異世界で始める人生改革 ~貴族編〜(公爵編→貴族編
第70話 突然終わりを告げる
そんな幸せな日々は、突然終わりを告げた。
公爵領とお花畑にプリムを案内した次の日、
「さ~て今日も頑張りますか」
朝食を食べて、朝は勉強と剣と弓の稽古をする。
昨日はああ言ったけど剣術は俺は結構強い。というか力が強い。大の大人が振る重い木刀を軽々振り回す。
しかも神眼で自身を俯瞰で見て、生身の眼球から主体で見ることが出来る。
どこそこが悪いと言われれば第三者視点で自分を見れるので、どう動けばいいかよくわかる。はたから見ると物凄い上達速度に見えるだろう。
けど、やはりプロなんだろう。
俺の剣術の先生は俺を天才とは言ったが、1度も剣術の才能があるとは言わなかった。
弓は素だとまだまだだ。魔法を使うと半径30センチの的になら、200メートル離れていても百発百中だった。
俺自身の技術を上げる必要があるのか俺もよくわかっていない。試してみる価値はあるだろうくらいの気持ちだ。
今日は豊富な作物が各地で実るオリオン領を周る。
食いしん坊のプリムの胃袋を掴む。
昨日と同じようにごっつい騎士50人に囲まれながら目的地を周る。
今日もコウメイはお留守番だ。理由はあいつらよく見たらなかなかの童顔イケメンだからだ。俺の心の平穏のためにも自宅待機を命ずる。
最初はポームというリンゴによく似た果物だ。というかリンゴだ。
見た目もリンゴの表面の皮が黄緑色なだけで実は普通に白~肌色の中間くらいの色だ。味もリンゴだ。
プリムはおいしそうにほおばっていた。
「プリムさん、そんなに食べたら後でおなかに入らなくなりますよ」
あと4件も周るのだ。それと別に昼飯もある。心配してそういったら
「大丈夫です!」
と力強くそう言われた。
次はレーズンという果物だ。俺訳だと葡萄なのだが、柿だ。
また、色もオレンジではなく緑色だ。最初見たとき熟してないんじゃないかと思ったが、食べてみたら普通に柿だった。
プリムはまたしてもたくさん食べていた。あの小さい体のどこにあんな入るのだろうか?
結果、プリムは5件と昼飯を食べて、おなか一杯のご様子でご帰宅なさった。
俺は食べ過ぎて胃もたれに似た気持ち悪さを起こし、夕飯もパスで早々に寝入ってしまった。
深夜に俺は目覚めた。感覚的は5時間近く眠っていたと思う。トイレに行こうとして起き上がった時に気付いた。横を見たら誰もいなかった。
(あれ?いつもはリサさんがいるんだがな?)
神眼を発動し、探す。
そしたら、お母様の部屋にいた。しかもお母様とリサさんだけじゃなく、第2夫人以外の夫人達とオリオン家の騎士団長が勢ぞろいだった。
すごい深刻そうな話みたいで、全員の顔が非常に険しい。
声が聞こえないのでベットから出て、お母様の部屋まで歩きながら神眼で見続ける。
すると、普段無表情のローゼさんがすごい剣幕で立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
(え!?ど、どうしたんだ??)
