超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
シュット王の神秘
身を清められた僕は白い服を渡された。
拘束されていた手錠も金色の物に替えられた。
たぶん、本物の純金製の手錠だ。
これも儀式の延長。あるいは演出……か。
僕の目前には巨大な巨大な門がある。
おそらく、この先に王がいるのだろう。
いや、わからない。この演出過剰な儀式を考えれば、この先にも同じような門が複数用意されていてもいおかしくない。
周囲を取り囲む騎士たちは武装を解除していた。
王の間において武装は禁止されているのだろう。
僕は、自分の手に視線を落とす。 そこには龍の紋章が爛々と輝いている。
その紋章の中に収納されている物は、れっきとした武器なのだが、流石に腕を切り落とすなんて非人道的な行いまでされなかった。
少しだけ……
「ほっ」と胸を撫で下ろす。
「開門!」
騎士たちの声が響き、門が動き出す。
僕の予想とは異なり、第二の門は存在していなかった。
ただただ、空間がある。
無手の騎士たちが並ぶ、遥か後方に彼はいた。
豪華絢爛の椅子に座り、無言でこちらを見ている。
やたら大きい黒目が特徴的なほっそりとした顔つき。
コロちゃん……いや、第三王位継承権所持者コロロアコロの父親だということを考えれば、その年齢は40近くのはずだが、そうは見えない。
精々、20代?青年と呼ばれててもおかしくない。
彼が――――
「余がシュット王である」
そんな大きな声を出しているよう見えないのだが、その声は離れている僕の位置までしっかり届いた。
「少年、名を名乗れ」
反射的に僕は声を上げた。
「ぼ、僕がトーア・サクラです」
できる限り、大きな声を出したつもりだったけど、果たしてシュット王まで届いたのかはわからない。
王は「うむ」と頷き、「もっと寄るがいい」と言った。
一歩、歩くたびに周囲の騎士たちから、凄まじい威圧感を浴びせられる。
それ以上なのは王から発せられているモノだ。
(なんだ……これは?)
まるで不可視の膜の中を進んでいるような感覚。
体にまとまりついてくるモノの正体がわからない。
精神的なモノなのか? それとも物理的なモノなのか?
それでも、僕は王の前まで歩き続け、そして、たどり着いた。
そのまましゃがみ込むようにバランスを崩し、片膝を地面につける。
見上げれば王と目が合う。
その目は僕を見ていなかった。何を見ているのかわからない。
それでもあえて言うならば、無を見ていた。 虚空がそこに存在していて見ているかのような視線。
それは―――
王は人の形を神秘そのものと化していた。
「立ち上がれよ」
王の言葉で、さっきまで僕を覆っていた膜のような存在が消えた……気がする。
そのまま王に従い、立ち上がった。
「さて、君よ、トーア・サクラよ」
「はい」
「君は英雄になりたいか?」
その質問は直接的であり、僕は――――
「はい」
と力強く答えた。
拘束されていた手錠も金色の物に替えられた。
たぶん、本物の純金製の手錠だ。
これも儀式の延長。あるいは演出……か。
僕の目前には巨大な巨大な門がある。
おそらく、この先に王がいるのだろう。
いや、わからない。この演出過剰な儀式を考えれば、この先にも同じような門が複数用意されていてもいおかしくない。
周囲を取り囲む騎士たちは武装を解除していた。
王の間において武装は禁止されているのだろう。
僕は、自分の手に視線を落とす。 そこには龍の紋章が爛々と輝いている。
その紋章の中に収納されている物は、れっきとした武器なのだが、流石に腕を切り落とすなんて非人道的な行いまでされなかった。
少しだけ……
「ほっ」と胸を撫で下ろす。
「開門!」
騎士たちの声が響き、門が動き出す。
僕の予想とは異なり、第二の門は存在していなかった。
ただただ、空間がある。
無手の騎士たちが並ぶ、遥か後方に彼はいた。
豪華絢爛の椅子に座り、無言でこちらを見ている。
やたら大きい黒目が特徴的なほっそりとした顔つき。
コロちゃん……いや、第三王位継承権所持者コロロアコロの父親だということを考えれば、その年齢は40近くのはずだが、そうは見えない。
精々、20代?青年と呼ばれててもおかしくない。
彼が――――
「余がシュット王である」
そんな大きな声を出しているよう見えないのだが、その声は離れている僕の位置までしっかり届いた。
「少年、名を名乗れ」
反射的に僕は声を上げた。
「ぼ、僕がトーア・サクラです」
できる限り、大きな声を出したつもりだったけど、果たしてシュット王まで届いたのかはわからない。
王は「うむ」と頷き、「もっと寄るがいい」と言った。
一歩、歩くたびに周囲の騎士たちから、凄まじい威圧感を浴びせられる。
それ以上なのは王から発せられているモノだ。
(なんだ……これは?)
まるで不可視の膜の中を進んでいるような感覚。
体にまとまりついてくるモノの正体がわからない。
精神的なモノなのか? それとも物理的なモノなのか?
それでも、僕は王の前まで歩き続け、そして、たどり着いた。
そのまましゃがみ込むようにバランスを崩し、片膝を地面につける。
見上げれば王と目が合う。
その目は僕を見ていなかった。何を見ているのかわからない。
それでもあえて言うならば、無を見ていた。 虚空がそこに存在していて見ているかのような視線。
それは―――
王は人の形を神秘そのものと化していた。
「立ち上がれよ」
王の言葉で、さっきまで僕を覆っていた膜のような存在が消えた……気がする。
そのまま王に従い、立ち上がった。
「さて、君よ、トーア・サクラよ」
「はい」
「君は英雄になりたいか?」
その質問は直接的であり、僕は――――
「はい」
と力強く答えた。
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