影が薄いけど魔法使いやっています
第23話月光下の再会
その後はデルーテと僕達の戦いがまるで無かったかのように、淡々と事は進んでいった。
セレナ達と合流した後は、あの青髪の人の言う通りに、観光客など多くの人を安全な場所に移動させ、僕達四人は避難した人達の安全確保のために、魔王軍の襲撃に備えて周囲を警備。
しかし、
「何も起きなかったわね」
「まあそれはいい事なんだけど」
まるで魔王軍の襲撃など無かったかのように、何も起きなかった。ましてやデルーテのも攻撃による二次的被害も起こらず、安全が確認されたのち水神祭は再開。
残された時間を僕達は堪能し、大盛況の内フュリーナ水神祭は幕を閉じた。
「どうしたのユウマ、浮かない顔をして。折角の後夜祭なのに、楽しまないと」
そして後夜祭。僕は一人離れた場所で、祭の様子を眺めていると、セレナが食べ物を持ちながら僕の元にやって来た。
「それは分かっているんだけど、ちょっと色々あって」
「そういえば合流する前に、何かあった様子だったけど、何かあったの?」
「アリスと一緒に、四将星の一人と戦ったんだ」
「え!? 四将星と」
驚きの声を上げるセレナ。
細かな説明を受けていない僕は、まず四将星がどれほどのレベルなのか把握していなかった。他から見れば無謀とも取れる戦い。僕はそれに挑みいとも簡単に敗れた。
「まさかこんな場所に四将星の一人が現れるなんて。アリスもユウマもよく無事だったね」
「無事じゃなかったよ」
「え?」
「本当は僕が死んでいてもおかしくなかった」
僕はデルーテとの戦いを細かく説明する。一度は攻撃を防いだものの、傷を与えられなかった事。殺される直前で青髪の騎士に助けられた事。
「青髪の騎士? それって私が普段身につけている鎧を纏った女の子じゃなかった?」
「うん、そうだけど」
「なるほど。だから私達無事だったんだ」
「え? どういう事?」
「それは私が王国直属の騎士団の団長だからですよ、魔法使いさん」
僕とセレスの会話に誰かが割って入ってくる。その声は、先程僕を助けてくれた人のものだった。
「どうやら無事だったようですね、良かったです」
「あ、えっと、先程は助けてくださりありがとうございました!」
「いえ、あれも騎士団長としての務めですから」
「騎士団長?」
僕は聞き慣れない言葉にクエスチョンマークを浮かべる。格好からして騎士の人かなとは思っていたけど、本当にあるんだ騎士団。
「もしかして私をご存知じゃないのですか?」
「あ、え、えっと、すいません。僕まだ冒険者になったばかりでそういうのとは無縁だったもので」
「そうだとしても知っていてほしいものですが。私はソルディア王国騎士団、団長のフェルナと申します。以後お見知りおきを」
「え、えっと僕は冒険者で魔法使いのユウマです。先程は本当にありがとうございました」
僕は改めて頭を下げる。
「そういえばあなたの隣にいた方はどこかへ行かれましたが、どこへ行ったのでしょうか」
「え?」
フェルナに言われて、つい先程まで話していたセレナの姿が見当たらない事に気がつく。アリス辺りに呼ばれてどこかへ行ってしまったのだろうか。
「先程隣にいた方は、ユウマさんのお仲間ですか?」
「はい。まだ組んで一ヶ月しか経っていませんが」
「ではデルーテとの戦いの時にいた人形使いの子も?」
「はい。それともう一人います」
「お仲間に恵まれているんですね、羨ましいです」
「羨ましいだなんてそんな」
騎士団長に言われると少しだけ恥ずかしくなる。でも恵まれていると言われれば、恵まれているのかもしれない。
僕は一度死んでこの異世界にやって来ている。そして仲間にも恵まれた。他の人から見ればそれは羨ましいのかも……しれない。
「あ、そういえばユウマさんには実は自己紹介をしたかったのとは別に、お話がしたいことがあったんです」
「話? 何ですか?」
「実はあなたには近いうちに、ソルディア王国の王女様に謁見していただきたいのです」
「お、王女様に」
『謁見?!』
僕の声に合わせるかのように、何故か女神様の声がする。何で神様が驚いているんだよ……。
