異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第33話 許しはしないけど怒ってはいない

それからすぐに

「では、ちょっとだけ聞き込みでもしましょうか」

と、始める。

「いけませんレイン様。
お屋敷に真っ直ぐにご帰宅なさいませ」

と予想通り告げてくる。

「嫌ですよ、それに情報も無しに街なんか出歩けませんよ、危ないじゃないですか」

「帰るだけではありませんか。
私がおりますからご安心下さい」

「貴方が強い事は僕も分かってますが、過信は禁物です。得るべき情報は持っておくべきなのですよ」

情報を侮る奴は早死にするぜ。

「・・・
では私が聞いて来ますので少々お待ちください」

うんうん予想通り。

「いえ、一緒に聞きにいきましょう。
僕も聞きたいのですよ」

「いけません」

危険な事に首を突っ込む可能性があるから?

「では約束しますよ。聞いたら真っ直ぐお家に帰る事を」

「・・・
分かりました」

ありゃ、トドメの「もしくは僕が走って逃げるか」が言えなかった。まあ言えないに越した事はないが。
メイドの足では俺には追いつけない事は双方共に分かっている。
逃げ出すか聞いて戻るかの選択を迫る予定だったのだ。

「そうですか、迷惑おかけします。
では、行きましょう!」

と言って一緒に衛士の所に向かう。

「あの、ちょっとお聞きしたい事があるのですが」

「ん?悪いのだけど・・・オッホン失礼致しました!!
これはこれは貴族の坊っちゃまとその侍女様、私にどのようなご用件で?迷子でしたらあっちに真っ直ぐ行って頂ければ貴族街の門前に立っている衛士に聞いてください」

途中で丁寧な言葉になったのは俺の服が一級ものだと気付いたからだろう。
俺の服はただの平民や並の貴族が着れるようなものではない。

「いえ、違います。
街の様子が慌ただしくなっているようなので事情を聴きに来たのです」

とメイドが話してくれる。
俺は子供らしくメイドの脚にしがみついているだけだ。
衛士が多くて震えている事を演出する。

「そ、それはちょっと言えませんよ、機密事項ですから
ですが安心してください。
このまま家に帰られても問題ありませんよ」

「そうですか・・・」

とメイドが俺を見てくる。

「あ、あのもしかして人攫いが関係してます?」

と聞くと一瞬びくりとした。
ビンゴか。

「い、いえ申し訳ありませんがこれ以上は・・・」

「ちなみに攫った連中はヴァグド盗賊団では?」

「?」

あまりピンときていないようだ。
さらわれた事だけおしえられたのだろう。

「では、これ」

と言って出すのはオリオン公爵家のエンブレム。
簡単に言うと命令書だ。
お父様は俺をそうとう信用しているのかこれを渡してくれた。
街で困った時はこれを出せばオリオン家からの命令になる。
これを出した時はそれで起こるあらゆる責任はオリオン家で背負うと言うかなり重要なものだ。
落としたりしたら軟禁で済めばいいほうだろう。
貰った時はそんなもん渡すなよ!と内心思ったものだが貰っておいてよかった。

「!!??
お、オリオン公爵家・・・
こ、これは大変失礼致しました!!」

と深々と頭を下げる。

「いえ構いませんよ。
それで何があったのか教えてもらえませんか?」

「それは・・・
いえ、分かりました。こちらにお越しください。」

と言って少し路地に入る。
神眼で確認したが周りには何もないし誰もいない。

「実はですね、今朝頃に、第2王女様が・・・行方不明になりました」

・・・なんだ。

この世界に来てからやると決めたことは精力的にやろうと決めているので、わざわざエンブレムまで出したのに大した内容じゃなかった。

(・・・どうしようか。
これも俺の能力を調べるための奴の罠である可能性がある。
というかほぼ間違いないだろう。
王女が拉致って貴方・・・)

「ええっと、何故それがわかったのですか?」

今はだいたい15時辺りだ。探すの遅くね?

