影が薄いけど魔法使いやっています
第19話フュリーナ水神祭 準備編②
三日後という限られた時間な事もあり、僕達の祭りの準備は気がつけば空に朝日が昇りそうな時間まで続いていた。
「あれ……ユウマ? 私いつの間に寝ちゃって」
「おはようセリーナ。と言ってもまだ夜明けてないけどね」
皆がすっかり寝静まって、僕一人で黙々と作業していると、一番最初に眠ってしまったセレナが起きてきた。
「他の皆は?」
「アリスはセレナが寝た後すぐに寝ちゃったし、ハルカもさっき」
「ユウマは寝なくて平気なの?」
「僕はまあ、こういうのは慣れているから」
「それでもあまり無理はしないでね」
「分かっているよ」
寝なきゃいけないことは僕自身も理解していた。けど、眠れなかった。
初めて自分が皆の前に立ってする大きな仕事だったからだ。
今まで影の薄いことが取り柄(とも言えないけど)だった僕が、この大きな祭りを盛り上げるために取り仕切っている。こんなの僕の人生の中で一度もない事だと思っていたのに、まさか異世界で叶う日が来るなんて考えてもいなかった。
(緊張もしていると同時に、興奮もしているんだろうな僕)
この祭、絶対に失敗したくない。
「ねえユウマ」
「ん?」
「あれからユウマ、私の事聞いてこないよね。どうして?」
そんな事を作業の傍らで考えていると、セレナが僕の作業をずっと眺めながらそんな事を言ってきた。彼女の事といえば、恐らく先日僕に明かしてくれた事だとは思うけど、その彼女の疑問に対しての答えを僕は持っていなかった。
「どうしてって、僕はあれが全部なのかなって思っただけだし、それに聞いたとしても話す気はないでしょ、セレナ」
「話す気がないわけではないけど。でもあまり話したくない事かな」
「それは、まあ、そうだよね。自分が既に死人だなんて」
「ユウマだって信じられないでしょ?」
「普通だったらそうかな。僕達まだ出会ってそんなに長くないし」
「やっぱりそうなるよね……」
「でも僕は、セレナが言ったことは全部本当だって思っているよ」
「……え? 私を信じてくれるの?」
「少なくとも僕は信じているよ」
その言葉は果たして僕の中のどこから生まれてきているものか分からないけど、セレナを信じないという選択肢は僕の中にはなかった。
確かに難しい話ではあるのだけれど、きっとそこには何かしらの理由があると僕は思っている。
「ありがとう、信じてくれて」
「お礼を言われるほどでもないよ。これでもまだ驚いているんだから」
「いつまで驚いているつもりよ馬鹿」
セリーナにからかわれながらも、僕は作業を続ける。そして気がつけば空に朝日が昇っていた。
「おはようセレナ」
「おはようございます」
「おはよう二人とも」
「あれ、ユウマは?」
「そこよ、そこ」
「え? ああ、寝ちゃったの?」
「ついさっきまで頑張ってたのよ。時間がないし頑張らないとって」
「ユウマ、意外と頑張り屋」
「意外とは余計だと思うわよ、アリス」
朝日が昇ると同時に、力尽きてしまった僕は作業道具を持ったまま眠ってしまっていた。
「セレナはいつから起きてたの?」
「私もさっき起きたばかり。だからユウマは一人でずっと頑張ってたから、少し休ませてあげましょう」
「イタズラしちゃダメ?」
「何でそういう発想になるのよ。あんたはユウマに対してツンなのかデレなのか本当分かりにくいわね」
「ユウマは私のオモチャ」
「ごめん、やっぱり前言撤回。アリスがデレる事なんてないわね」
■□■□■□
僕が再び目を覚ましたのは、午後三時を回った頃。セレナがわざわざ起こしに来てくれたのがキッカケだった。
「まだ眠いんだけど僕」
「朝まで作業していたとはいえ、このままだと一日中寝てしまいかねないから起こしたんだけど、永遠に眠らせてあげた方がよかった?」
「冗談だから冗談」
何はともあれ準備再開。
「ところでさ僕の顔にあるこの落書きは何?」
「さあ? アリスがイタズラでもしたんじゃないかしら」
「セレナがやったんだね」
「ど、どうして分かるのよ!?」
「やっぱりそうだったんだ」
「あ」
どうやらセレナにはこの祭が終わったら、お仕置きが必要らしい。
「私も手伝った」
「自白してくれるのは嬉しいけど、アリスも後でお仕置きだからね」
お仕置き一名追加されました。
「さてと、今はその話は置いておくとして、僕が寝ている間にどのくらい進んだの?」
「ユウマが言っていた屋台とかタイコとかは準備できたみたい。私がさっき確認したの」
そう答えたのはハルカだった。昨日からそうだったけど、ハルカはこの祭に結構積極的に手伝ってくれている。勿論他の二人もそうなんだけど、ハルカはそれ以上に力を入れているような気がする。
「そっか、ありがとうハルカ。確認しておいてくれて」
「べ、別にたまたま聞いただけよ。それに皆で手伝って成功させるんでしょ?」
「まあそうだけど。どうしてそんなに顔真っ赤にしているの?」
ただ褒めただけなのに、顔を真っ赤にしたハルカに疑問符を浮かべてしまう。
「それ本気で言っているなら私ユウマの将来が心配なんだけど」
「私も」
「な、何だよ二人して」
僕何かおかしな事言った?
