異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第42話 貴方の名前

「これが英雄と呼ばれる者の才能か……」

そうお父様は呟いた。

「ハ、ハハ、ハハハハハハ!凄い!これは凄いな!最強じゃないか!まさか自分の息子にこれほどの者が産まれてくるとは!!ハハハ!」

ところがどっこいそうは問屋が卸さないんだな。

「お父様、僕は無敵にはなれませんよ」

「ん?何を言っておる?魔法に対する最高クラスの防御と無詠唱による魔法の回転の速さ。これを併せて早々に負けるはずが無いではないか!?」

(ああ、知らなかったのは我が矛だったのか……)

「僕はスキルの我が矛は最弱なり、我が盾は最強なりの効果によって攻撃魔法が撃てません」

「な……なんだと」

本日何度目かのなんだとを頂いた。

「なので無双はできないのですよ。
僕はこれが原因だと思っていたのですがご存知なかったのですか?」

「あ、ああ、それを陛下に聞きに行くところだったからな。お前に邪魔されたが……。
ん?
そういえばお前、なんであのとき邪魔したんだ?魔法才能のレベルがばれたくなかったからか?」

公爵やっているだけあって茫然自失って感じで驚いていても頭はちゃんと回っていたらしい。

「まあ、それもあるのですがね……。
僕のレベルがちょっと一目でわかるくらい高いので見られた瞬間バレるっていう……」

「うん?
ああ、そうか!そうだよな!魔法を使えば微々たるものだが経験値が手に入るからな!
で?何レベなんだ?」

とお父様は調子を取り戻したようで今度は逆に興奮していた。
お母様はちょっと顔色がまだ悪い。
「お母様、大丈夫ですか?」
「え、ええ、大丈夫よ。大丈夫。正直まだ信じられないけど全部聞くわ!聞かなければいけないでしょう」

「では、お母様の侍女で鑑定持ちの侍女を呼んできてもらってもよろしいでしょうか?」

(彼女の忠誠心は本物だ。5年もの間俺を鑑定しなかったのだから)

俺がお母様を避けまくっていた理由でもある。
彼女が担当している日は神眼で常に位置を追っていた。
それでもタイミングはいっぱいあった。
なのにお母様に知らせていないという事は確認をしていないという事なのだと思う。

彼女も貴族だが身分が低く4女のため何処かに政略結婚させられそうなところを子供の時にお母様が雇う約束をしたのだそうだ。

そして現在に至るらしい。

「では私が行きます」

と言って立ち上がったのはメイドだった。

そして部屋を出て行ってしばらくした後、またすぐにお母様の侍女を連れて帰ってくる。

早速お母様が口を開く。

「ミネル、貴女は非常によく働いてくれました。私は貴女を信頼して一つ頼みたい事があるのです」

「はい、奥様。ありがとうございます。
頼みたい事とは、なんでしょうか?」

「レインを見なさい」

と命じた。
多分それがトリガーなのだろう。

「ハッ、畏まりました」

として俺を見て

「では失礼致します。鑑定」

と言った。
次の瞬間ミネルさんの顔がみるみる内に青くなっていく。

(今日何人目だろうか?)

と思いながら見ている。

「ミネル、大丈夫?」

「お、奥様、少し鑑定の調子が悪いようでして……。申し訳ありません」

「いいのよ。見た事をありのままに言いなさい」

「ハッ、畏まりました。
レ、レベルが……」
そこで一度深呼吸をして、
「53です」

と言った。

「レベル53?!5歳でか?
そうかそうか」

とお父様がとうとう落ち込む事をやめた。
限界が来たらしい。

「それと……MPが……」

「幾つだ?」
とお父様が声を絞り出す。

「13000あります」

「13000!!13000か!」

とちょっとお父様が情緒不安定気味だ。

「それ位ですね」
と俺も同意する。
「そんなに高いのか!」
とお父様も驚く。

「まあMP上昇率アップにさらに4倍ですのでこれくらいにはなるかと」
しかも俺はMP上昇型の身体らしいし。
人によって上がりやすい能力というのはもちろん違う。
STRが上がりやすい人がいればHPが上がりやすい人がいる。
俺はMPが上がりやすい人というだけだ。