「さ、最初はよく1人や御付きの侍女数名と遊びに行っていたので誰も気にされなかったのですが、ですが正午になっても帰られないのでこうして捜索に乗り出したわけです」

(いやそれ問題だろう!
誰も気にしなかったって貴方……。
いやまあ、あんなお転婆王女ならわからん事はないが……)

結果このような事になっているのだから救えない話だ。

「そうですか・・・
犯人から何か連絡は」

「いえ!ありません!」

「そうでしたか、わざわざありがとうございました。
お仕事頑張ってください」

「ハッ!では失礼致します!」
と言って駆け出して行ってしまった。

「ではレイン様、お家に」

「はい、分かりました」

と言って約束通り家への帰路につく。

(なるほど、つまり自業自得だな。
さてどうしようかな?
彼女がオリオン家次期当主と結婚するなら俺も全くの無関係とは言えないしな・・・
助けるか)

と仕方ないので助けることにする。

何故?

今言ったようにオリオン家に恩を持って貰えば来期の当主は安泰だろう。
使い方はともかく頭はいいと思う。
そもそも警戒はしているが怒ってはいない。
感情面ではもうどちらでもいいのだ。
彼女はまだ8歳だ。
自分のありとあらゆる事に失敗していたのに気づくのが遅すぎて全てを失った前世の俺とは違う。
まだ!まだやり直せるのだ。
これからやり直すチャンスは幾らでもある。
今回の事を是非とも教訓にしてもらいたい。

それに彼女は確かにやりすぎたがそれにいつまでも腹を立て続けるのは実年齢26歳としてどうだろう?、と思うのだ。

助けたほうが利益になるか?
助けないほうが利益になるか?
と言う単純な計算なら助けたほうが利益になる。
俺が損するだけだ。

俺には神眼がある。
危なそうな橋ならすぐに引き返せる。

過信も油断もしない。だがローリスクハイリターンだ。
常に神眼で周りを注意すれば多分大丈夫だと思う。

と考え事をしているうちに家に着いたようだ。
だいぶ早足で歩いたからメイドは深呼吸をしている。

「レイン様、おかえりなさいませ。
ご無事で何よりです。
外の方が騒がしくなってまいりましたのでそろそろお迎えを向かわせるところでしたよ」

「ただいま。
そうでしたか、ご苦労様です。
では、部屋に戻りますね」

「はい」

と挨拶をして部屋に戻る。
その途中、メイドが、

「私は奥様に少しお話がありますのでお部屋に真っ直ぐ!お戻りください」

真っ直ぐを強調して言った。

「分かってますよ。では」

と言い別れる。

部屋のドアを開けるとスクナとアイナがいた。

「「お帰りなさいませ」」

「ただいま」

と早速話を持ち出す。
彼女達は俺がもっとも信用し、信頼する者達だ。
俺が言うなと命じれば彼女達は両親にもメイドにも絶対に言わない。
神眼でなんども確認したから間違いない。
だがメイドは違う。
彼女の最上級命令者は俺ではないのだ。
何かあればメイドはお母様に報告する。
速攻報告する。
何のためらいもなく流れる様に報告する。
だから重要なことはメイドには話せない。
それでもそばに置くのは有能ではあるからだ。
彼女は強くて結構万能なところがある。
そばに置いておくのにはもってこいだ。
嫌がらせをして辞めさせるというのは俺の手札には存在しない。
他でもないこの俺がそんなことしていい訳がない。
故にこの2人だ。

「スクナさん、アイナさん、少しお二人に内密のお話があります」

「「ハッ」」

と顔をあわせる。
そしてすぐに「いや近い」と言って突き返す。

(スウゥゥゥゥ〜、いい匂い・・:
じゃなくて!)

「お母様達には話すのは禁止です。
もちろん侍女にも」

と念を押しておく。

「ハッ」

「ええっとですね、簡潔言うと王女殿下が攫われました」

「はあ」

と気の抜けた返事をしてくる。

「それで僕達で救おうかと」

と即座にスクナが反対してきた。

「お止めください。もし御身に何かあれば・・・」

「いえ、大丈夫ですよ。
危なくなれば引きますから」

「ですが!!」

「一応許婚ですから助けに行かなくては男が廃ります。
それについて来なければ1人でも行きますよ」

嘘だ。1人でなんて行くわけがない。
大人1人くらいなら問題ないが集団はダメだ。

「・・・分かりました、お伴します」

この豪邸にいる騎士はお父様に忠誠を誓っているガチ勢だ。
お父様を通さない説明は無理だ。
と言う訳で

「行きましょうか」

「ハッ!」と言ってすぐさま武装をする。

よし行きますか。そろそろ彼女達にも俺が魔法を使えることを言っておいた方がいいだろうし、いい機会だろう。

と扉を開け神眼で兵の配置を確認してみると・・・





コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品