超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ラストバトル 直前
まずは、メイドさんの「それではこちらになります」と言う声が聞こえ、次に「では、失礼する」とノック音が聞こえてきた。
「どうぞ!」と僕の声が合図になってドアが開かれた。
その人物を見て「うおっ!」と思わず、驚きの声を漏らしてしまった。
僕は事前に、その人物――― オム・オントが来ることは知っていたが……
僕が、驚いたのはその服装だ。
普段の着崩した服装ではなく、正装だ。
足元から、キラリって黒光りしている皮靴。
汚れ1つも、皺1つもない、真っ白なズボン。
シャツは首元までキッチリと第一ボタンまで閉じられている。
上着は鮮やかな赤色。
それよりもは一番、目を引いた部分は腰元だ。 腰元にも何もない。
オム・オントが何も武装していないのだ。
おそらく、入室までの過程で武器を預かれたのだろう。
オム・オントの非武装姿なんて本当にレアだ。
僕は感想として――――
「本当に貴族だったんだな」
と賞賛(?)の言葉を送った。
「第一声がそれか。うるせぇな」
そのまま、オントは備え付けの椅子に座って、早速、服を着崩し始めた。
僕は、そのままベットに座り込んだ。
「随分と差がついたなぁ」とオント。
「君ならすぐに追いつくだろ」と僕。
「しかし、お前らが城に送られてしまって、こっちは酷いもんだぜ。早く帰って来いよ」
僕は直ぐに返事できずに言いよどむ。
オントにも異変が伝わったみたいだ。
「……もしかしてお前、帰ってこないつもりか?」
「わからないけど……たぶん、そうなる」
「そうか」とオントは椅子に深く座り直し、天井を見つめた。
「そりゃ、仕方がないか。……でも、辞めねぇんだろ?」
「何を?」とは聞かない。ただ……
「もちろん」と笑顔で返した。
「そりゃ、上等な答えだ。何処に行くのかは知らない。だが、先に行って待ってろよ。必ず、追いついて―――いや、追い越してやるからな」
オントのソレも笑顔だった。 酷く狂気を秘めた笑顔だ。
「そりゃ怖い。こっちは、抜かれないように逃げ回ってみせるよ」
たぶん、僕の表情もオントと同じモノになっているだろう。
オントの退室後に誰もこなかった。
サンボル先生くらい来てもよさそうなものだが、学園関係で招待されているのは、教員よりも運営側に位置している立場の人間なのだろう。
たぶん、オントも級友枠代表ではなく、単純に貴族の立場から招待されたという事か?
ならば――――都合が良い。
外は太陽が沈んでいく最中だ。間もなく、授受式が始まる。
空には赤みが残る黄昏どき。昔の言葉を使えば逢魔が時。
魔を秘めた人間と出会い語らうには、これ以上に相応しい時間もない。
おそらく、このタイミング。僕は、間もなく襲撃を受ける。
この結果に―――僕が代々的に英雄として認められるのは『犯人』に取っての敗北だ。
なぜなら、『犯人』が手に入れたいはずの『龍の足枷』
明日には、その所有者が僕である世界中が知る事になる。
だから、このタイミング。
もはや、僕を殺して『龍の足枷』を奪い取ったとしても、シュット国に『龍の足枷』の記録は残っている。所有している時点で犯人だと丸わかりの状態になる。
けど、もはや『犯人』には、そんな事は関係ない。
追い詰められた『犯人』は合理性と正体を捨て去り、必ず襲って来る。
僕は普段の服装と装備を身につけて、部屋を出た。
「どうぞ!」と僕の声が合図になってドアが開かれた。
その人物を見て「うおっ!」と思わず、驚きの声を漏らしてしまった。
僕は事前に、その人物――― オム・オントが来ることは知っていたが……
僕が、驚いたのはその服装だ。
普段の着崩した服装ではなく、正装だ。
足元から、キラリって黒光りしている皮靴。
汚れ1つも、皺1つもない、真っ白なズボン。
シャツは首元までキッチリと第一ボタンまで閉じられている。
上着は鮮やかな赤色。
それよりもは一番、目を引いた部分は腰元だ。 腰元にも何もない。
オム・オントが何も武装していないのだ。
おそらく、入室までの過程で武器を預かれたのだろう。
オム・オントの非武装姿なんて本当にレアだ。
僕は感想として――――
「本当に貴族だったんだな」
と賞賛(?)の言葉を送った。
「第一声がそれか。うるせぇな」
そのまま、オントは備え付けの椅子に座って、早速、服を着崩し始めた。
僕は、そのままベットに座り込んだ。
「随分と差がついたなぁ」とオント。
「君ならすぐに追いつくだろ」と僕。
「しかし、お前らが城に送られてしまって、こっちは酷いもんだぜ。早く帰って来いよ」
僕は直ぐに返事できずに言いよどむ。
オントにも異変が伝わったみたいだ。
「……もしかしてお前、帰ってこないつもりか?」
「わからないけど……たぶん、そうなる」
「そうか」とオントは椅子に深く座り直し、天井を見つめた。
「そりゃ、仕方がないか。……でも、辞めねぇんだろ?」
「何を?」とは聞かない。ただ……
「もちろん」と笑顔で返した。
「そりゃ、上等な答えだ。何処に行くのかは知らない。だが、先に行って待ってろよ。必ず、追いついて―――いや、追い越してやるからな」
オントのソレも笑顔だった。 酷く狂気を秘めた笑顔だ。
「そりゃ怖い。こっちは、抜かれないように逃げ回ってみせるよ」
たぶん、僕の表情もオントと同じモノになっているだろう。
オントの退室後に誰もこなかった。
サンボル先生くらい来てもよさそうなものだが、学園関係で招待されているのは、教員よりも運営側に位置している立場の人間なのだろう。
たぶん、オントも級友枠代表ではなく、単純に貴族の立場から招待されたという事か?
ならば――――都合が良い。
外は太陽が沈んでいく最中だ。間もなく、授受式が始まる。
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魔を秘めた人間と出会い語らうには、これ以上に相応しい時間もない。
おそらく、このタイミング。僕は、間もなく襲撃を受ける。
この結果に―――僕が代々的に英雄として認められるのは『犯人』に取っての敗北だ。
なぜなら、『犯人』が手に入れたいはずの『龍の足枷』
明日には、その所有者が僕である世界中が知る事になる。
だから、このタイミング。
もはや、僕を殺して『龍の足枷』を奪い取ったとしても、シュット国に『龍の足枷』の記録は残っている。所有している時点で犯人だと丸わかりの状態になる。
けど、もはや『犯人』には、そんな事は関係ない。
追い詰められた『犯人』は合理性と正体を捨て去り、必ず襲って来る。
僕は普段の服装と装備を身につけて、部屋を出た。
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