運命(さだめ)の迷宮
ちなみに現在、小型犬を飼いたいです。切実に!!
所で、この頃、飛行機の発着場まで連れていって貰っていた咲夜は、仲良くなった亮の妹の珠樹と琉璃、男装の美女ではあるのだが素はちょっとボケの月季と、姉の百合の5人で一緒に何かを作成中である。
遼も、
「手先が器用だし手伝おうか?」
と言ったのだが、断られた。
ガッカリ……
素直に落ち込んだ遼に、儁乂が呆れる。
「おい、おっさんが、可愛い子達に紛れ込むな。それすらすでに犯罪だ!!」
「咲夜と……」
「こらぁ!!聞きやがれ!!」
儁乂の妻の麗は、大ファンの瑠璃に会い目をうるうるさせているのだが、瑠璃は瑠璃で、アスリートの麗を何故か女子高の後輩が先輩を慕うように、目をキラキラさせている。
「それよりあっちって……」
「あ、あぁ、光来瑠璃様は、元々自分よりも強い人や、可愛いものに目がなくて、特にぬいぐるみやテディベアが大好きで、良く注文と言うよりも『お願いします~!!』と言われて作ったことがある」
「お前、何気にすげぇな……」
「いや、あの方の表現力や感性が素晴らしい。こういう感じにと言うのがとても良く伝わる。ありがたい」
瑠璃は見た目はとても他を寄せ付けない美貌のオペラ歌手であり、モデルであるのだが、本性は、愛らしいものが大好きな少女のような可愛らしい女性である。
麗も最初はビックリしたものの、自分も同じ女性であり、いくらアスリートでも可愛いものをもって何が悪いと、時々遼にテディベアを作って欲しいとお願いするようになった。
麗は、特にファンや応援してくれる人を、素直にお礼を言う。
特別なファンにはサインをするときに、自分のテディベアにキスをして、ファンに贈る。
「ありがとうございます!!皆さんのお陰で私も頑張れます。このテディベアと一緒に応援してください!!」
これでイチコロである。
男女問わずファンにするので、夫の儁乂も少々心に余裕がないが、麗は、
「ぎゅっとか抱きつかれるのって嫌でしょう?それとか余計に大騒ぎとか。それよりも私の分身です!!ってテディベアをプレゼントって良いでしょう?それとも、女の子や、突進してくるあのファンたちにしてもいいの?」
「それはやめろ!!切実に!!」
「でも、嬉しいわ!!だって、諸岡先輩方にもお会いできるなんて最高!!嬉しいわ!!リハビリと共に、トレーニングも教えていただけそうだもの!!」
「あぁ……あの狼姉妹な……」
遠い目をすると、国に戻ってすぐに行われる式典に出席予定の亮が、内容確認をしつつ、発声の練習のために、ストレッチを始めながら、
「あぁ、麗さん。すみません。姉二人ですが、まだ正式に発表はしていませんが、妊娠中です。下の姉の晶瑩は、特につわりがひどいようでかなり激やせしています」
「えぇぇ!!そうなんですか?」
「はい、元々あの姉たちも子供好きですので子供が欲しかったのですが、義兄が忙しいのと、姉たちも競技に専念すると言っていたのですが、これ以上になると特に、晶瑩姉上が妊娠に支障が出ると」
「も、もしかして……あの事件?」
険しい顔になる麗と儁乂、遼。
5年前、琉璃が春の国の公女であることが発覚し、春の国に戻ってすぐに、『琉璃を公女と認めない』と言う、春の国以外の国の暗殺者に襲われたのだ。
ちなみに、北の国とはロウディーン公主と北の王がいとこ同士であり、琉璃の姿を見て、即座に認めたのだが……。
その時に咄嗟にかばったのが晶瑩で、その為に大ケガをし、片方の卵巣を摘出した。
卵巣にあった卵子の細胞はそのまま冷凍保存され、何かあった際の人工受精用に残されていたが、妊娠に支障が出たのは否めない。
周囲には明るく振る舞う姉が、次第に子供が生まれなくなる……愛している夫の子を生めない……とうつに近い状態になったため、亮たちは、姉夫婦を新婚旅行にもう一度行ってきてください!!と追い出したのは2月前である。
今では、鬱は吹っ飛び、
