超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
探索者は武器&防具を購入しない
「……という感じでした」
『花屋』に戻ってきた僕はフミさんへ『月屋』の様子と印象を伝えた。
それが今回のお使いクエストの依頼内容だった。
フミさんは僕の話を聞き終える「やっぱり、そうなっているのか」とため息をついた。
その様子をみて、僕は勘違いをした。
てっきり、「月屋のやり方は間違っている!」とか「防具ってのは客、1人1人の体に合わせて作るものだ」とか、月屋の姿勢を外道だと弾圧するのだと思っていた。
しかし――――
「私たちのやり方は間違っていたんだ」
そうポツリと漏らした。
「えっ?それは、どういう意味ですか?」
僕の問いにフミさんは――――
「防具ってのは、お客さんに合わせて作るもんじゃない。今更ながら、自分たちのやり方は間違いだと思い知らされたのさ」
「? ? ?」
「単純な話さ。探索者は人間が作った防具を身に着ける者がいる?」
「そりゃ……あっ!」
僕は気づいた。
気がつくと単純な話だ。
僕が知る限り、上位の探索者で、人間が1から作った防具を使用してる者はいない。
1人もいないのだ。
例えば、あらゆる魔法を弾く盾。
体が軽く身体能力が上がる鎧。
装備するだけで固有の魔法が使えたり、空を飛べるようなものまである。
だが、しかし――――
ほとんどの探索者が、ダンジョンから手に入れた特殊な防具を身に着けている。
「そう、私たち鍛冶屋が生み出す防具ってのは、ダンジョンの奥底に眠っている過去の遺産に遠く及ばないわけだ」
「いや、でも……」
「ダンジョンで誰が作ったのかわからない失われた技術……私たちができるのは、それを持ち主にふさわしい形へカスタマイズしてあげる事なのよ」
僕は何も言葉が出てこなかった。
「正しいの『月屋』なのよね。この国だって、防具を輸出して潤っているけど……私たちだって国外のお客さんの所まで行って、鎧の寸合わせをするわけにはいかないもの」
そう、寂しげな笑みを浮かべるフミさんに、僕は……
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「お帰りなさい」とクリムが迎えてくれた。
ここは宿舎。慣れない人ごみに疲れたクリムは、僕らよりも一足先に宿舎に戻って休んでいたのだ。
さて……
僕はベットに横になり、天井を見つめた。
「探索者は人間が作った防具を装備しない……か」
僕は、自分の腕に視線を移した。
僕の腕には人類史最強の武器がある。
『龍の足枷』
これも、ダンジョンからの――― ダンジョンのラスボスだったドラゴンからの贈り物。
人間には再現不能の絶対兵器だ。
これに人間の技術が追いつくのはいつ頃だろうか?
100年? 200年? それとも1000年後になるか?
それを使う、探索者である僕はいい。しかし、武器に携わる者にとって、それは――― あまりにも―――
「ただいま!」
声に驚き、ベットから体を起こす。
声の主はドラゴンだった。
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