超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
いつものダンジョン探索?
ダンジョン探索も30層を越えるようになっていた。
ここ31層はジャングルだ。
蒸し暑い空間。視界は木々で閉ざされている。
ここでは地図は役に立たない。
なぜなら、ここの樹木の多くは魔物の擬態。あるいは魔物と認定されている意識ある樹木。
僅かな時間で移動を行い、地理そのものを変化させてしまう。
専門家の意見では、下の階層にある『回復の泉』が影響を与えているとか、なんとか……
ではどうするのか?
簡単だ。真っ直ぐに進めばいい。
ありとあらゆる障害物を切り倒し、焼き払い、灰は灰に……
僕は装備を草刈り用の鎌と鉈に持ち替えて進んでいく。
「待て」
ペアを組んだ同居人のケンシの声。後衛から停止の合図を送ってきた。
ふり返るとハンドシグナルで一本の木を指で刺している。
しかし、意味がわからない。声のボリュームを下げて訊ねる。
(? あの木がどうしたのか?)
(馬鹿、よく見ろよ。あの木の枝はウッドスネークだ。目的の1つだぜ)
(ムッ!)
確かに、よく見れば木の枝の動きが不規則だ。
ウッドスネーク。
木に寄生するタイプの魔物だ。
木の枝に擬態して、木の実を食べにくる小動物を襲う。
植物と共存関係を結び進化した生物であり、長い進化の年月は、本体である蛇の部分に植物の特色である強い生命力の獲得に成功している。
ヘビ系の魔物に身を隠しても無駄だ。ヘビは視力が退化した代わりに、ピット器官と言われる部分が生物の体温に反応する。
僕は駆け出し、一気に距離を縮める。
シャーと威嚇音を出すウッドスネーク。
身を隠して行う不意打ちには強いが、最初から居場所がわかってれば容易い相手だ。
しかし―――
「馬鹿!サクラ、違う!」
ケンシの叫び声。
違う?何が? その疑問も、直ぐに答えが出た。
ウッドスネークは一匹ではなかった。 瞬時に数えれたのは5匹まで、隣の木々まで合わせると合計は……
それら全ての攻撃が僕に向かって来る。
背後から、ケンシの援護魔法が数匹の蛇を撃ち落とした。
僕も装備し直した短剣を振るい撃墜を開始する。しかし―――数が多すぎた。
ケンシの魔法は、長距離からの精密射撃が持ち味。 速射性も威力も低い。
僕も片手の短剣だけでは捌ききれない。
一瞬の隙。思考の隙。 僕の首筋へウッドスネークが飛来しくる。
避けれない!?
僕は覚悟を決める。だが、ウッドスネークの咢は宙を噛んだ。
僕の首根っこを掴んだ誰かが、そのまま後へ僕を引き倒したのだ。
すぐに、その人物が誰かわかる。 元々、2人しかいなのだから……
後衛の役割を破棄したケンシが、僕と入れ替わるように前衛に躍り出たのだ。
ケンシは帯刀してあった。最近、手に入れたと話していた剣だ。
それを抜くと同時、襲い掛かってくるウッドスネークを切り捨てていく。
両親から叩き込まれたという剣の技。 その技のキレが凄まじいものがあり、ウッドスネークの数は減って行った。
「ふぅ……」と全てのウッドスネークを倒したケンシは剣を鞘におさめ、深いため息をつく。
僕は「すまない。油断してしまった」と謝った。
ケンシは手をパタパタと仰ぐような仕草で「気にするな」と一言。
あんなにも忌み嫌っていた剣技を自ら振るい、それでいて心が乱れた様子がない。
なにか、心変わりする出来事があったらしいが、詳しくは聞いていない。
「そんな事よりもアレだ。アレ!」と地面に落ちた、ウッドスネークの亡骸を指差した。
「さっさと拾わないと、みんな待ちくたびれてしまうぜ」
ケンシの言う通りだ。僕は、地面に落ちているウッドスネークを集めて袋に入れていく。
急ぎながらも、万が一、仕留め切れていなかった場合を用心しながら……
「終わったあぁ!」
ウッドスネークの数が多すぎたので、集め終えるにも一苦労だった。
一方のケンシは、ウッドスネークの守護がなくなった樹木に登り、果実を集めていた。
「それ美味いのか?」と僕が言うと、ケンシは「まぁね」と笑いながら返した。
僕は半信半疑だった。
果実と言うと、普通は人間の手が加わった果実の味を連想するだろう。
しかし、自然に育った果実は全くの別物だ。とても食べれたものじゃない。
何か、良いアイディアでもあるのだろうか?。
そのまま、ダンジョンの下層を目指して進むと―――
僕等2人はピタリと足を止めた。
「あれは!」 「まさか!」
その魔物を見た瞬間、ゴクリと喉が鳴った。
ビックピッグ!