「デルーテに勇敢にも挑んだあなたを王女様に御報告したら、是非ともお会いしたいと」
「いや、勇敢って別に僕は……」
しかも敗北しているわけだし、誇れるような事はしていない。というかあれから数時間程度しか経っていないのに、いつ報告したのだろうか。
「ご謙遜ならないでください。あなたは伝統であるフュリーナ水神祭を盛り上げ、都を守ろうとしました。それに先日はあの狂戦士を倒したとも聞いています。ですから是非」
「そ、そこまで頼まれるなら」
こちらも断りにくい。向こうがその気ならば、僕もその好意に甘えよう。
「是非ユウマさんのパーティの方々もご一緒に来てください。日程についてはおいおいギルドを通してご連絡しますので、私はこれで」
そう言い残してフェルナは僕の元を去る。結局断る事もできずに、一方的に決まってしまった。
(僕そんな器の人間じゃないのに……)
どうなってるんだこの世界は。
『こんな男に王女様が会いたいだなんて、随分と変わり者ね』
「うるさい!」
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「王女様が」
「私達に」
「会いたい?」
後夜祭も終わり、宿へと戻った僕は先程の話を三人に話した。案の定とでも言うべきか、三人はかなり驚いている。
「そ、それ本当なの? いつ?」
「詳しくはギルドを通して連絡するってさ」
「ソルディア王国、この世界でも唯一の大都市だって聞いたことがあるけど、まさかそこの王女様が」
「私人形劇の練習しないと」
「アリスは王女様の前で何するつもりなの?!」
子供が号泣していたあの出し物を王女様の前なんかで披露したら、下手したら打ち首になりかねない。それだけは注意しておかないと。
「でもそれって本当なの?」
「あの騎士団長が言っていたんだから、本当だと思う」
「へえ、あの子騎士団長になっていたんだ……」
そう呟くセレナ。そういえば一つ気になっている事がある。
「ねえセレナ、さっきはどうしていつの間にいなくなってたの? フェルナさんも挨拶したがってたのに」
「え、あ、それはちょっと用事が出来て」
「用事?」
てっきりアリスに呼ばれたと思っていたけど、どうにもそうではないらしい。
「べ、別にいいでしょ! 私だって用事の一つや二つあるんだから」
「そんな怒らなくても」
どこか焦った様子のセレナに、僕は尚更疑ってしまう。でも彼女は答える気はなさそうだし、聞かないほうがいいのかもしれない。
「そ、それより明日早くに此処を出るんだし、そろそろ寝るわよ」
そしてそれを誤魔化す様にセレナは布団に潜り込んでしまう。彼女の言う通り明日の朝にはフュリーナを出発する予定なので、早く寝なければいけないのは確かなんだけど……。
「セレナ、すごく不自然」
「すごく動揺していたけど、私達が聞くべきじゃないのかな」
「うん。きっと答えてくれないと思う」
そのあまりの不自然さに僕達三人は、セレナの事が気になってすぐには眠れなかった。でも祭の疲れがたまっていたせいか、気がつけば眠りについていた。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「どうしてあなたがここにいるんですか?」
月明かりの下、まるでやって来るのを待っていたかのように彼女は立っていた。
「挨拶くらいさせてよ」
「さっきは逃げ出したくせによく言えますね」
「それは……」
「まさかまだこの世にいるとは思いませんでしたが、未練でもあるんですか?」
「未練なら……ある」
未練がなければ私はこの場所には立っていない。それを承知の上で彼女はそう言っているのだろう。
彼女は私の唯一の理解者で、唯一の親友。ずっとそう思っていた。
「その未練の原因は、やはりあれなんですか?」
「まあ、そうなるかな」
「その事ならもう気にしていないって言っているじゃないですか。あなたがここにいるせいで、皆苦しんでいるのを分かっていますよね?」
「そんな事分かっている! でも、それでも私は」
この世界からはまだ去りたくない。新しい仲間もできて、守りたいものも見つけた。だから迷惑であっても、呪いだと言われてもいい。それでも私は……。
