超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』 

チョーカー

村の果て

 10歳くらいの男の子だ。少年が止まったの一瞬だった。
 少年は、対面した僕に酷く驚いた様子で、物陰に隠れた。
 隠れたまま、じっーとこちらをのぞいている。

 「やれやれ、嫌われたものだ」と僕はため息をつきながら、ポケットをあさる。
 なにか、気を引くようなものでもあれば……ポケットの中には硬貨が1つだけだった。

 「よし、これを使って……」

 僕は少年に見えるように手の甲を見せる。右手だ。
 親指と人差し指の間に硬貨を挟んでるのを見せた。そして、そのまま―――
 硬貨を人差し指の上に倒すと、微調整で人差し指と中指で挟んで立たす。
 それを連続して左手に硬貨を移動させる。
 奇術マジックのテックニックの1つ、コインロールだ。
 種も仕掛けもなくテックニックで観客の死角をつく技術。
 左手の小指まで移動させると、上に硬貨を投げる。
 落下のタイミングを合わせて、両手を素早く何度も交差させて―――

 「はい、消えた!」

 どや顔で見せて奇術に少年は、体を乗り出してみていた。 

 「お兄ちゃん、すげぇ……って、そこ」

 少年は僕の靴に落下した硬貨を指差していた。

 「アハ、バレたか」
 「そりゃ、簡単にわかるよ」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 「オレの名前はカツシ」

 少年は名乗った。互いに自己紹介を終えた。
 僕は目的を伝えると―――

 「へぇ~ 村を結界を取り除くためだって?村長もバカな事を考えるもんだ」

 「結界?」と尋ね直す。

 「そりゃ、この村に魔物が入って来ないのは結界があるからだろ?」
 「確かに、そう考えるのは普通だけど……結論を出すのは早いというか、別の可能性も調査しないと」
 「大人はいつもめんどくさい事を考えるんだね」
 「まぁね、保証が必要なのさ」
 「保障?」
 「誰も責任を取りたくないから、責任を取らないための保障が必要なのさ」
 「ふぅ~ やっぱり、大人はめんどくさいね」
 「まぁ、僕は大人って年齢じゃないけどね」

 2人して笑った。
 しかし、結界のアイテムか。僕は地面を見る。

 「何だこりゃ!」

 僕の呟きに隣を歩いてたカツシ少年は「?」と表情を浮かべていた。
 結論から言うと―――
 地面から魔力の流れを掴もうとした。でも、できなかった。
 魔力が地面から察知できなかったのではない。
 この村の魔力濃度が高すぎらのだ。 空間に大量の魔力が溢れていて、思わず魔力酔いしそうになる。

 「中々、愉快な村だね、こりゃ……」

 当たり前だが、僕の言葉の真意は伝わらなかったのだろう。
 カツシ少年は僕の言葉を否定した。

 「愉快なんて、この村のどこにもないよ。皆、死んだような表情して毎日の繰り返しさ」
 「詩人だね。とても10歳の言葉とは思えないよ」 
 「本当の事だよ。サクラお兄ちゃんだって村民を見たでしょ?外の世界に興味がない。見ようともしない。だけら、みんなにはお兄ちゃんの事が見えないんだよ」
 「見えないって、そんな……」

 ゾクリと寒気が走った。

 「いや、たとえ話だよ。なんでお兄ちゃんまで死人みたいな顔してんの?」
 「コイツ!?」

 グリグリとコブシをカツシの頭に押し付ける。

 「痛っいたたたたい!ごめんよ、お兄ちゃん!」

 それから、直ぐ―――

 「ここが村の出入り口の1つだよ」

 村の端までたどり着いた。

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