「あれ……ユウマ? 私いつの間に寝ちゃって」
「おはようセリーナ。と言ってもまだ夜明けてないけどね」
皆がすっかり寝静まって、僕一人で黙々と作業していると、一番最初に眠ってしまったセレナが起きてきた。
「他の皆は?」
「アリスはセレナが寝た後すぐに寝ちゃったし、ハルカもさっき」
「ユウマは寝なくて平気なの?」
「僕はまあ、こういうのは慣れているから」
「それでもあまり無理はしないでね」
「分かっているよ」
寝なきゃいけないことは僕自身も理解していた。けど、眠れなかった。
初めて自分が皆の前に立ってする大きな仕事だったからだ。
今まで影の薄いことが取り柄(とも言えないけど)だった僕が、この大きな祭りを盛り上げるために取り仕切っている。こんなの僕の人生の中で一度もない事だと思っていたのに、まさか異世界で叶う日が来るなんて考えてもいなかった。
(緊張もしていると同時に、興奮もしているんだろうな僕)
この祭、絶対に失敗したくない。
「ねえユウマ」
「ん?」
「あれからユウマ、私の事聞いてこないよね。どうして?」
そんな事を作業の傍らで考えていると、セレナが僕の作業をずっと眺めながらそんな事を言ってきた。彼女の事といえば、恐らく先日僕に明かしてくれた事だとは思うけど、その彼女の疑問に対しての答えを僕は持っていなかった。
「どうしてって、僕はあれが全部なのかなって思っただけだし、それに聞いたとしても話す気はないでしょ、セレナ」
「話す気がないわけではないけど。でもあまり話したくない事かな」
「それは、まあ、そうだよね。自分が既に死人だなんて」
「ユウマだって信じられないでしょ?」
「普通だったらそうかな。僕達まだ出会ってそんなに長くないし」
「やっぱりそうなるよね……」
「でも僕は、セレナが言ったことは全部本当だって思っているよ」
「……え? 私を信じてくれるの?」
「少なくとも僕は信じているよ」
その言葉は果たして僕の中のどこから生まれてきているものか分からないけど、セレナを信じないという選択肢は僕の中にはなかった。
確かに難しい話ではあるのだけれど、きっとそこには何かしらの理由があると僕は思っている。
「ありがとう、信じてくれて」
「お礼を言われるほどでもないよ。これでもまだ驚いているんだから」
「いつまで驚いているつもりよ馬鹿」
セリーナにからかわれながらも、僕は作業を続ける。そして気がつけば空に朝日が昇っていた。
「おはようセレナ」
「おはようございます」
「おはよう二人とも」
「あれ、ユウマは?」
「そこよ、そこ」
「え? ああ、寝ちゃったの?」
「ついさっきまで頑張ってたのよ。時間がないし頑張らないとって」
「ユウマ、意外と頑張り屋」
「意外とは余計だと思うわよ、アリス」
朝日が昇ると同時に、力尽きてしまった僕は作業道具を持ったまま眠ってしまっていた。
「セレナはいつから起きてたの?」
「私もさっき起きたばかり。だからユウマは一人でずっと頑張ってたから、少し休ませてあげましょう」
「イタズラしちゃダメ?」
「何でそういう発想になるのよ。あんたはユウマに対してツンなのかデレなのか本当分かりにくいわね」
「ユウマは私のオモチャ」
「ごめん、やっぱり前言撤回。アリスがデレる事なんてないわね」
■□■□■□
僕が再び目を覚ましたのは、午後三時を回った頃。セレナがわざわざ起こしに来てくれたのがキッカケだった。
「まだ眠いんだけど僕」
「朝まで作業していたとはいえ、このままだと一日中寝てしまいかねないから起こしたんだけど、永遠に眠らせてあげた方がよかった?」
「冗談だから冗談」
何はともあれ準備再開。
「ところでさ僕の顔にあるこの落書きは何?」
「さあ? アリスがイタズラでもしたんじゃないかしら」
「セレナがやったんだね」
「ど、どうして分かるのよ!?」
「やっぱりそうだったんだ」
「あ」
どうやらセレナにはこの祭が終わったら、お仕置きが必要らしい。
「私も手伝った」
「自白してくれるのは嬉しいけど、アリスも後でお仕置きだからね」
お仕置き一名追加されました。
「さてと、今はその話は置いておくとして、僕が寝ている間にどのくらい進んだの?」
「ユウマが言っていた屋台とかタイコとかは準備できたみたい。私がさっき確認したの」
そう答えたのはハルカだった。昨日からそうだったけど、ハルカはこの祭に結構積極的に手伝ってくれている。勿論他の二人もそうなんだけど、ハルカはそれ以上に力を入れているような気がする。
「そっか、ありがとうハルカ。確認しておいてくれて」
「べ、別にたまたま聞いただけよ。それに皆で手伝って成功させるんでしょ?」
「まあそうだけど。どうしてそんなに顔真っ赤にしているの?」
ただ褒めただけなのに、顔を真っ赤にしたハルカに疑問符を浮かべてしまう。
「それ本気で言っているなら私ユウマの将来が心配なんだけど」
「私も」
「な、何だよ二人して」
僕何かおかしな事言った?
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