超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

膨張するダンジョン

 祠を進んでいくにつれて分かれ道が増えてくる。
 元は一本道だったはずだ。
 しかし、今までは複数の分かれ道を通過してきた。
 ダンジョン化が進んでいる証拠……僕は足を止めた。

 「どうしたの?」とキララ。

 「風がある。分かれ道の先には、外につながっている箇所があるみたいだ」
 「え? それってヤバいない?」
 「うん……まずいな」

 生まれたばかりのダンジョンが広がり、一部が外とつながった。
 それは誰も知らないダンジョンの出入り口が生まれたという事だ。
 魔物モンスターがその場所から外に出ている可能性がある。
 そして、その付近に住民がいるかもしれない。

 「この先いる魔物は……やっぱりゴブリンか。10……いや、11匹だな」

 僕は、先にいる魔物の数を正確に数える。
 キララは、それを不思議に思ったらしい。

 「どうしてわかるの? 索敵系の魔法を使用している感じでもないけど……」
 「あぁ、索敵系魔法は常時展開が必須で燃費悪いから、僕は使わないよ。魔物の数と種類がわかるのは単純に臭いさ」
 「に、臭い? ゴブリンの臭いがわかる?」
 「そりゃ、普段なら無理だけど風上だからね」

 ん?なにやら、女性陣が集まって内緒話を……

 「これから風上でサクラさんの前に立たないようにしましょう」
 「うん、臭いを嗅がれるはちょっと……乙女のアレが……」
 「お父さん、さすがにキモい」

 「……聞こえてるぞ。おい!」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「それで、ゴブリンはどこに隠れているのですか? 臭いセンサーことサクラさん?」
 「臭いセンサーなんて二つ名を持った記憶はない。ちなみに、あそこの岩と天井に張り付いている」

 そうドラゴンに支持を出した。
 「はいはい!」と前に出るとゴブリンが反応するよりも早く、素手で殲滅していった。
 ドラゴンなら、索敵系の魔法ぐらい持っているのではないか? そう思って聞いたみたが、保有してないと返事が返ってきた。

 「真の強者である幻想種類はダンジョンの真ん中で昼寝してても、襲ってくる敵はいないので防犯意識は欠如しやすいのです。困ったものですが、生まれ育った環境の問題は改善が難しくて困りますね」
 「そんな、留守中でも家に鍵をかけない田舎系みたい感じで言われても……」

 そんなこんなで、ダンジョン内に風が入ってくる場所にたどり着いた。

 「これは思ったよりも大きいな」

 そこは、誰がどう見てもダンジョンの出入り口だった。
 外には森が広がっている。
 分かれ道で11匹のゴブリン。祠に入ってから遭遇したゴブリンの総数は3桁を軽く超えている。

 「もう、かなりの数が外に出ているかもしれないな。クリムとキララは集落が近くにないか調べてくれ。手遅れかもしれないが、無事なら避難勧告を頼む」
 「わかった。お父さんは?」
 「ここを破壊して、内部へ進む。他にも出入り口が生まれる前にダンジョン化の原因を取り除く」


 クリムは何か言いかけたが「うん、わかった」と駆け出した。
 「師匠、待ってください」と後ろからキララが追走した。

 「……それで私は何をすればいいんですか?」

 残されたドラゴンがいう。

 「2人を行かせた理由はわかっているだろ?」
 「ええ、わかってます。 夫のために働く妻のポジションもありですから」

 爆風

 魔法? 無詠唱のソレを近くできたのは、ドラゴンの魔法が発動した直後だった。
 天井が崩れ落ち、出入り口が封じられた。

 「それに新参のラスボスがいるとしたら……久々にガチンコ、セメント、シューティング、遊びなしの格付けマッチ。格を競わせるから格闘技とは誰の言葉でしたかね? 所謂、わからせに来たというやつですよ!」

 ドラゴンのボルテージが最高潮だった。

 



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