巨大な豚の魔物。 凶悪な風貌に対して、その味は美味。
従来は、下の階層に出現する魔物で、この階層で目撃される事は非常に珍しい。
つまり、レアものだ。
興奮状態の僕らは、つい――――
「ヒャッハー、肉と肉と肉を置いてけ!」
「食うぜ!超食うぜ!超絶食うぜ!」
雄たけびを上げて、ビックピッグに襲い掛かって行った。
ここ31層はジャングルだ。
蒸し暑い空間。視界は木々で閉ざされている。
ここでは地図は役に立たない。
なぜなら、ここの樹木の多くは魔物の擬態。あるいは魔物と認定されている意識ある樹木。
僅かな時間で移動を行い、地理そのものを変化させてしまう。
専門家の意見では、下の階層にある『回復の泉』が影響を与えているとか、なんとか……
ではどうするのか?
簡単だ。真っ直ぐに進めばいい。
ありとあらゆる障害物を切り倒し、焼き払い、灰は灰に……
僕は装備を草刈り用の鎌と鉈に持ち替えて進んでいく。
「待て」
ペアを組んだ同居人のケンシの声。後衛から停止の合図を送ってきた。
ふり返るとハンドシグナルで一本の木を指で刺している。
しかし、意味がわからない。声のボリュームを下げて訊ねる。
(? あの木がどうしたのか?)
(馬鹿、よく見ろよ。あの木の枝はウッドスネークだ。目的の1つだぜ)
(ムッ!)
確かに、よく見れば木の枝の動きが不規則だ。
ウッドスネーク。
木に寄生するタイプの魔物だ。
木の枝に擬態して、木の実を食べにくる小動物を襲う。
植物と共存関係を結び進化した生物であり、長い進化の年月は、本体である蛇の部分に植物の特色である強い生命力の獲得に成功している。
ヘビ系の魔物に身を隠しても無駄だ。ヘビは視力が退化した代わりに、ピット器官と言われる部分が生物の体温に反応する。
僕は駆け出し、一気に距離を縮める。
シャーと威嚇音を出すウッドスネーク。
身を隠して行う不意打ちには強いが、最初から居場所がわかってれば容易い相手だ。
しかし―――
「馬鹿!サクラ、違う!」
ケンシの叫び声。
違う?何が? その疑問も、直ぐに答えが出た。
ウッドスネークは一匹ではなかった。 瞬時に数えれたのは5匹まで、隣の木々まで合わせると合計は……
それら全ての攻撃が僕に向かって来る。
背後から、ケンシの援護魔法が数匹の蛇を撃ち落とした。
僕も装備し直した短剣を振るい撃墜を開始する。しかし―――数が多すぎた。
ケンシの魔法は、長距離からの精密射撃が持ち味。 速射性も威力も低い。
僕も片手の短剣だけでは捌ききれない。
一瞬の隙。思考の隙。 僕の首筋へウッドスネークが飛来しくる。
避けれない!?
僕は覚悟を決める。だが、ウッドスネークの咢は宙を噛んだ。
僕の首根っこを掴んだ誰かが、そのまま後へ僕を引き倒したのだ。
すぐに、その人物が誰かわかる。 元々、2人しかいなのだから……
後衛の役割を破棄したケンシが、僕と入れ替わるように前衛に躍り出たのだ。
ケンシは帯刀してあった。最近、手に入れたと話していた剣だ。
それを抜くと同時、襲い掛かってくるウッドスネークを切り捨てていく。
両親から叩き込まれたという剣の技。 その技のキレが凄まじいものがあり、ウッドスネークの数は減って行った。
「ふぅ……」と全てのウッドスネークを倒したケンシは剣を鞘におさめ、深いため息をつく。
僕は「すまない。油断してしまった」と謝った。
ケンシは手をパタパタと仰ぐような仕草で「気にするな」と一言。
あんなにも忌み嫌っていた剣技を自ら振るい、それでいて心が乱れた様子がない。
なにか、心変わりする出来事があったらしいが、詳しくは聞いていない。
「そんな事よりもアレだ。アレ!」と地面に落ちた、ウッドスネークの亡骸を指差した。
「さっさと拾わないと、みんな待ちくたびれてしまうぜ」
ケンシの言う通りだ。僕は、地面に落ちているウッドスネークを集めて袋に入れていく。
急ぎながらも、万が一、仕留め切れていなかった場合を用心しながら……
「終わったあぁ!」
ウッドスネークの数が多すぎたので、集め終えるにも一苦労だった。
一方のケンシは、ウッドスネークの守護がなくなった樹木に登り、果実を集めていた。
「それ美味いのか?」と僕が言うと、ケンシは「まぁね」と笑いながら返した。
僕は半信半疑だった。
果実と言うと、普通は人間の手が加わった果実の味を連想するだろう。
しかし、自然に育った果実は全くの別物だ。とても食べれたものじゃない。
何か、良いアイディアでもあるのだろうか?。
そのまま、ダンジョンの下層を目指して進むと―――
僕等2人はピタリと足を止めた。
「あれは!」 「まさか!」
その魔物を見た瞬間、ゴクリと喉が鳴った。
ビックピッグ!
巨大な豚の魔物。 凶悪な風貌に対して、その味は美味。
従来は、下の階層に出現する魔物で、この階層で目撃される事は非常に珍しい。
つまり、レアものだ。
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