「王女様はきっと驚かれると思いますよ。あの方はまだあなたがこの世界に居続けている事を知らないんですから、セレナ先輩」
「それならどうして、私を会わせるつもりなの?」
「勘違いしないでください、あくまで王女様が会いたがっているのはユウマさんです」
「……」
私は黙ってしまう。どうして王女様がそこまでユウマに会いたがっているのか分からない。彼はまだ冒険者として一ヶ月しか経っていないのに、それなのにどうして……。
「何故会いたがっているか、気になりますか?」
「ええ」
「なら教えてあげます。王女様が会いたがっている本当の理由は」
フェルナはその後あくまでシンプルにその理由を教えてくれた。だけどそのシンプルな理由は、とても重いもので……。
「それ本気で言っているの? だとしたら」
「何か問題がありますか? 彼の力を見て私が判断したんですよ」
「そんなの重すぎる。彼にはそこまでの力は」
「彼の持つ光の魔法。その力は確実にこの世界に光をもたらしてくれます。その為なら彼も分かってくれますよ。そしてきっと彼女も」
「彼女?」
私の疑問にフェルナは何も答えず、私の背を向けて歩き出す。
「人一人とこの世界、どちらが大切なのか考えてみてください。それでも行かせる気がないならそれでも構いません、とにかく次に会う日を楽しみにしています先輩」
そして最後にフェルナはそう言い残して、その場を去っていった。
ソルディア王国騎士団団長 フェルナ
彼女は決して悪い子ではない。昔からとても純粋な子で、周りからも評判が高かった。でも何故だろうか、今の彼女はまるで……。
(これも私のせい、なのかな)
そう考えるととても心が重くて苦しくなってしまい、私はすぐには眠りにつけなかった。
(ユウマ、あなたはこの後突きつけられる選択肢、どう選ぶつもりなの?)
私はどうしてもそれを止めたい。だけど何が大切なのかを考えた時それはエゴに過ぎないと実感してしまう。だからこそ、私は彼を信じたい。
彼が正しい選択をする事を。
セレナ達と合流した後は、あの青髪の人の言う通りに、観光客など多くの人を安全な場所に移動させ、僕達四人は避難した人達の安全確保のために、魔王軍の襲撃に備えて周囲を警備。
しかし、
「何も起きなかったわね」
「まあそれはいい事なんだけど」
まるで魔王軍の襲撃など無かったかのように、何も起きなかった。ましてやデルーテのも攻撃による二次的被害も起こらず、安全が確認されたのち水神祭は再開。
残された時間を僕達は堪能し、大盛況の内フュリーナ水神祭は幕を閉じた。
「どうしたのユウマ、浮かない顔をして。折角の後夜祭なのに、楽しまないと」
そして後夜祭。僕は一人離れた場所で、祭の様子を眺めていると、セレナが食べ物を持ちながら僕の元にやって来た。
「それは分かっているんだけど、ちょっと色々あって」
「そういえば合流する前に、何かあった様子だったけど、何かあったの?」
「アリスと一緒に、四将星の一人と戦ったんだ」
「え!? 四将星と」
驚きの声を上げるセレナ。
細かな説明を受けていない僕は、まず四将星がどれほどのレベルなのか把握していなかった。他から見れば無謀とも取れる戦い。僕はそれに挑みいとも簡単に敗れた。
「まさかこんな場所に四将星の一人が現れるなんて。アリスもユウマもよく無事だったね」
「無事じゃなかったよ」
「え?」
「本当は僕が死んでいてもおかしくなかった」
僕はデルーテとの戦いを細かく説明する。一度は攻撃を防いだものの、傷を与えられなかった事。殺される直前で青髪の騎士に助けられた事。
「青髪の騎士? それって私が普段身につけている鎧を纏った女の子じゃなかった?」
「うん、そうだけど」
「なるほど。だから私達無事だったんだ」
「え? どういう事?」
「それは私が王国直属の騎士団の団長だからですよ、魔法使いさん」
僕とセレスの会話に誰かが割って入ってくる。その声は、先程僕を助けてくれた人のものだった。
「どうやら無事だったようですね、良かったです」
「あ、えっと、先程は助けてくださりありがとうございました!」
