異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第44話 ポルネシア王との会話

 事あるごとにこのネタ使うのは流石に怠くなってきた。
しかも相手が美女ならともかくおっさんっていうね……。

「な……な、何故だ!?」
とプリタリアがつばを撒き散らしながら聞いてきた。

「レインのスキル、我が矛は最弱なり、我が盾は最強なりの効果で攻撃魔法が一切使えない縛りを受けました。
ですので無敵ではありません」

「そ、それは本当か?
な、なんという事だ……」

とガクッと項垂れてしまう。
(失礼な奴だ。いいじゃねーか!少なくともお前より強いぞ!)
と内心怒りながら表情にはおくびにも出さない。

「支援魔法と防御魔法は使えるのだな?」
と今まで口を開かなかった宰相が冷静に質問をした。
「はい、そちらは問題なく使えますぞ」

「今のMP総量を聞いてもよろしいか?」
「……お待ちくだされ」
とお父様が待ったをかける。

「なんでしょう?」
「レインの能力は我がオリオン家にとっても非常に価値あるもの。
王だけでしたらともかくそれ以外の方に話すのにはやはり抵抗があります。
安易に他者に話していいものではない事項であるという事はご理解いただきたい」

早い話其方から話すメリットを提示しろという事だ。

「国の防衛に役立てる、というのは?」
確かに話すのと話さないのでは違いがある。
だが、

「であるならば王と騎士団長以外はご退出願いたい」
となる。
ここにいる全員が聞いておかなければいけないメリットを出せ、という事だ。
というか魔眼持ちだけでもなんとしても退出させたい。

するとプリタリアが一番に、
「わ、私は魔導師団から魔法に関する書物を提供する!
それ程の魔力総量があれば伝説の領域、レベル9の魔法まで使えるようになるかもしれん!
もし使えるようになるなら私の個人所有の書庫から貸し出して構わん!」
と言った。
プリタリアの家からは多くの魔導師団師団長が生まれる。
基本的には魔法才能は遺伝しないとされているのだが偶にプリタリアの一族のように優秀な魔法使いが多く出てくる家というのがある。
そして歴代の師団長が集めた貴重な書物が沢山ある。
条件付きだが、ほぼ無償で貸し出されるのはありがたい。

お父様もその事は当然知っているから、
「うむ!協力感謝する!
では他の方々は如何でしょうか?」
次に宰相が王様を見て、王様が鷹揚に頷く。
そして、
(今のでわかったのかよ!)
という俺の内心の突っ込みを置いて、

「畏まりました。
もし彼にそれほどの価値があるのであれば何かあった時、私が裏から手を回そう」
と言った。

するとフロリダは
「では、私は退席させていただきますわ」
と言い立ち上がる。
「ではポルネシア王、失礼致します」
「うむ、わざわざ来てもらったのにすまないな」
「いえ、王のご命令とあればいつ如何なる時であれ参上致しますわ」
と言い残し部屋を出る。
(よし!)
取り敢えず目標は達成できた。
彼女も含めてこの部屋にいる全員が理解しているのだ。
オリオン公爵が遠回しに、出会ってすぐの人間など信用できないから追い出してくれと言っているのを。
(まあ少し露骨だったかな?)
とは思う。

「大変失礼致しました」
と言って頭を下げる。
「うーむ……、少し念を押しすぎではないか?」
王様の口から彼女の身元を保証するといったのだ。
それを疑うのは不敬にあたる。
王様との信頼関係がなければかなり危ない発言だ。

「ですがそれ程の事なのです。
私としても王の御言葉は微塵も疑ってはおりませぬ。
ですがやはり他国との貿易なども請け負う者として初見の相手を信用をする事は……」
と口ごもる。

「わかっておる。
ロンドの考えはわかっておるよ。
念には念をか。
さてと、では話を戻そう。
レインのMP総量の話だな。
どれ位なんだ?」

「ハッ!
レインのMP総量は13000程です」
と正直に言う。

「おお!13000!13000か。
これ程の才能が我が国から生まれてくるとは……」
と俺を見ながら言った。
「ありがとうございます!」
と子供っぽく元気に返事をした。

「うむ!元気でよろしい!」
と一度俺を褒めて、お父様の方を見て口を開く。

「次に魔法才能を持っている、との事だが、具体的には何が何レベなのだ?」

「火、土、光魔法が3、闇が4、風が5で水が6ですな」
 まあもちろん嘘だがな。
馬車での打ち合わせ通りだ。
盗賊に使ったのは鈍足で、風魔法レベル5の技だ。やろうと思えばMPを大量に注ぎ込んだで言い訳が聞くが嘘は少ない方がいい。
まあレベル5でさえないがな。
このステータスでも十分異常である。

「なんと……。そうか、それ程とは……。
因みに何故、風が5なのだ」
と聞いてきた。

「レインは神速持ちです。
なので相手に鈍足をかければ飛び道具でもない限りほぼ間違いなく逃げれますので」
とこれも馬車での打ち合わせ通りだ。

「ふむ……わかった」

本当は嘘はつきたくないのだが、正直にレベルを話すと何故?と繋がり、この先彼らがどう動くかわからなくなる。
裏ワザを話すとややこしくなる。
更に俺の危険度が上がる。
この辺りがベターだろう。