「わぁぁん!!亮!!大好きな、大好きな肉料理が食べられないのよぉぉ!!気持ち悪い~!!」
「痩せるからいいでしょ!!私なんて、食べて食べて、これじゃぁ太りすぎよ~!!」
と姉妹喧嘩も戻ってきた。
本当に嬉しい限りである。
「兄には、子育て禁止令を奨励してますが、姉たちは楽しんで子育てをするでしょう。良かったです」
「本当!!お二人が楽しそうに笑うのを見るのが素敵だわ!!」
「なので、今度、発表と、新入生の紹介を兼ねたミニコンサートをするんです。それで……」
示すと、
「出来ました!!珠樹お姉さま。こんな感じですか?」
「えぇぇぇ!!何で!!そんなに上手なの!?」
珠樹の言葉に、咲夜は、
「あの……小さい頃から、繕いとか、自分のことは自分でだったのです。それに、教えてもらったのです!!」
えへへ……
照れ笑いながら、遼を見る。
「あの、遼様のブルーのベアちゃんは、私が作ったんです」
「えぇぇぇ!!」
4人は驚く。
「ちょ、ちょっと待ってくれないか?衣冠束帯揃えている……雛人形ではないのか?」
「えっと……」
こそこそっと車イスのバッグから取り出したのは、十二単の淡いピンクのベアである。
「遼様が作ってくれました。私は下手なのに、とっても喜んでくれたんです」
「あぁぁ!!これって、もしかして、麗選手のご実家の?」
「はい、加賀友禅の古い着物のはしを頂いたんです。すごくすごく……嬉しいです。お人形は、妹たちに簡単な古着をくるんだ人形を……このベアを見たら、きっと喜ぶと思います。綺麗って」
「咲夜姉上は優しいな……」
一番年の若い、しかし天才である少年服の少女が呟く。
9才だが本当に考え方が大人である。
「妹さんは本当に幸せだ。弟さんもだが」
「月季ちゃんも兄弟というよりも私の親友です。仲良くしてくださいね」
にこっと笑う咲夜の無意識のタラシの笑顔に、次々と落ちていく……。
「あぁぁ!!あれだから嫌なの!!咲夜は、自分が解ってないんだ!!あんな風に笑われたら、堕ちる!!」
嘆く遼をよそに、4人は、
「じゃぁ、珠樹姉さんがリーダーで、『琉璃と咲夜と月季を愛でる会』発足!!私は、前から何度か月季見てたけど本当に美少年よねぇ!!」
「本当!!咲夜も、時々考え方が少年ぽくなるけれど、月季も動きが自然だわ~。こんな美少年見たことないわぁって!!」
「あ、でも、彰君も美少年よね!!私は、彰くん大好きだわ!!」
百合の声に、彰と囲碁盤に向き合っていた景虎が、
「なぬ!?酷いではないか!!私がそんなに不細工でも言いたいのか!?」
頬を膨らませ訴える。
「不細工じゃないけど、ずっと見てるから普通。彰くんは、年のわりに笑顔が素敵だし、首相の孫って言っても自分のことを自慢したりしないじゃない。景虎は、責任があって頑張っているから許せるけど、許せない馬鹿っているわよね」
「あぁ、あれな」
ちらっと見るのは、亮の甥の格と苛められている喬である。
喬はすでに亮の息子であるが、春の国の学院の学長の息子と言う身分をかさに苛めているらしい。
よたよたと、ぎこちない動きで車イスを動かした咲夜は、格の首をつかむと、ずるずると引きずりつつ、車イスを動かす。
「何をする!!」
「従兄弟を苛める馬鹿はいらない!!今すぐ、出ていけ!!」
「なんだとぉ!!僕を!!」
「お父さんが偉くとも、君が偉い訳じゃないだろう!!自慢なら、自分が偉くなってから言えばいいだろう!!それと、次に言ったら、げんこつ!!僕のげんこつは特別いたいからね!!それとも頭突き?どっちがいい?」
咲夜の凛とした声に、
「ごめんなさい!!もうしません!!」
「よろしい!!ちゃんと謝ってから戻りなさい!!」
「はい!!」
「……全く、場所は変わっても、考えることは……わぁぁぁ!?い、いたいいたいいたい!!」
「どうした!?咲夜?」
駆けつける遼の目の前には、車イスの車輪に絡まり、見事に変形している左手。
「儁乂!!亮さん!!来てください!!それと、麗さん!!兄と祐司兄さんを!!」
