超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

闘技場にて

 よし! キララの話を要約してみよう。

 彼女は闘技者になりたい。
 しかし、女性の身では難しい。
 とりあえず、闘技が盛んなイスカルにやってきた。
 そこで、僕を見かける。 その立ち姿から闘技者に違いないと思う。
 だから襲撃。
 実際の闘技者に勝って箔をつけたい。 
 あわよくば、闘技者デビューを!

 「……こんな感じですか?」
 「うん! そうだね。サクラは賢いなぁ」

 僕はキララに頭を撫でられた。 嫌な感じはしない。

 「思ったよりも行き当たりばったりですね」

 「えーそうかな?」と、どうやら彼女は、この計画でうまくいくと思っていたらしい。

 「ちなみに、僕よりもドラゴンの方が強いといいますか、キララさんなら力量を測れたと思うのですが、どうして僕を襲ったのですか?」

 僕の質問にキララは「う~ん」と悩み……

 「なんだか、彼女は人間ぽくないんだよね」

 「なっ! 失礼な!」とドラゴンが両手を回して抗議する。
 僕はキララに「……あれは気にしなくいいから」と伝えた。

 「奥さんが凄い勢いで暴れているんだけど……」
 「大丈夫、すぐになれるから」
 「意外とサクラも大変なんだな。……いや、抽象的に言っちゃったけど、ドラゴンは筋量や立ち振る舞いを見ても闘技者に見えなかった」

 「なるほど」と僕は納得した。
 けれども、彼女はこう続けた。

 「どう考えても隙だらけに見えるけど……どうやったら……いえ、どんな経験を積めば、あそこまで――――
 世界に対して無防備でいられるのかわからない」

 そして、キララのドラゴン評は、こう〆られた。

 「まるで、本物の幻想種が街中に紛れているみたい」

 彼女の観察眼に賞賛を送りたい気持ちが沸いてきた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 ―――闘技場コロッセウム―――

 「はい、闘技者の申し込みはこちらです」
 「え?そんなに簡単に?」
 「はい、この闘技では、男性でも女性でも闘技者を広く応募しています。過去には王族の方も闘技者として登録した事もあるのですよ」

 あの後、観光目的に闘技場に来た僕ら3人は、受付嬢に説明をしてもらった。
 すると、闘技者になること自体は簡単だと言われたのだ。

 「では、利用規約の紙を見せてください」
 「サクラは神経質だな。そんなの後でいいよ。早く登録しよう! 早く!」

 キララは背後から申込用紙を僕から奪うと――――
 「サラサラってね」と申込用紙にペンを走られせてサインを書いた。

 「あー 契約はよく確認してからサインしないと、人生損するぞ」
 「あはは、大丈夫。大丈夫。それで、サクラは? 登録しないの?」
 「いや……別に僕は――――」

 威圧感プレッシャー

 何者かが現れた。
 その存在感に僕は言葉を止めた。
 その男は――――
 筋肉を無理やり人間に形に留めているような男だった。
 歩くだけで筋肉が激しい自己主張を繰り返している。

 筋肉には使える筋肉と使えない筋肉がある。

 こんな言葉がある。しかし、この言葉は適切ではない。
 筋肉をつける運動能力が落ちる。
 そう言われる原因の多くは筋肉そのものに問題があるのではなく、筋肉をつける過程……つまり鍛錬法の方に問題がある事が多い。
 そんな事は常識レベルに染込んでいる僕でも目を疑い躊躇するほどの筋量の男。 

 (強い。 ただ、そこにいるだけなのに……)

 そして、求心力と言えるものがあり、目が離せなくなる。
 僕以外にも彼の存在に気づいたのだろう。
 受付嬢の1人が彼に向かって駆け出し――――

 「これはイスカル王さま、従者もつけずに……」

 聞き間違いでなければ、確かにそう言っていた。
 彼が奴隷都市 イスカルの王。三代目イスカル王だと――――



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