異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第43話 やっぱりバレてた

それから馬車に乗り込み、お父様とスクナとアイナと一緒に王城を目指す。

この2人にも大分心配をかけてしまったらしい。
行く前にちゃんと謝っておいた。

馬車の中には俺とお父様だけがいる。
お父様は考え事をしているらしい。
とは言っても俺も気になるわけでつい聞いてしまう。

「あの、王様にはなんて説明するのですか?」

そう俺のスキルを王様に言うかどうかだ。
説明するならどこまで?

「今それを考えておるのだ……。
困ったものだ。話しても話さなくてもな……」

話す事のメリットはまず協力が得られる。
国で最高クラスのスキル保有者としてかなり俺の重要性が高くなる。
後で俺が関係して何かあった時、揉み消したり、何でこうなった?などが無くなり話がスムーズになる。

デメリットはやはり知る人間が多くなる事だろう。
何処かから情報は必ず漏れるのだ。ならば当然俺の身に危険が及び、家族の身に危険が及ぶ。付随して政略の面倒いあれこれが付いてくる。

言わないメリットはやはり知る人間が少なくなり、俺、及び家族の安全の確保率が高くなる事だろう。
知る人間は少ない方がいい。
デメリットは言うメリットの逆、何か大きな事をした時、理由を聞かれる。誤魔化し続けられるかどうかだろう。
既に俺に魔法才能がない事は王様は知っている。
なぜ言わなかった?となる。

「うーん、言った方が……いいのではないでしょうか?」
個人的にはそう思う。

「何故そう思う?」

「僕が産まれたという事はそういう事なのでは?と思うからです」
いわゆる英雄クラスの才能が産まれたのだから、どうせなにか一波乱ありいずればれますよ、という事だ。

「そうか……、いや私とて隠し続けられるとは思ってはいない。
だがな、今、言う利点があまり無いのだ」

それは俺も気付いていた。
そう、特にこれと言った利点が無い。
俺の家は公爵家だ。多少の情報位、軽く握り潰せる。
王様の力を借りなくてもそれは別に大した問題じゃ無い。
デメリットの方が明らかに大きい。

「では言うのを止めますか?
2日前僕が吐血したのは事実ですし、体調が悪いという事にして後に回すというのは……」

「いやそれも問題だろう」

因みに既に俺が倒れた事は王様にも伝わっていて、報告する日を1日ずらしてもらったのだ。またずらすのは厳しい。

張本人がこのまま帰れない。
気分がまだ悪い?
なら明日は?その次は?
という話になる。

もしくは俺から聞いた話をお父様が王様に伝えるという手もあるが……。

「あ……」

1つヤバイ事を思い出した。

「ん?なんだ?」

「あーと、お父様すいません。
僕、盗賊倒す時、魔法使ってました」

なんてこった。

「ほ、本当か……。
お前……迂闊すぎるだろう」

本当だよ。

「すいません」

「うーむ……。
まあ悩んでても仕方あるまい。
これで行く事は決定したな」
「ですね」

「バレてないことを祈りますか?」
「そうだな」

と行く事が決定してしまった。

本当になんてこっただよ。

そしてしばらく王城に行くまでの間に話す事と誤魔化す事の打ち合わせをしていると王城に着き、そのまま会議室のような場所に連れてこられる。

ノックし部屋に入るとそこには王様と宰相と第二王女と……魔眼持ちの女がいた。

(バレてたーーー!!)

「ポルネシア王!ご命令により、息子、レインと共に参上致しました。
それと日にちを遅らせていただいて誠に感謝申し上げます!」

「うむ!よい!何でもレインが倒れたそうじゃないか?
もう大丈夫なのか?」

「ハッ!1日休ませたらこの通り元気になりました」

(今もう吐きそうですけどね)
いっそ吐くか?と考えていると、

「それはなによりだ。それと公式の場でなければいつもの様に王で構わんぞ。
まあ立ち話もなんだろう。そこの椅子に座りなさい」
(いつもの様にって仲良いんすね)

と言って着席を勧める。

部屋は大して大きくない。
畳4枚程の大きさの長方形の机が真ん中に置いてあり、椅子は全部で13個しか置いていない。
王様が真ん中、魔眼持ちが後ろに控え、右側に王国騎士団団長、左側に魔導師団師団長と宰相が座っている。
俺らは王国騎士団団長側に座る。
王国騎士団団長と魔導師団師団長は神眼で2人の所属とレベルからの予想だ。
それに

「では失礼しまして、王、護衛が2人しかおりませんようですが……それに……」

とお父様が疑問を口にする。

「うむ。今日ここに来てもらったのは他でもない。
その……」
と言って俺を指差す。

「レインについて聞きたい事があってきたのだ」
(完っ全にバレてますね!!)