左手の骨を合計5本折った咲夜は、慣れるまで、車イスも自分で操作禁止になったのだった。
遼も、
「手先が器用だし手伝おうか?」
と言ったのだが、断られた。
ガッカリ……
素直に落ち込んだ遼に、儁乂が呆れる。
「おい、おっさんが、可愛い子達に紛れ込むな。それすらすでに犯罪だ!!」
「咲夜と……」
「こらぁ!!聞きやがれ!!」
儁乂の妻の麗は、大ファンの瑠璃に会い目をうるうるさせているのだが、瑠璃は瑠璃で、アスリートの麗を何故か女子高の後輩が先輩を慕うように、目をキラキラさせている。
「それよりあっちって……」
「あ、あぁ、光来瑠璃様は、元々自分よりも強い人や、可愛いものに目がなくて、特にぬいぐるみやテディベアが大好きで、良く注文と言うよりも『お願いします~!!』と言われて作ったことがある」
「お前、何気にすげぇな……」
「いや、あの方の表現力や感性が素晴らしい。こういう感じにと言うのがとても良く伝わる。ありがたい」
瑠璃は見た目はとても他を寄せ付けない美貌のオペラ歌手であり、モデルであるのだが、本性は、愛らしいものが大好きな少女のような可愛らしい女性である。
麗も最初はビックリしたものの、自分も同じ女性であり、いくらアスリートでも可愛いものをもって何が悪いと、時々遼にテディベアを作って欲しいとお願いするようになった。
麗は、特にファンや応援してくれる人を、素直にお礼を言う。
特別なファンにはサインをするときに、自分のテディベアにキスをして、ファンに贈る。
「ありがとうございます!!皆さんのお陰で私も頑張れます。このテディベアと一緒に応援してください!!」
これでイチコロである。
男女問わずファンにするので、夫の儁乂も少々心に余裕がないが、麗は、
「ぎゅっとか抱きつかれるのって嫌でしょう?それとか余計に大騒ぎとか。それよりも私の分身です!!ってテディベアをプレゼントって良いでしょう?それとも、女の子や、突進してくるあのファンたちにしてもいいの?」
「それはやめろ!!切実に!!」
「でも、嬉しいわ!!だって、諸岡先輩方にもお会いできるなんて最高!!嬉しいわ!!リハビリと共に、トレーニングも教えていただけそうだもの!!」
「あぁ……あの狼姉妹な……」
遠い目をすると、国に戻ってすぐに行われる式典に出席予定の亮が、内容確認をしつつ、発声の練習のために、ストレッチを始めながら、
「あぁ、麗さん。すみません。姉二人ですが、まだ正式に発表はしていませんが、妊娠中です。下の姉の晶瑩は、特につわりがひどいようでかなり激やせしています」
「えぇぇ!!そうなんですか?」
「はい、元々あの姉たちも子供好きですので子供が欲しかったのですが、義兄が忙しいのと、姉たちも競技に専念すると言っていたのですが、これ以上になると特に、晶瑩姉上が妊娠に支障が出ると」
「も、もしかして……あの事件?」
険しい顔になる麗と儁乂、遼。
5年前、琉璃が春の国の公女であることが発覚し、春の国に戻ってすぐに、『琉璃を公女と認めない』と言う、春の国以外の国の暗殺者に襲われたのだ。
ちなみに、北の国とはロウディーン公主と北の王がいとこ同士であり、琉璃の姿を見て、即座に認めたのだが……。
その時に咄嗟にかばったのが晶瑩で、その為に大ケガをし、片方の卵巣を摘出した。
卵巣にあった卵子の細胞はそのまま冷凍保存され、何かあった際の人工受精用に残されていたが、妊娠に支障が出たのは否めない。
周囲には明るく振る舞う姉が、次第に子供が生まれなくなる……愛している夫の子を生めない……とうつに近い状態になったため、亮たちは、姉夫婦を新婚旅行にもう一度行ってきてください!!と追い出したのは2月前である。
今では、鬱は吹っ飛び、
「わぁぁん!!亮!!大好きな、大好きな肉料理が食べられないのよぉぉ!!気持ち悪い~!!」
「痩せるからいいでしょ!!私なんて、食べて食べて、これじゃぁ太りすぎよ~!!」
と姉妹喧嘩も戻ってきた。
本当に嬉しい限りである。
