異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編

ノベルバユーザー202613

第89話 警戒

俺ら味方なのに攻撃してきそうな雰囲気を醸し出したながらこちらの方向をガン見してくる。

いや正確には見えてはいないのだが……。

後ろの子供はお姉ちゃんの方が妹の方をキツく抱き締めている。
ここだけみると俺ら完全に悪者だな。
ドア開けた瞬間に斬りかかってこないだろうな?

そう考えているうちに小屋の前まで着く。
どうするんだろうかと暫く見ていると、先頭のリュミオン人が、扉を三度叩き、
「我等がリュミオンに……」
と呟いた。
すると中の侍女が
「栄光を」
と言った。

ああ、やっぱり合言葉決めてたんすか。

中からゆっくりと扉が開けられ、侍女だけが出てくる。
俺らは後ろに待機し様子を伺う。

侍女は鋭い眼でこちらを一瞥しながら、「其方の方々、もう少しお下がりください」と要求してきた。

シャウネの額にビキリと怒りのマークが浮かぶ。

やべっ!

そう思ったのだが、即座にランド隊長が、「畏まりました。皆!少し下がりましょう」
と号令を掛けてくれる。

ナイスフォロー、流石ランド隊長。
気が利いているな。
シャウネも貴族なのでわかっているのだろう。
額に怒りマークを付けながらも黙ってそれに従う。

それから更に俺の方を指して、
「貴方、フードを取りなさい」
と言ってきた。

「ん……え?」

え?俺?
いや、まあ……そりゃそうか。
実際に怪しいもんな。身長110センチ程のフードを目深に被り更には仮面までしている。
普通に怪しい。この世界だと子供と断定することもできない。
それは分かるのだが……。

これを外すのにはお父様の許可がいる。
勝手に俺の顔を人に見せるわけにはいかない。

ランド隊長もそれをわかっているので「それは出来ません」と断る。

すると侍女の方も
「でしたら私は貴方方を王女の元にご案内するわけには行きません」
と断言する。

そんなこと言われても……。
いやご案内されなくとも俺は王女様ガン見しているんだけどな。
どうしようか、とランド隊長とリサしんと顔を見合わせる。

だが、シァウネの堪忍袋は残念ながら持たなかったようだ。

「ちょっと貴女!幾ら何でも失礼ではありませんの?
私達は貴女方を助ける為にわざわざ兵を出しているのですわ。それに対して貴女の態度には感謝の言葉はまだなのかしら?」

それに対し、シャウネに負けず劣らず侍女の方も、
「貴女達が私達を助けるのは自国の利益の為でしょう!
それに対して感謝なぞおこがましいとは思わないのですか?」
と反論してきた。

うわー痛いとこついてきたな〜。
これは痛い。
確かに俺らは自国の利益の為にやってきている。
そこをつかれたら何も言えない。

のかと思いきやシャウネは、
「だとしたら何?」
と平然と開き直って見せた。

でたー!!最強の言葉。
「だから何?」

これはキツイ。

案の定侍女はウグッ!といった感じで押し黙ってしまう。
その侍女の態度に興奮気味にシャウネが更に畳み掛ける。

「貴女達、私達の助けを無しにどうやってこれから生きていくのかしら?
貴女達二人で王女様方を護っていけるのかしら?
私達が怪しいかどうかは関係ないじゃない。

そんな事も分からないのかしら。
だとしたらだから貴女達は……」

いや、シャウネさん!それ以上はマズイ!

そう思い俺が口を開こうとした瞬間、


「シャウネ!!」


ランド隊長が俺が聞いた事もないような大声で叫びシャウネを止める。

それで我に帰ったシャウネさんは
「申し訳ありませんでしたわ」
とランド隊長に謝っている。

それに対し、ランド隊長は
「私ではなく彼女らリュミオンの民に謝りなさい」と諭す。

「誇り高きリュミオンの方々。
前言を撤回し、先程の非礼お詫び申し上げます」
そう言って先程とは比べ物にならない程優雅に頭を下げる。

流石貴族。謝り方も優雅だ。

それをみたランド隊長が、
「シャウネのご無礼、大変失礼致しました。ですが、こちらのフードを被った少年は我々の最重要機密となっております。
オリオン総帥のご許可無しに顔をお見せするわけにはいかないのです。
ですが、こちらの方は身元はハッキリとしております。
ご理解いただけると幸いです」

低姿勢からの謝罪。


すると、侍女も
「こちらこそ大変失礼致しました」
そう言って一礼し、謝罪をする。

「ですが、こちらとしても顔を分からない方を王女様に近付かせるわけには行きません」

俺を断固会わせない姿勢を保つ。

だが、それについて俺はちょっと思うところがある。

「顔が見えている事がそんなに大切なのでしょうか?」

そう聞かずにはいられない。




「異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く