなかった!!
前者は神眼を知っているだろうから言い訳がつく!
だが後者はまずい!と、取り敢えず誤魔化す)

「ど、どうなんだい?と申されましても私には分かり兼ねます」

と言ってみる。

「ふーん、誤魔化すのかい?
この事は誰にも喋っていない。
誓って言わせてもらうけど僕は別に君を脅して何かして欲しいわけじゃない。
ただそうだね・・・僕の目標というより夢におそらく君が最も近い位置にいるんだよ。
君が許婚だと聞いたのは4歳になってすぐだった。
絶望したよ。正直嫌だったんだよ。
だから調べたんだけどね。
けど君を知って僕は考えを改めた。
だからこうして、素で話しているんだよ。
あそこまで危険な事をしてまで君の事が知りたかったんだよ」

・・・

若干の沈黙がはしる。

(いや、沈黙はまずい。事態が悪化する恐れがある。だからと言って何もかも話すのは絶対ダメだ。どうする?なにから話す!)

と考え、やっと出てきた言葉が、

「えっと・・・結局のところ貴方は私のなにが知りたいのでしょうか?」

だった。

(悪くはないはず、情報を相手に制限させるからな)

「全部!」

・・・俺の浅はかな策は一瞬で打ち破られた。

「1から10までの全てを知りたい!!」

と今までで一番興奮したように言った。

「と、申されましても・・・私にもはなせないことがありまして、全部と申されましても・・・」

この世界でステータスを聞くのはマナー違反だ。
ステータスは個人そのもの、即ち生命線だ。
安易に聞いていいものでもなければ答えていいものでもない。

(王女だからこそ許される蛮行だぜ!まったく!!)

「そ、そうだね、ごめん、興奮しすぎたよ。
ええっとまずはやっぱり強さの秘密からかな」

「それは私の奴隷であるアイナの火属性の魔「魔法がかかっていないことは確認済みだよ」・・・」

嘘が一瞬で見破られた。

「は〜、次嘘ついたらお父様や公爵様方にこのことを話すからね」

イエローカードを突きつけられた。

(クソ、アイテム使ってやがったのか!気付かなかった!!)

確かにそういう魔道具があることは本に書いてあった。
だが神眼は範囲内の全てを理解できるわけではない。
あくまで見ようと思うものしか見えないのだ。
当然見落としはある。

(・・・万事休すか、魔法で鍛え続けていることを話すか?クソっ、面倒くさいことになったぜ)

「・・・申し訳ございませんが王女殿下、いくら王女殿下といえど私個人の秘密やステータスはお話し出来ません、何処かに漏れてしまえば命に関わりますゆえ」

遠回しにお前は信用できないと言ってやる。
多少家に迷惑がかかるがこの方法しかない。

「それはつまり僕が信用できない、という事かな?」

せっかくオブラートに包んでやったのに率直に聞いてきた。

「・・・」

「君との許嫁を断るとしても?」

・・・いい加減ウザくなってきた。

どうせ冒険者になるんだし、と考えるとまあどうなっても逃げればいいか、という気持ちが湧いてきた。
だから王女の前の椅子にドカリと座り言ってやった。

「・・・そうですね、断るとしてもですよ」

「・・・」

と今度は王女殿下が押し黙った。

「僕のステータスは正直誰にも見られたくないのですよ。
見たやつ、知ったやつは全員殺すくらいには、ね」

王女殿下の顔が強張った。

本気だ。未だ出会った事はないが、俺のステータスを知ったと思われるやつは両親などの例外を除いて皆殺しにする予定だ。これは譲れない。

「僕が迂闊すぎたのはみとめますよ。
ですがね人には言っていい事と悪い事っていうのがあるんですよ。
貴方がどの様な目標を持っているのかは知りませんよ。ですが僕がそれに協力するとお思いですか?」

するわけがない。
転生者を若干疑っていたがそれはない。
転生者ならこんな聞き方はしないだろう。
こういうワガママさは5歳だ。

「答えをお教えしましょう。
断固拒否!、です。
婚約の解消?
そうですか、確かに私の家は困りますね。
で?
いいでしょう!そんなに私との結婚が嫌なのであれば私の方から父にお話ししますとも。
婚約を解消してくださらないのであれば今すぐ家を出て行く!、と」

しなくても出て行くが、ハッタリだ。

「ま、待ってくれ、ご、ごめん、そんなに怒るとは思わなかったんだ!ゆ、許して欲しい。怒らせるつもりは無かったんだ、本当にすまない」

と、肩をプルプルさせ始めた。
予想外すぎる。

(あ、ヤバイ、泣きそうになっている)

よく考えたらこの子はまだ5歳だった。
俺?今年で精神年齢26っす。

やばい、なんか俺が大人気ない感じの空気になり出している。

「い、いやごめんね、俺もちょっと言いすぎたよ。ごめんね、な、泣かないでくださいな」
とあたふたしてしまう。

「もう、怒ってないかい」

「おお、怒ってないよ、全く全然怒ってないですとも」

「そうか、それは良かった!」

と、ケロリしだした。

「・・・」

「どうしたんだい?」

「え、演技だったんですか?」

「ははははは・・・」

「・・・はははははは、はあ〜・・・」

もうなんか怒る気にもならん。

「あの、もうなんか疲れたので帰ってもいいですか?」

「そうだね、もうそんな時間だね」
と、手で合図をするとすぐに侍女が来た。

(見てたんじゃねーだろーな)

もうここら中が罠だらけに思えてならない。
取り敢えず形式として、

「本日はお招きいただきまして誠に感謝申し上げます」

すると、声音を変えて、

「こちらこそ来てくださり感謝致しますわ。
非常に有意義な時間でした」
と言った。

(俺はこの人生最悪の時間だったよちくしょう!)

と内心毒ずきながら帰っていった。

〜その後の庭で〜

「ハアアアアァァァァァーーーー・・・・」

と長いため息をついた。

「大丈夫ですか?」

と侍女が聞いてくる。

「はい。では、私もお部屋に戻らせていただきますね。
後片付けをよろしくお願いします」

「はい!お任せください。
では、ごゆっくりお休みなさいませ」

 と言って自分の部屋にかえる。
 そしてベットに倒れこみうずくまる。
平然としているように見えていたが実際は怖くて堪らなかったのだ。本当に泣きそうだった。
彼があたふたし出さなかったら間違いなく泣いていた。
人生で初めてあんな猛烈な怒りをぶつけられた。
彼の殺すという言葉に自分が入っていることが恐ろしかった。
彼は本気で言っていた。そしてまず間違いなくそれが実行できる。
そう考えると怖くて堪らないのだ。
少し過呼吸気味になるのを慌てて抑えてから、真剣にこれからについて考える。
話した以上彼は警戒しだす。
また密偵をやって僕だとばれたら間違いなく殺しにくる。
防げるか?
防げる訳がない!壁で見えない100メル以上先の担がれたずた袋まで見抜いた。
恐らく未知なる何かがある。
魔道具の一番有名な本に書かれている魔眼石のアイテムは説明文が作者が分かりやすく少し変えたものだ。
つまり魔眼石を魔眼や鑑定で見た内容と違うのだ。
そこで抜けている最も重要な文章。
“対象のレア度7以下の全てのスキル”を見ることができる、だ。
本人は含まれないらしいが・・・
しかも魔法がかかっていないのにも関わらずあの威力の右ストレート。
レベル10そこらの人間の一撃ではない。
それが示唆するところは、存在が未だわかっていない幻のスキル。

「挫けてはいけないよ、僕。
彼は僕の夢に最も近い人間なのだから」

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