「兄には、子育て禁止令を奨励してますが、姉たちは楽しんで子育てをするでしょう。良かったです」
「本当!!お二人が楽しそうに笑うのを見るのが素敵だわ!!」
「なので、今度、発表と、新入生の紹介を兼ねたミニコンサートをするんです。それで……」
示すと、
「出来ました!!珠樹お姉さま。こんな感じですか?」
「えぇぇぇ!!何で!!そんなに上手なの!?」
珠樹の言葉に、咲夜は、
「あの……小さい頃から、繕いとか、自分のことは自分でだったのです。それに、教えてもらったのです!!」
えへへ……
照れ笑いながら、遼を見る。
「あの、遼様のブルーのベアちゃんは、私が作ったんです」
「えぇぇぇ!!」
4人は驚く。
「ちょ、ちょっと待ってくれないか?衣冠束帯揃えている……雛人形ではないのか?」
「えっと……」
こそこそっと車イスのバッグから取り出したのは、十二単の淡いピンクのベアである。
「遼様が作ってくれました。私は下手なのに、とっても喜んでくれたんです」
「あぁぁ!!これって、もしかして、麗選手のご実家の?」
「はい、加賀友禅の古い着物のはしを頂いたんです。すごくすごく……嬉しいです。お人形は、妹たちに簡単な古着をくるんだ人形を……このベアを見たら、きっと喜ぶと思います。綺麗って」
「咲夜姉上は優しいな……」
一番年の若い、しかし天才である少年服の少女が呟く。
9才だが本当に考え方が大人である。
「妹さんは本当に幸せだ。弟さんもだが」
「月季ちゃんも兄弟というよりも私の親友です。仲良くしてくださいね」
にこっと笑う咲夜の無意識のタラシの笑顔に、次々と落ちていく……。
「あぁぁ!!あれだから嫌なの!!咲夜は、自分が解ってないんだ!!あんな風に笑われたら、堕ちる!!」
嘆く遼をよそに、4人は、
「じゃぁ、珠樹姉さんがリーダーで、『琉璃と咲夜と月季を愛でる会』発足!!私は、前から何度か月季見てたけど本当に美少年よねぇ!!」
「本当!!咲夜も、時々考え方が少年ぽくなるけれど、月季も動きが自然だわ~。こんな美少年見たことないわぁって!!」
「あ、でも、彰君も美少年よね!!私は、彰くん大好きだわ!!」
百合の声に、彰と囲碁盤に向き合っていた景虎が、
「なぬ!?酷いではないか!!私がそんなに不細工でも言いたいのか!?」
頬を膨らませ訴える。
「不細工じゃないけど、ずっと見てるから普通。彰くんは、年のわりに笑顔が素敵だし、首相の孫って言っても自分のことを自慢したりしないじゃない。景虎は、責任があって頑張っているから許せるけど、許せない馬鹿っているわよね」
「あぁ、あれな」
ちらっと見るのは、亮の甥の格と苛められている喬である。
喬はすでに亮の息子であるが、春の国の学院の学長の息子と言う身分をかさに苛めているらしい。
よたよたと、ぎこちない動きで車イスを動かした咲夜は、格の首をつかむと、ずるずると引きずりつつ、車イスを動かす。
「何をする!!」
「従兄弟を苛める馬鹿はいらない!!今すぐ、出ていけ!!」
「なんだとぉ!!僕を!!」
「お父さんが偉くとも、君が偉い訳じゃないだろう!!自慢なら、自分が偉くなってから言えばいいだろう!!それと、次に言ったら、げんこつ!!僕のげんこつは特別いたいからね!!それとも頭突き?どっちがいい?」
咲夜の凛とした声に、
「ごめんなさい!!もうしません!!」
「よろしい!!ちゃんと謝ってから戻りなさい!!」
「はい!!」
「……全く、場所は変わっても、考えることは……わぁぁぁ!?い、いたいいたいいたい!!」
「どうした!?咲夜?」
駆けつける遼の目の前には、車イスの車輪に絡まり、見事に変形している左手。
「儁乂!!亮さん!!来てください!!それと、麗さん!!兄と祐司兄さんを!!」
左手の骨を合計5本折った咲夜は、慣れるまで、車イスも自分で操作禁止になったのだった。
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