もちろんお父様には裏ワザを教えてある。
それでも成長が無茶苦茶早いのだが若干の違和感はあれど正確な魔法レベルの上がる回数など知る訳がない。

俺も知らない。
最初は数えようと思ったのだが数ヶ月単位で時間がかかるので諦めた。

「わかった!では……」
「お待ちくださいポルネシア王!」
と結論を言おうとした王様を宰相が止める。

「レインは国で預かり鍛えるべきでは?」
と言い出した。

「うーむ……」
さっきも言ったが俺は危険な存在だ。
国で管理したいという事だろう。

勿論断固拒否だ。

「御言葉ですが王!レインは我がオリオン家の長男!そうでなくとも私の大事な息子ですぞ!
学校に入れるまでは私の手を離させる訳にはいきませぬ!」
と返す。

そうなったら俺は速攻逃げ出す。

「わかっておる、わかっておるよロンド。
安心せよ、レインをお前の手から奪う気はない」
と王様は言った。
「し、しかしポルネシア王……」
と宰相が食い下がる。
「よいのだ、もし反乱を起こす気ならそもそも我が娘を助けはしないだろう。
それにオリオン家は建国以来から尽くしてくれた家柄だ。疑うのはその忠義に反する行為であろう」
と言った。

他の家が分裂や取り潰し、そして再興を繰り返す中、オリオン家は建国以来から一度だって反旗を翻した事のない数少ない名家だ。
そもそも乗っ取るつもりなら長い歴史の中でチャンスはいくらでもあったのだ。

「……、畏まりました。
オリオン公爵、大変失礼致しました」
と言って宰相も素直に頭を下げた。

「いや構わん。宰相殿も国を想ってのこと。
それぞれ国を思う気持ちは同じ故、水に流そう」
「感謝いたします」

やっとこの話が終わった。
俺の心臓に悪いから本当にやめてほしい。
ずっとドキドキしっぱなしだった。
気分最悪だ。

「では、この件は決着とする!
長くなったが本題に入ろう。
盗賊共の件だ。知っての通り獣人差別の撤廃を求めるつもりだったらしい。
それは置いておくとして、レイン。
彼らについて何か気が付いた事などはあるか?」

「え、ええっと、あの彼らが別の場所で何かを待っていたようだったのが少し気になりました。
だ、誰を待っていたかまではちょっと……」
と俺は少しオドオドしながら答える。

鑑定持ちがわざわざ本隊と離れていたのは気になった。
ただ待って確かめる時間はなかった。

「そうか……、やはり誰を待っていたかはわからなかったか……」

何でも黒幕は顔や名前は見せず注意に注意を重ねてあって足取りが全く掴めなかったそうだ。
黒幕は盗賊達を街から逃げ出させる用意と金や武器などを用意してくれたらしい。
それらも何処にでもあるようなもので足取りが掴めない。

来るはずの使者も結局現れなかった。

「気付かれるのが速かったことから恐らく国の中枢の誰かの可能性が高いと思う。
帝国もやバドラギア王国の動きもきな臭くなっておる。
またぞろ戦争でも起こすのではないかと宰相と相談しておったところだ。
故に、信頼できるそなた達にそれぞれ怪しい者たちに調べて欲しいのだ」

と言った。

「「「「ハッ、畏まりました!」」」」

「では今日はこれで解散としよう。
何か質問があるものはいるか?」

と言ったので俺が気になっていたことを聞いた。

「王様!質問よろしいでしょうか?」
「なんだ?レイン」

「あ、あの王女様が攫われた事についてのよくわ、わからないのですが……。
どうなんでしょう?」
緊張して言葉足りずだった。

要約するとお前らの警護ザルじゃね?という事だ。

「あいつが勝手に街を出歩くのはよくある事なのだ。警護の者をつけようとしてもいつの間にか部屋にいなくなるというのが多くてな……」
最後に、はぁとため息をついた。

(やんちゃしてんな〜あいつ……)

「警護のもの達は?」
「うむ?クビだな」

(いや、別の意味で聞いたんだが)
警護のもの達はその時いなかったのか?という意味だ。

つうかクビかよ!
「く、クビですか……」

「そうだな、何であれ隣にいるのが彼らの仕事。責任は取らねばなるまい。
 本来ならお家取り潰しもあるが娘にも非がある故ここで妥協となった。
それに許婚の親が構わんと言っておるしな」

俺の親だ。
攫われると処女性を疑われる為、相手側から婚約破棄されるとどうしようもなくなる。
5歳児でも本気で嫌がろうとすればできない事はない。
だがその相手が俺だ。
そして決めるのはお父様だ。
こんなチャンス逃すわけにはいかない。
俺は拒否って欲しかった。

「そ、そうですか……」
可哀想だが命があるなら取り敢えず良しとしよう。
死刑とかだったら守るつもりだったが命があるならそれ以上踏み込む必要はない。

「では他には……ないなでは解散としよう」

と言って王様が先に部屋を出る。

プリタリアが話しかけてきたがそろそろマジで体調が悪い為、今度にしてもらった。

そして会議室を出て、馬車までの道を歩いていると、

「ご機嫌麗しく、オリオン公爵様、レイン様」
件の奴がいた。

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