~レインが寝てしばらく経った頃~
王都のロンドから知らせが来た。自分が戦争に参加することになったという知らせが……。
わかっていた。そうなる可能性を……。
私は大事な話があると夫人達とオリオン家の騎士団長とリサを呼んだ。
全員が揃うまで沈黙が流れている中、最後にヒルデが入ってきて、開口一番にこう言った。
「わざわざなんですの?私とプロウスの大事な時間を奪ったのですからそれ相応のお話をお聞かせくださるのですわよね?」
相変わらず空気を読まない。いつものことだがこんな時にされると余計に怒りが湧いてくる。それを抑えて努めて冷静に
「そうよ、大事な話があるの。とりあえず座って頂戴」
と着席を促す。
ヒルデも仕方ないとばかりに座る。
フゥ~~……、と息を吐き、逸る心と身体を落ち着かせる。
それから、ゆっくりと単刀直入に知らせを言う。
「ロンドが…戦争に将軍として参戦することになったわ」
その言葉に一番に反応したのはローゼだった。
「何故?何故ロンドが参戦するの?ルドガー将軍とプリタリア様は何をやっているの?」
いつも口数の少ない彼女だが今日ばかりは饒舌だった。彼女は昔からロンドのことになると饒舌になる。身を乗り出して問う彼女に私は
「ルドガー将軍は、戦死したわ」
と、告げた。
「「「「……」」」」
全員の息をのむ音が聞こえた。準英雄級たるレベル8魔法使いのプリタリア様がついて行ってまさかそんな結果になると誰も想像していなかったからだ。
「そしてプリタリア様は重症、軍は将軍が戦死した時点で瓦解、帰ってきた兵は1万に満たないそうよ」
今回リュミオンに送った兵の数は6万と聞いている。数が6分の1以下に減ったのだ。
すると、ローゼが聞いてきた。
「プリタリア様程の方をどうやって倒した?帝国のレベル8とぶつかったの?」
当然の疑問だろう。準英雄級の者が重症なんて周りの者たちは何をやっていたんだ、という話になる。
「詳しくはわからないわ。ざっくりと森で分散したところを各個撃破されたと書いてありましたわ」
プリタリアとて万能ではないのだ。MPが尽きれば回復するまでただの人だ。
「それでなんでロンドが参戦しなければならないの?」
ローゼは淡々と聞いてくるが、その言葉は私の肌が泡立つほどの怒気を含んでいる。
「プリタリア様は戦時中の復帰は不可能だからよ。だからと言ってリュミオンの状況は無視できないの。リュミオンが落ちたら次は私たちの国よ。だから、この国で一番優秀な将軍であるロンドが出なくてはならないの」
話しているうちに言葉がとげとげしくなる。
それに対して彼女は淡々と返してくる。
「子供が成人するまで戦役からは外されるはず。この国の法律」
確かに貴族は家を残すために、結婚して実子がいる場合に限り、戦役を免除する法律がある。
「そうよ。でも今はそんなこと言っていられる状況じゃないのよ。ロンドじゃなければ敵を止められない」
「納得いかない」
その瞬間抑えていたものがプチッと音を立てて切れた。
「私だって納得してないわよ!!なんで、あの人が参戦しなきゃならないのよ!!相手はレベル8の魔法使いよ!ロンドは確かに強いわ。だけどそれは準英雄級に対抗できるほどじゃない」
準英雄級は化け物だ。そんなのに対抗できるのは……。
「準英雄級に勝てるのは……」
ハッとした。自分の口から出たのかと思ったからだ。
でも違った。
前を見るとローゼが何か考え込み、突然何かに思い立ったようにバッと顔を上げ突然立ち上がる。
そして、走って部屋を出ていく。
突然の悪寒にさらされ反射的に私も立ち上がり追いかける。
幸いすぐに追いつきローゼの腕をつかんで止める。
「何をするつもりなの!?」
そう聞く私に彼女は今までに見たことがないほど真剣な目で私にこう言った。
「いる。英雄級の才能を持つ人が。彼なら…」
誰のことか一瞬で分かった。だけどそれは…