「いえ、あれも騎士団長としての務めですから」
「騎士団長?」
僕は聞き慣れない言葉にクエスチョンマークを浮かべる。格好からして騎士の人かなとは思っていたけど、本当にあるんだ騎士団。
「もしかして私をご存知じゃないのですか?」
「あ、え、えっと、すいません。僕まだ冒険者になったばかりでそういうのとは無縁だったもので」
「そうだとしても知っていてほしいものですが。私はソルディア王国騎士団、団長のフェルナと申します。以後お見知りおきを」
「え、えっと僕は冒険者で魔法使いのユウマです。先程は本当にありがとうございました」
僕は改めて頭を下げる。
「そういえばあなたの隣にいた方はどこかへ行かれましたが、どこへ行ったのでしょうか」
「え?」
フェルナに言われて、つい先程まで話していたセレナの姿が見当たらない事に気がつく。アリス辺りに呼ばれてどこかへ行ってしまったのだろうか。
「先程隣にいた方は、ユウマさんのお仲間ですか?」
「はい。まだ組んで一ヶ月しか経っていませんが」
「ではデルーテとの戦いの時にいた人形使いの子も?」
「はい。それともう一人います」
「お仲間に恵まれているんですね、羨ましいです」
「羨ましいだなんてそんな」
騎士団長に言われると少しだけ恥ずかしくなる。でも恵まれていると言われれば、恵まれているのかもしれない。
僕は一度死んでこの異世界にやって来ている。そして仲間にも恵まれた。他の人から見ればそれは羨ましいのかも……しれない。
「あ、そういえばユウマさんには実は自己紹介をしたかったのとは別に、お話がしたいことがあったんです」
「話? 何ですか?」
「実はあなたには近いうちに、ソルディア王国の王女様に謁見していただきたいのです」
「お、王女様に」
『謁見?!』
僕の声に合わせるかのように、何故か女神様の声がする。何で神様が驚いているんだよ……。
「デルーテに勇敢にも挑んだあなたを王女様に御報告したら、是非ともお会いしたいと」
「いや、勇敢って別に僕は……」
しかも敗北しているわけだし、誇れるような事はしていない。というかあれから数時間程度しか経っていないのに、いつ報告したのだろうか。
「ご謙遜ならないでください。あなたは伝統であるフュリーナ水神祭を盛り上げ、都を守ろうとしました。それに先日はあの狂戦士を倒したとも聞いています。ですから是非」
「そ、そこまで頼まれるなら」
こちらも断りにくい。向こうがその気ならば、僕もその好意に甘えよう。
「是非ユウマさんのパーティの方々もご一緒に来てください。日程についてはおいおいギルドを通してご連絡しますので、私はこれで」
そう言い残してフェルナは僕の元を去る。結局断る事もできずに、一方的に決まってしまった。
(僕そんな器の人間じゃないのに……)
どうなってるんだこの世界は。
『こんな男に王女様が会いたいだなんて、随分と変わり者ね』
「うるさい!」
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「王女様が」
「私達に」
「会いたい?」
後夜祭も終わり、宿へと戻った僕は先程の話を三人に話した。案の定とでも言うべきか、三人はかなり驚いている。
「そ、それ本当なの? いつ?」
「詳しくはギルドを通して連絡するってさ」
「ソルディア王国、この世界でも唯一の大都市だって聞いたことがあるけど、まさかそこの王女様が」
「私人形劇の練習しないと」
「アリスは王女様の前で何するつもりなの?!」
子供が号泣していたあの出し物を王女様の前なんかで披露したら、下手したら打ち首になりかねない。それだけは注意しておかないと。
「でもそれって本当なの?」
「あの騎士団長が言っていたんだから、本当だと思う」
「へえ、あの子騎士団長になっていたんだ……」
そう呟くセレナ。そういえば一つ気になっている事がある。
「ねえセレナ、さっきはどうしていつの間にいなくなってたの? フェルナさんも挨拶したがってたのに」
「え、あ、それはちょっと用事が出来て」
「用事?」
てっきりアリスに呼ばれたと思っていたけど、どうにもそうではないらしい。