「ハッ!レインが何か?」

「ロンドよ、そこまで硬くなる必要はない。ただ少し気になる事があってな。
ああ、この2人は王国騎士団団長のアルフレッドでこっちは魔導師団師団長のプリタリアだ。
まあ当然知っているだろう。
でこの女が私が以前貸し出そうとした魔眼持ちのフロリダ・セントリア子爵だ」

フロリダと言われた女が挨拶する。

「お初にお目にかかります。フロリダ・ヴィカコント・ド・セントリアと申します。
以後お見知り置きを」

珍しい女性の貴族だ。
紫色っぽい長い髪をしていて、顔は妖艶さがある。
見るからに怪しい。
というか妖しい。
スキルで魔眼があるからこその安定した地位なのだろう。
彼女に喧嘩を売ればそのまま王室が敵に回る。
魔眼持ちはそれだけ重宝されるからだ。

「私の名前はロンド・デュク・ド・オリオン、そしてその息子のレイン・デュク・ド・オリオンです。
こちらこそよろしく」

と挨拶をすませる。
「よろしい!
では早速だが本題に入ろう。
ロンドよ、我は貴公からレインについての話を聞いていた。
だが昨日盗賊から話を聞いてみるとどうも少し可笑しな話があってな。
いや勘違いするでない。
我は責めているわけではないのだ。
ただ言わなかった理由を聞きたかっただけなのだ。
故に不意で悪いがこうして魔眼持ちを同席させた。
だが出来るなら貴公の口から聞きたいのだ」

と言った。
お父様は想定内だったのだろう。
結構落ち着いていた。

「ハッ!その内容を話す前にこちらから1つご質問をしてもよろしいでしょうか?」

「ん?なんだ?言ってみよ」

「ここにいる者達が本当に信用に足るのかどうか?という事です。
特にフロリダという方は私は存じない故心配なのです」

「ふむ?それ程の事なのか?
いや、だが問題ない!ここにいる者達は信用に足る者達だ!我が保証しよう!」

と言った。
(まあここにいる人が裏切ってたらこの国終わるしな)

「畏まりました。
陛下がそうとおっしゃられるなら私としてはこれ以上は何も言いません。
では早速ですがレインの能力についてお話ししましょう」

と話し始める。

「私の息子レインのスキルの数は5。
確かに私は陛下にそうお伝えしました。
ですが昨日、レインに問いただしてみるとそれ以上のスキルを持っている事に気付いたのです」

「む?それはつまり……」

「はい、私も昨日までレインが魔法が使える事は知らなかったのです」

と打ち明けた。

「な、なんだと?知らなかったのか?」

「はい」

(まああっさり信じたりはしないだろう。ただこの前謁見した時と合わせればお父様が知らなかったという結論になるだろう。
俺5歳だし)

「そうか……。
まあそれを今議論しても仕方あるまい。
では改めて聞きたい。
レインの能力についてを」

と急かしてくる。
案外せっかちなのかもしれない。

「はい。畏まりました。
私が昨日まで知らなかったレインの6つ目のスキル。
それはレア度9、魔導王にございます」

と言った。
ガタッという音と共に
「なっ!!なんだと!!」
と大声が響いた。

立ち上がったのはプリタリアだ。
魔導師団を率いる者として聞き逃せなかったのだろう。
陛下や他の人達も唖然としていた。
(そんな驚くことか?)
とここまでされると思ってしまう。

そしてやっとの事で声を絞り出した王様が
「レア度9……、存在したのか。
プリタリア、取り敢えず座りなさい」
と言った。
「し、しかし陛下!」
「いいから座りなさい!」
「ッ!失礼いたしました!」
と言いながら着席した。

「これは問題だな。他国に知られればマズイことになる」

と言った。
因みにこれは決して大げさではない。
英雄クラスの才を持つ者が小国で産まれた。
平然と大国を落とした者さえいるのだ。
まだ子供のうちに……と思う国が出てもおかしくない。

「それで魔導王とやらの能力は?」
「はい、全魔法才能の使用です」

「なっ?!ぜ、全魔法才能の使用だと……」
とプリタリアが驚く。

「それとMP増加率が4倍になります」

「カッ……!?」
と遂にプリタリアが気絶寸前までいく。

(そんな驚きます?
口から泡吹いてないか?大丈夫か?)
と心配する。

言っていない効果があるが打ち合わせ済みだ。
MPの異常は隠せない。
だが使用MP4分の1は隠せるからだ。

騎士団団長は知識としては知っているがやはりあまり驚いていないようだ。

「オッホン!申し訳ないのですが、魔法には疎く、それがどのくらいのものなのかご説明してもらってもよろしいでしょうか?」
と聞いてきた。
すると即座に反応したプリタリアが勢いこんで立ち上がり、

「ソロが生まれる確率は大体30人に1人、デュオが生まれる確率は900人に1人、トリオは27000人に1人だ。
だがしかし、これはあくまで4属性の場合だ。
光魔法と闇魔法はそれぞれ1000人に1人いるかいないか。
そうすれば6属性の魔法才能を持つ者がどれだけ希少かわかるだろう?
そこにさらにMP増加率4倍!!
しかもお聞きしたところさらに2倍され無詠唱まで持っているという。
そこにだめ押しのごとく魔法に対する最高クラスの防御力!!
どれくらい?それはどれくらい強いのかという意味か?なら教えてしんぜよう!!我が国の魔法師団がたった1人で壊滅させられるレベルだよ!!」

と興奮しながらまくし立てる。
「そ、それ程なのか……」
と騎士団長殿は引いている。

「そうなのだ!!魔法才能が全て開花されている者など伝説でしか聞いたことがない!!
素晴らしい!素晴らしいぞ!!
私は今歴史に刻まれるだろう人間を目にしている!!!」

とさらに興奮していた。
(いや興奮しすぎだから……)
だが1人で壊滅は無理だな。
何故なら

「ああ〜っと、よろしいか?」

「うむ……、プリタリア!そろそろ戻ってこい!で?なんだ?」

「ハッ!レインですが……その、攻撃魔法が使えません」

だからだ。

「……」

また沈黙が走る。
(本当にいつまでこれが続くんだ?)
ため息をつきたくなるレインだった。

コメント

  • 明日

    褒めたたえ方が大袈裟でギャグっぽくて面白いですね。

    0
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