「ダメよ!!レインは絶対に戦争にはいかせないわ!!もうあの子はこの戦争に関らせないと決めたの!」
あの子に戦争の話は絶対にしないようにこの城で働く全員に厳命してまでかかわらせないようにさせたのだ。
「彼でないとこの状況は打開できない。なら頼むべき」
「ダメよ。もうあの子が子供のうちに戦争に関らせることはさせない!」
「離して。私にはいかなければならないところがある」
ローゼがいつものように淡々と言ってくる。だが、そこには何が何でも目的を成し遂げるという固い意志があった。
だけど、
「離さない。あなたをレインのところに行かせるわけにはいかない」
私の決意を感じとったローゼが魔法を詠唱しようとした瞬間、
「待ってください!」
という声と暗い廊下から歩いてくる小さい影があった。
私にはわかる。それがレインだということに。
私は失念した。レインが私たちを避けていたとき気を付けていた事に。
この城の中でレインに秘密で何か相談事をしてはいけなかったことに……。
レインの異常なほどの勘の良さを。
公爵領とお花畑にプリムを案内した次の日、
「さ~て今日も頑張りますか」
朝食を食べて、朝は勉強と剣と弓の稽古をする。
昨日はああ言ったけど剣術は俺は結構強い。というか力が強い。大の大人が振る重い木刀を軽々振り回す。
しかも神眼で自身を俯瞰で見て、生身の眼球から主体で見ることが出来る。
どこそこが悪いと言われれば第三者視点で自分を見れるので、どう動けばいいかよくわかる。はたから見ると物凄い上達速度に見えるだろう。
けど、やはりプロなんだろう。
俺の剣術の先生は俺を天才とは言ったが、1度も剣術の才能があるとは言わなかった。
弓は素だとまだまだだ。魔法を使うと半径30センチの的になら、200メートル離れていても百発百中だった。
俺自身の技術を上げる必要があるのか俺もよくわかっていない。試してみる価値はあるだろうくらいの気持ちだ。
今日は豊富な作物が各地で実るオリオン領を周る。
食いしん坊のプリムの胃袋を掴む。
昨日と同じようにごっつい騎士50人に囲まれながら目的地を周る。
今日もコウメイはお留守番だ。理由はあいつらよく見たらなかなかの童顔イケメンだからだ。俺の心の平穏のためにも自宅待機を命ずる。
最初はポームというリンゴによく似た果物だ。というかリンゴだ。
見た目もリンゴの表面の皮が黄緑色なだけで実は普通に白~肌色の中間くらいの色だ。味もリンゴだ。
プリムはおいしそうにほおばっていた。
「プリムさん、そんなに食べたら後でおなかに入らなくなりますよ」
あと4件も周るのだ。それと別に昼飯もある。心配してそういったら
「大丈夫です!」
と力強くそう言われた。
次はレーズンという果物だ。俺訳だと葡萄なのだが、柿だ。
また、色もオレンジではなく緑色だ。最初見たとき熟してないんじゃないかと思ったが、食べてみたら普通に柿だった。
プリムはまたしてもたくさん食べていた。あの小さい体のどこにあんな入るのだろうか?
結果、プリムは5件と昼飯を食べて、おなか一杯のご様子でご帰宅なさった。
俺は食べ過ぎて胃もたれに似た気持ち悪さを起こし、夕飯もパスで早々に寝入ってしまった。
深夜に俺は目覚めた。感覚的は5時間近く眠っていたと思う。トイレに行こうとして起き上がった時に気付いた。横を見たら誰もいなかった。
(あれ?いつもはリサさんがいるんだがな?)
神眼を発動し、探す。
そしたら、お母様の部屋にいた。しかもお母様とリサさんだけじゃなく、第2夫人以外の夫人達とオリオン家の騎士団長が勢ぞろいだった。
すごい深刻そうな話みたいで、全員の顔が非常に険しい。
声が聞こえないのでベットから出て、お母様の部屋まで歩きながら神眼で見続ける。
すると、普段無表情のローゼさんがすごい剣幕で立ち上がり、部屋を出て行こうとする。
(え!?ど、どうしたんだ??)
