異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第47話 焦り

そして次の日、やっとオリオン領に帰る事になった。

(すごい軽い気持ちで行ったのにめちゃくちゃいろいろあった。
中身おっさんの俺には精神的にちょっとキツイ)
と心の中で愚痴る。
良い事もすごい良い事も悪い事もあったが、なかなか収穫のある1週間だった。

(王女の一件は今なおよく分からんな〜。
俺が言って聞くのか?と後になって思ったが……。
だがこれも実際に失敗から友達を失った俺の実話だし……)
当然の様に友達がいる人が言うよりは効果があったんじゃないかと思う事にして帰りの馬車の中で横になる。

「レイン、疲れたか?」
と一緒に乗っているお父様に声をかけられる。
寝転がったまま話すわけにもいかないので座り直し、
「疲れましたね、流石に。
まさかここまで驚きが連続が続くとは……、さすが王都と呼ばれるだけありますね」
「いや王女誘拐事件なんて年1であってたまるか。
今年だけだぞこんな荒れたのは」
「ハハハ、冗談ですよ。
まあもう流石に勘弁してもらいたくはありますがね」
「同感だ」
と言いまた2人で笑っていると何となく王城が見たくなった。
なので暗殺防止用の外から中が見えない様にするための馬車に掛かっているカーテンを開け、小さな小窓から外に顔を出し王城を見る。
すると、本当に小さいが王城のバルコニーの様な場所から人が手を振っているのがわかる。

「?
ああ、王女か?」
それ以外ない為、そうだと予想する。
流石に顔までは見えない。

俺も手をふり返す。

「レイン、危ないぞ。
中に入りなさい」

「はい」
と言って手を振るのをやめ窓を閉め、カーテンを閉める。
「誰かいたのか?」
「え?
いえ、何でもありませんよ」
(あれからクビになった人達をなんとかしたのだろう。
なら王女が人との繋がりを一つ学んだと言うただそれだけの事さ)
と偉そうに解釈してみる。
(前世の俺の失敗が役に立ったのならまだ報われるからな)
あの後、結構マジな説教したのに結局何も変化なしだったらどうしようと頭を抱えたのは秘密だ。

そしてまた数日、馬車に揺られやっとの事でオリオン領の自宅に戻る。
そして自室に帰るとコウとメイ兄弟が待っていた。
久し振りのコウとメイ兄弟に会えて嬉しい。
ガシッと抱きつきながら、
「うおおおおぉぉぉーーーーー!!
コウ!メイ!メガヒサッシーーじゃねーか!!
一週間とは思えないぐらいいろいろあったんだぜ!!」
と俺のテンションゲージは振り切ってしまった。
「「お久しぶりですレイン様!」」
と彼らも返してくる。
「聞いてくれよ〜、聞くも涙、語るも涙な話があるんだぜ〜……」
と若干ウザい感じで王都での出来事を話そうとする。
だがすぐに俺の後ろを見て
「そういえばリサさんは」「如何されたのですか?」
と彼らは聞いてきた。
「ん?実家に帰省中〜」
「「そうでしたか!」」
「そうでした」
リサは王都で別れ、実家に一度戻っている。

「それでさ〜聞いてくれよ〜、コウ坊、メイ坊!」
と続けようとする。
「「レ、レイン様変わりました?」」
とちょっと引いている。
コウとメイから離れ、居住まいを正し、
「まあいろいろあったんですよ」
と言う。
「では一つだけ」
とコウが言う。
「楽しかったですか?」
とメイが言う。
「はい!とても!」
と俺が言った。

そして、また少し時が経ち、真面目な話があるとお父様の執務室に呼び出された。
「お待たせしましたお父様」
「よく来たなレイン。
そこに座りなさい」
「はい」
と言って椅子に腰掛ける。
「何でしょう?」
「うむ、最近はどうだ?」
(いや、急に最近はどうだ?と聞かれましても……)
「はい!いつも通り元気にやってますよ」
と答えておく。
「そうか……、ではステータスは、特にレベルと魔法才能の方はどうだ?」
「順調ですね、と言ってもあれからそれほど時間も経っていませんし、1レベしか上がっておりませんが……。
魔法才能は変わってませんね」
一生かけて上げるものなので、そう簡単にホイホイ上がるわけがない。

「そうか……、では、本題に入るか。ウォッホン!」
とわざと一度盛大に咳をした。
「レイン、私はお前に正式にこのオリオン家を継いでもらう。
今までもそれとなく世間に情報を流してきたが、今度は大々的にかつ正式に発表する」
と唐突に切り出した。

「え?!いや!あの!は、早くないですか!?」
まだあと8日で6歳になると言う時だ。明らかに早い。

「まあ他の貴族よりはかなり早いな。
だが早いに越したことはないのだよ。
本来なら確かにまだじっくり考えるところだがそれは子供がちゃんと領地経営が出来るのかを見極めるためだ。
かつ安心させないためだ。
自分が家を継げるのか?という緊張感を持って欲しいのだ。
だがお前は違う。
オリオン家始まって以来の天才だ。
他の息子達もまだどれ位優秀か分からない。
だが断言できるのはお前と並ぶ程の息子はいない。
故にお前しかいない。
6歳になった時に領民に発表する」
と宣言した。

「いや待ってくださいよお父様!
僕はまだオリオン家を継ぐと決めたわけではありません!」
「何故だ?!……いやそういえばこの前確か家を出るとかなんとか言っていたな。
許さんぞ?それは絶対にならん!!」
と今までで一番怒った顔で言った。

一瞬ビビってしまった。だが完全に誤解である。
「いやいやあれは忘れ……なくていいのですが、ああいう事があってなお出て行く気は全くありませんよ」
流石にあれだけの事があって今なお冒険者になるなどと言う戯言を吐く気はない。
自分の能力や立場、両親からの思いは十分わかった。

 だが、
「公爵家、特にこの広大な領地を運営できる自信がまだ僕にはありません」
両親とは和解した。
 だけどそれとこれとは話が別だ。
冗談を言える位には両親との距離は縮まったが、領地経営を出来るほど心が強くなったわけではないのだ。
「そんなものは大きくなっていくうちにしっかり身につく。
それに誰しも最初は緊張するものだ。
お前だけで領地経営をするわけではないし、お前が後を継いだ瞬間に私が死ぬわけでもない。
今までとほとんど変わりはせぬ。
ただ挨拶周りが少し大変になる位だな」
(いや大問題ですよ!)
両親と和解した=人見知りが治ったではない。家族と赤の他人は別なのだ。
「いえ、ちょっと!ちょっと待ってください!幾ら何でも急過ぎますよ!1年……いや半年はください!
ご存知かと思いますが僕は人見知りなのです!急にたくさん挨拶に来られても困りますよ!」
と取り敢えず心の準備期間の必要性を訴える。

「……。
そ、うだな、継いでもらう事に変わりはないが幾ら何でも早過ぎたか……。
すまんなレイン。
ちょっと焦っていたみたいだ」
「そうですよ……。
僕も無茶苦茶焦りましたよ。
何ですか?何かお父様を焦らせるような出来事でもあったのですか?」
と重い空気を変えるのともう気にしてませんよアピールの為ちょっと軽いノリで聞いてみた。
「隣国バドラギア王国に放っていた密偵から報告が入った。
兵を集め真北にあるリュミオン王国に数十万規模の戦を仕掛けるらしい」

想像以上に重たい話だった。




そしてそれから一週間程ほど経った
6538年7月7日
ポルネシア王国が隣接する西の国バドラギア王国がその真北にあるリュミオン王国に宣戦布告した。

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