「べ、別にいいでしょ! 私だって用事の一つや二つあるんだから」
「そんな怒らなくても」
どこか焦った様子のセレナに、僕は尚更疑ってしまう。でも彼女は答える気はなさそうだし、聞かないほうがいいのかもしれない。
「そ、それより明日早くに此処を出るんだし、そろそろ寝るわよ」
そしてそれを誤魔化す様にセレナは布団に潜り込んでしまう。彼女の言う通り明日の朝にはフュリーナを出発する予定なので、早く寝なければいけないのは確かなんだけど……。
「セレナ、すごく不自然」
「すごく動揺していたけど、私達が聞くべきじゃないのかな」
「うん。きっと答えてくれないと思う」
そのあまりの不自然さに僕達三人は、セレナの事が気になってすぐには眠れなかった。でも祭の疲れがたまっていたせいか、気がつけば眠りについていた。
︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎
「どうしてあなたがここにいるんですか?」
月明かりの下、まるでやって来るのを待っていたかのように彼女は立っていた。
「挨拶くらいさせてよ」
「さっきは逃げ出したくせによく言えますね」
「それは……」
「まさかまだこの世にいるとは思いませんでしたが、未練でもあるんですか?」
「未練なら……ある」
未練がなければ私はこの場所には立っていない。それを承知の上で彼女はそう言っているのだろう。
彼女は私の唯一の理解者で、唯一の親友。ずっとそう思っていた。
「その未練の原因は、やはりあれなんですか?」
「まあ、そうなるかな」
「その事ならもう気にしていないって言っているじゃないですか。あなたがここにいるせいで、皆苦しんでいるのを分かっていますよね?」
「そんな事分かっている! でも、それでも私は」
この世界からはまだ去りたくない。新しい仲間もできて、守りたいものも見つけた。だから迷惑であっても、呪いだと言われてもいい。それでも私は……。
「王女様はきっと驚かれると思いますよ。あの方はまだあなたがこの世界に居続けている事を知らないんですから、セレナ先輩」
「それならどうして、私を会わせるつもりなの?」
「勘違いしないでください、あくまで王女様が会いたがっているのはユウマさんです」
「……」
私は黙ってしまう。どうして王女様がそこまでユウマに会いたがっているのか分からない。彼はまだ冒険者として一ヶ月しか経っていないのに、それなのにどうして……。
「何故会いたがっているか、気になりますか?」
「ええ」
「なら教えてあげます。王女様が会いたがっている本当の理由は」
フェルナはその後あくまでシンプルにその理由を教えてくれた。だけどそのシンプルな理由は、とても重いもので……。
「それ本気で言っているの? だとしたら」
「何か問題がありますか? 彼の力を見て私が判断したんですよ」
「そんなの重すぎる。彼にはそこまでの力は」
「彼の持つ光の魔法。その力は確実にこの世界に光をもたらしてくれます。その為なら彼も分かってくれますよ。そしてきっと彼女も」
「彼女?」
私の疑問にフェルナは何も答えず、私の背を向けて歩き出す。
「人一人とこの世界、どちらが大切なのか考えてみてください。それでも行かせる気がないならそれでも構いません、とにかく次に会う日を楽しみにしています先輩」
そして最後にフェルナはそう言い残して、その場を去っていった。
ソルディア王国騎士団団長 フェルナ
彼女は決して悪い子ではない。昔からとても純粋な子で、周りからも評判が高かった。でも何故だろうか、今の彼女はまるで……。
(これも私のせい、なのかな)
そう考えるととても心が重くて苦しくなってしまい、私はすぐには眠りにつけなかった。
(ユウマ、あなたはこの後突きつけられる選択肢、どう選ぶつもりなの?)
私はどうしてもそれを止めたい。だけど何が大切なのかを考えた時それはエゴに過ぎないと実感してしまう。だからこそ、私は彼を信じたい。
彼が正しい選択をする事を。
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