「うーむ…これは後でまたしっかり話し合わなければならんな……」

とお父様が言った。
俺も跡継ぎの事について話し合おうと思っていたところだ。
ただとりあえずはそろそろ時間が差し迫ってきている。

そしてお母様の方を見ると少しうつむいていた。

「お母様?」

許容量がオーバーしたのだろうか?と、考えていると突然バッと顔を上げて俺を見る。

「お、お母様?大丈夫ですか?」
と心配する俺の言葉を無視して、お母様が口を開く。

「いいレイン?貴方の才能は間違いなく伝説に残るほどの者よ。
だけど、だけどねレイン。
私達が貴方の味方であり続けるという事は忘れないで頂戴」

と、突然話し始めた。
ソフィーが知っている英雄と呼ばれた実在が確認されている者達は、戦う時必ず全員“一人”だった。
隣で戦えなくても戻る場所があると言いたいのだろう。

「大丈夫ですよ。わかってます。
それに僕の能力は一人で無双が出来る能力ではありませんから」

他者とつながる事を強制されるスキル構成なのだから。

「そうよ。
自分を見失わないで昨日も言ったけれど最後まで頑張って生きなさい
私からはそれだけよ」

と言って締めくくった。
(わかっているさ。
最後まで諦めないでほしいって事だろう?
諦めないさ)

「私からはお前のこれからについて後でしっかり話す事としよう。
さあ、レイン、時間もそろそろだし、陛下の所に行く準備をしよう
それとここであった事の一切は他言無用だ。わかっているな?」

と侍女とメイドを見ていった。

「「畏まりました」」
といい、俺とメイドは部屋を出て自室に戻る。

「レイン様、私よりレベル高かったのですね」

「まあそうですね」
俺の方が15レベ以上上だ。

「私が居る意味はもう無いのでは?」

「は?何言ってんの?」
本当になにいってんの?
思わず素が出た。

「でも……」

「でももなんでももありませんよ。
レベルだけで選んだら多分もう僕以上のレベルの人なんてこの国にはいないですよ」

俺のレベルはこれからどんどん上がる。
20歳までにカンストする可能性も十分ある。

「僕の人生で最も長く横にいた貴女が必要無いなんて事はあり得ませんよ
お父様との約束でしょう?
果たすまでは僕の横にいてください」

「ハッ!申し訳ありませんでした!!」

「いいや許さない。そんな妄言を僕に言った罰を与える必要があります」

「ハッ!何なりと」

そして俺は今朝から思っていた事を言った。

「まだたしかご両親はご存命でしたよね?
お暇をあげますので1度帰って、会ってあげてください」
というと目を見開いた。

「で……ですが私には」

「いいのですよ。
僕はもう大丈夫。家族がちゃんといたから大丈夫ですよ。
ちゃんと帰ってきてくれるなら何も問題はありません」
俺がこの世に生をもって5年以上の月日が経った。
情緒不安定で最初から何も信じようとしなかった俺の横にずっといた。
そろそろ一度帰るべきだろう。
ここからなら南に行くだけなのでオリオン公爵領よりずっと近い。

「ありがとうございます!レイン様」
「それはこちらのセリフですよ。
本当に今までありがとうございました。
リサさん、貴女のおかげで僕はまた立ち上がれたのですから」

するとリサがまた目を見開き俺を見る。

「わ、私の名前。ご存知だったのですか?」

「当たり前ですよ」

「よ、呼んだのは初めてでは?」
「そうですね。僕は今まで貴女を敵だと思っていたので名前を呼びたくなかったのですよ。
ですけど違った。
貴女ほど僕の横にいて僕の事を知っている人はいなかったのです。
愚かな僕を許して下さい」
と言って頭を下げる。

「いえ、私こそこれだけ貴方の横にいたのに何も気付けなくて申し訳ありませんでした」

「ではおあいこですね。
では、リサさん陛下に会う準備をしましょう」
「ハッ!」

すぐにいつもの調子に戻ったリサだったが顔は微笑んでいた。




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