~レインが寝てしばらく経った頃~
王都のロンドから知らせが来た。自分が戦争に参加することになったという知らせが……。
わかっていた。そうなる可能性を……。
私は大事な話があると夫人達とオリオン家の騎士団長とリサを呼んだ。
全員が揃うまで沈黙が流れている中、最後にヒルデが入ってきて、開口一番にこう言った。
「わざわざなんですの?私とプロウスの大事な時間を奪ったのですからそれ相応のお話をお聞かせくださるのですわよね?」
相変わらず空気を読まない。いつものことだがこんな時にされると余計に怒りが湧いてくる。それを抑えて努めて冷静に
「そうよ、大事な話があるの。とりあえず座って頂戴」
と着席を促す。
ヒルデも仕方ないとばかりに座る。
フゥ~~……、と息を吐き、逸る心と身体を落ち着かせる。
それから、ゆっくりと単刀直入に知らせを言う。
「ロンドが…戦争に将軍として参戦することになったわ」
その言葉に一番に反応したのはローゼだった。
「何故?何故ロンドが参戦するの?ルドガー将軍とプリタリア様は何をやっているの?」
いつも口数の少ない彼女だが今日ばかりは饒舌だった。彼女は昔からロンドのことになると饒舌になる。身を乗り出して問う彼女に私は
「ルドガー将軍は、戦死したわ」
と、告げた。
「「「「……」」」」
全員の息をのむ音が聞こえた。準英雄級たるレベル8魔法使いのプリタリア様がついて行ってまさかそんな結果になると誰も想像していなかったからだ。
「そしてプリタリア様は重症、軍は将軍が戦死した時点で瓦解、帰ってきた兵は1万に満たないそうよ」
今回リュミオンに送った兵の数は6万と聞いている。数が6分の1以下に減ったのだ。
すると、ローゼが聞いてきた。
「プリタリア様程の方をどうやって倒した?帝国のレベル8とぶつかったの?」
当然の疑問だろう。準英雄級の者が重症なんて周りの者たちは何をやっていたんだ、という話になる。
「詳しくはわからないわ。ざっくりと森で分散したところを各個撃破されたと書いてありましたわ」
プリタリアとて万能ではないのだ。MPが尽きれば回復するまでただの人だ。
「それでなんでロンドが参戦しなければならないの?」
ローゼは淡々と聞いてくるが、その言葉は私の肌が泡立つほどの怒気を含んでいる。
「プリタリア様は戦時中の復帰は不可能だからよ。だからと言ってリュミオンの状況は無視できないの。リュミオンが落ちたら次は私たちの国よ。だから、この国で一番優秀な将軍であるロンドが出なくてはならないの」
話しているうちに言葉がとげとげしくなる。
それに対して彼女は淡々と返してくる。
「子供が成人するまで戦役からは外されるはず。この国の法律」
確かに貴族は家を残すために、結婚して実子がいる場合に限り、戦役を免除する法律がある。
「そうよ。でも今はそんなこと言っていられる状況じゃないのよ。ロンドじゃなければ敵を止められない」
「納得いかない」
その瞬間抑えていたものがプチッと音を立てて切れた。
「私だって納得してないわよ!!なんで、あの人が参戦しなきゃならないのよ!!相手はレベル8の魔法使いよ!ロンドは確かに強いわ。だけどそれは準英雄級に対抗できるほどじゃない」
準英雄級は化け物だ。そんなのに対抗できるのは……。
「準英雄級に勝てるのは……」
ハッとした。自分の口から出たのかと思ったからだ。
でも違った。
前を見るとローゼが何か考え込み、突然何かに思い立ったようにバッと顔を上げ突然立ち上がる。
そして、走って部屋を出ていく。
突然の悪寒にさらされ反射的に私も立ち上がり追いかける。
幸いすぐに追いつきローゼの腕をつかんで止める。
「何をするつもりなの!?」
そう聞く私に彼女は今までに見たことがないほど真剣な目で私にこう言った。
「いる。英雄級の才能を持つ人が。彼なら…」
誰のことか一瞬で分かった。だけどそれは…
「ダメよ!!レインは絶対に戦争にはいかせないわ!!もうあの子はこの戦争に関らせないと決めたの!」
あの子に戦争の話は絶対にしないようにこの城で働く全員に厳命してまでかかわらせないようにさせたのだ。
「彼でないとこの状況は打開できない。なら頼むべき」
「ダメよ。もうあの子が子供のうちに戦争に関らせることはさせない!」
「離して。私にはいかなければならないところがある」
ローゼがいつものように淡々と言ってくる。だが、そこには何が何でも目的を成し遂げるという固い意志があった。
だけど、
「離さない。あなたをレインのところに行かせるわけにはいかない」
私の決意を感じとったローゼが魔法を詠唱しようとした瞬間、
「待ってください!」
という声と暗い廊下から歩いてくる小さい影があった。
私にはわかる。それがレインだということに。
私は失念した。レインが私たちを避けていたとき気を付けていた事に。
この城の中でレインに秘密で何か相談事をしてはいけなかったことに……。
レインの異常なほどの勘の良さを。
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