超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

3対3 団体戦?

 
 「ここは闘技場コロッセウムならば、戦い――――そして、勝者の前に私はひざまづく事を誓いましょう」

 妙に芝居がかった口調でドラゴンで言う。
 これに答えるイスカル王も、また芝居がかった大げさな口調だ。

 「なんという気性か。貴方の旦那を貫き、貴方を奪えと言うのか。だが、しかし、それでも、貴方が望む愛の形がそれだと言うのならば、我は修羅道に落ちてみせましょう」

 それを聞いた周囲の人達は、それぞれに————

 「見えるのか?」 「あの王の戦いが……」 「見えると言うのか!」

 その感情は熱を帯びて、目に見えぬ力に昇華していく。
 イスカル王の強さを称えるように見える。
 ――――いや、違うのか。それは王への忠誠心―――つまりは信頼だ。
 絶対的強者への信頼が、王の周りに渦巻く力になっていく。
 僕にはそう目に映った。

 王は僕を見る。
 対戦相手としての分析なんて生易しいものではなく、調理された料理をどこから喰らうか?
 そんな視線。

 (……ダメだ。勝機が見えない)

 戦う前から心が折れていく。
 すぐにでも背中を見せて駆け出したくない。
 でも――――

 「あれ?イスカル王、勘違いをされていますよ。敵は我が夫1人とは言いってませんよ」

 このドラゴンの発言に「ほう」とイスカル王は僕から視線を外した。

 「私が求める戦いは3対3での戦い。私は自らの人生を、たとえ旦那でも、王でも、他者にゆだねるような真似はしたくないのですよ」
 「……それは、つまり?」
 「察しの通り、旦那のチームには私も入ります」
 「これは豪気な女性だ。惚れ直したぞ」
 「ならば?」
 「構わぬ。我らは、あとの2人か。丁度、新たな弟子を取ったばかりだ。それに、強き友も訪ねてきている」

 イスカル王は豪快に笑った。
 その隙にドラゴンは僕に耳打ちをした。

 「これで、私たちの勝利が確定しましたね」

 ドラゴンの勝利宣言に僕は「へぇ?」とマヌケな返事が口から出てしまった。

 「サクラさんはお忘れですか?3人のチーム戦なら、サクラさんが負けても大丈夫なのです。なぜなら、他の2人は私とクリムですから」

 「そうか!」と合点がいった。

 例え、僕が王に負けるとしても————
 クリムとドラゴンに勝てる人類は、ほぼ皆無。

 人工的に次代の探索者を作るために人造人間 ロウ・クリム。
 最強の探索者の遺伝子を持ち、魔剣を体内に取り込んだ無尽蔵の魔力。

 人類が未踏のラスボス ドラゴン。
 もはや、力量において、一切の説明を不要とする最強生物。

 ハッキリ言おう。僕等に負けはない!

 「おぉ丁度いい。我が弟子がやってきた」

 イスカル王が言う。
 かわいそうにイスカル王が弟子入りを認めるほどの強者だ。
 おそらく人類最強レベル。
 しかし……残念ながら……所詮は人類最強程度なんだな。
 僕は笑いを堪えながら、イスカル王の弟子とやらを見た。
 そこには―――

 「あれ?お父さん、どうしてここにいるの?」
 「あ、あれ?クリムこそ、どうして……」
 「んっとね。話と長いけど……このおじちゃんが弟子にしてくれるんだって!」
 「oh……」

 僕はイスカル王に向いて、「えっと、この子は僕にとって義理の娘でして……」とクリムの正体に触れないように説明した。その結果―———

 「おぉ、またもや何たる悲劇。家族が愛のために争うなどと……しかし、それもよし。なぜなら、ここはイスカルなのだからな!」

 イスカル王の隣に並んでクリムも―――

 「愛なのか……それじゃ仕方ない!」

 と言った。
 ドラゴンのプランは完全に崩壊した瞬間であった。


  


 



 

「超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く