超迷宮奇譚伝 『このアイテムは装備できません!』
ラン家の婚活事情 その③
お、お姉たま? 流石のサヲリさんも、突然身内が登場して動揺したのだろう。
「おいおい、サヲリちゃん。お姉たまって呼ぶのは家の中だけって約束でしょ?」
……噛んだわけじゃなくて普段はそう呼んでるのか。
「ところで、こちらの殿方は誰なんだい?紹介してくれよ」
サヲリさんの姉で、女騎士は僕に意味ありげな視線を向ける。
一方のサヲリさんは「はぁ、では」と気の抜けた返事をしてから、僕の紹介を始めた。
「こちらはトーア・サクラ。ご存知の通り、私が使えていますトクラター家のご令嬢であられるアリスさまの想い人でございます。縁あって私が師事する事になりましたので……」
「なんと!あのトクラター家の!いや、見た目と違って侮れないなぁ」
見た目と違って? 若干、引っかかる表現だが……
そう思っていたら、クルリと体ごと僕の方へ向き直り、彼女は自己紹介を始めた。
「私の名前はラン・ミドリ。察しの通り、そこにいるサヲリの姉であり、この国シュットの守護者である騎士だ!」
その堂々とした自己紹介と同時に笑顔で手を差し出してきた。
どうやら、握手を望んでいるらしい。
僕がその手を握り返すと……
「え?」
グッと体を引き寄せられる。
情熱的な抱擁。……というか、硬い鎧でそれをやられると……
「痛い!痛たたたたたたッッッ!軋んでる!体が軋んでるってばよ!」
解放されたのは、たっぷり数分後だった。
「まだ、体がバラバラになったような感覚がする。大丈夫かな?僕の神経は」
「まったく、お姉た……お姉さんはやりすぎなんですよ」
そうため息交じりのサヲリさんに対してミドリさんは……
「うん、そうだね。慣れないから外でもお姉たまでいいよ」
「……」
あっ、サヲリさん。すげぇイラって顔した。
「いやぁ、しかし、君には粗相をしてしまったね!つい妹の想い人相手だと思うと熱が入ってしまって。失敬失敬」
僕とサヲリさんは同時に「はぁ?」「え?」と声を出していた。
「いや、お姉さん。サクラの想い人なのアリスさまの方で」とサヲリさんが言う。
僕も同調しようとしたが、一瞬「あれ?逆じゃねぇ?アリスさまの想い人が僕であって、僕の方は……あれ?」って混乱していた。
「いやいや、隠さなくてもわかるよ。家族なんだからね!」
!? ???
さらなる混乱が僕を襲う。
そこにサヲリさんが横腹を突いて「お姉た……いえ、お姉さんは思い込みが激しい方なんですよ」と説明してくれた。
いや、思い込みって……
どう突っ込むべきか?どうしたら誤解を解いてくれるのか?
妹であるサヲリさんに丸投げした方が良いのだろうか?
そんな事を考えていると……
「それじゃ、サクラくん 私と決闘だね」
ミドリさんは、そう言った。
……嗚呼、わかった。
この人は思い込みが激しい人じゃなく、意味のわからない人なんだ。
「おいおい、サヲリちゃん。お姉たまって呼ぶのは家の中だけって約束でしょ?」
……噛んだわけじゃなくて普段はそう呼んでるのか。
「ところで、こちらの殿方は誰なんだい?紹介してくれよ」
サヲリさんの姉で、女騎士は僕に意味ありげな視線を向ける。
一方のサヲリさんは「はぁ、では」と気の抜けた返事をしてから、僕の紹介を始めた。
「こちらはトーア・サクラ。ご存知の通り、私が使えていますトクラター家のご令嬢であられるアリスさまの想い人でございます。縁あって私が師事する事になりましたので……」
「なんと!あのトクラター家の!いや、見た目と違って侮れないなぁ」
見た目と違って? 若干、引っかかる表現だが……
そう思っていたら、クルリと体ごと僕の方へ向き直り、彼女は自己紹介を始めた。
「私の名前はラン・ミドリ。察しの通り、そこにいるサヲリの姉であり、この国シュットの守護者である騎士だ!」
その堂々とした自己紹介と同時に笑顔で手を差し出してきた。
どうやら、握手を望んでいるらしい。
僕がその手を握り返すと……
「え?」
グッと体を引き寄せられる。
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「痛い!痛たたたたたたッッッ!軋んでる!体が軋んでるってばよ!」
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「まったく、お姉た……お姉さんはやりすぎなんですよ」
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「うん、そうだね。慣れないから外でもお姉たまでいいよ」
「……」
あっ、サヲリさん。すげぇイラって顔した。
「いやぁ、しかし、君には粗相をしてしまったね!つい妹の想い人相手だと思うと熱が入ってしまって。失敬失敬」
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「いや、お姉さん。サクラの想い人なのアリスさまの方で」とサヲリさんが言う。
僕も同調しようとしたが、一瞬「あれ?逆じゃねぇ?アリスさまの想い人が僕であって、僕の方は……あれ?」って混乱していた。
「いやいや、隠さなくてもわかるよ。家族なんだからね!」
!? ???
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いや、思い込みって……
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妹であるサヲリさんに丸投げした方が良いのだろうか?
そんな事を考えていると……
「それじゃ、サクラくん 私と決闘だね」
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……嗚呼、わかった。
この人は思い込みが激しい人じゃなく、意味のわからない人なんだ。
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