運命(さだめ)の迷宮
咲夜ちゃんのもったいないお化けが出てきています。
春の国で、ある程度回復するまでは、ベッドで就寝……静養をすることになっていた咲夜は、隣室の遼のテディベアの布を納める引き出しをごそごそしていた。
「何をしているの?」
言語が、英語とドイツ語とイタリア、フランスまでは話せるものの、トウリャンの言語は東アジアの言語であり、覚えているところである。
「あ、あの……遼さま。あの、あまり布をいただけませんか?」
「あまり布?テディベアのモヘアのだよね?」
「はい!!この間、モクランさまと、カランさまに習いました。パッチワークと言うものがあって、布のはし切れを、繋いで作るのが元々なのだとか。なので……」
「あまり布でパッチワークは難しいと思うんだけど……」
遼がごそごそと探す。
「あの、こんなの作ったんです」
ポケットから恐る恐る取り出したのは、様々な色、毛の長さ、も不思議な……。
「作ったの?」
「は、はい!!もったいなくて、でも、ダメでしょうか」
「いや、これはこれですごいと思うよ。綺麗に色がうまく配置されていて、これはすごいな……」
感心する。
「モヘアのはし切れだけど、元々の布はそれぞれの質は最高品で、捨てるのもと思っていたけれど、こんな風に使うなんて、咲夜も考えたね」
「もったいないなぁって……すみません。昔の……」
「いや、これは素敵だよ。ここの引き出しに、あまり布があるから、探して作ってみるといいよ」
「本当ですか!!ありがとうございます!!」
遼が残しておいたあまり布を、より分け、使える部分で、型紙をとる。
その時には、本来は毛の流れなどを考えるのだがあまり布のため、考えず、型紙がとれるように置き、切り取り、縫い始める。
遼が驚くのが実は、咲夜の縫い目の丁寧さと、正確さ。
その上早いため、本職の自分すら負けた!!と思うほどである。
咲夜は本当に器用だなぁと見つめていると、
「どうしましたか?」
「いや。咲夜は器用だなと思って。早いし丁寧だし、母上に習ったの?」
「はい!!本当に上手に縫えてますか?母がきっと喜びます」
頬を赤くして嬉しがる咲夜に微笑むと、ノックの音がして、
「おい、遼。咲夜ちゃんのリハビリの時間だ。もう少し前から始めていれば良かったが、ダメだったし……」
「あ、そうですね。咲夜。布と針と糸はここに置いておいて、行くよ」
「リハビリ……ですか?」
「そうそう」
祐司と3人で車イスで出ていくと、リハビリルームに移動する。
「じゃぁ、練習と言うか、咲夜ちゃんの体の筋肉の具合を確認するから、このマットに下ろしてくれ」
遼が下ろすと、ゆっくりと動かない下半身の筋肉を確認する。
「……かなり落ちてるな……ここは?痛い?」
「?えっと……解りません」
「ここの神経も駄目か……。ある程度筋肉を付けるために、定期的なリハビリが必要だな」
祐司は厳しい顔をして、咲夜のカルテに記入する。
「それと、紫と咲夜ちゃんのこれからのリハビリのために撮ったレントゲンで発見したんだが……」
言いにくそうに、告げる。
「肺結核の初期だった。悪化すると向こうの世界では日もおかずに苦しんで死んでいたかもしれない。でも、ここではすでに治療薬があるから、しばらく入院して治療をすること。それと他は、無理をさせないことだ。良いか?」
「分かりました」
「あの、祐司先生。この間、病院にいったときに、松葉杖は見ましたが、あの、えっと……」
言葉につまり、
「こ、こんな感じで、おばあさんが、持ち上げてよいしょって……あれは私は使えませんか?」
「あぁ……あの補助器具か、あれは足の神経があって、歩いて運動できる足を持つ人の道具で、咲夜ちゃんはあれは使えない。腕の筋肉をつけても、腰から下が言うことを聞かない……歩いてみたいのなら他の方法を考えてあげるよ」
「ほ、本当ですか!!わ、私頑張ります!!ちょっとでもいいので、歩きたいです!!それに、馬に乗りたいです」
「馬に?乗れるのか?」
「はい。それに、犬もウサギも鶏も、面倒を見ていました。猟をしていたので、犬は見よう見まねですが、しつけました。そうすると、父がビックリして、今度鷹の雛を……」
黙り込みそしてへにゃっと顔が笑い泣くような顔になり、遼が、
「そう言えば、咲夜?今度ロウディーンさまに聞いてごらん?何かね?すごく珍しい犬を飼っているらしい。ベルギーの犬で、ベルギーでは、出産確率が5割。残りは親かもしくは子供が死んでしまう。日本では7割生存できるようになった犬でね、とても賢い小さい子だよ」
「えぇぇ!!子犬っていっぱい生まれる……」
「その犬は、一頭しか子供を産めないんだ。元々中型犬だったのを、小型に改良をした。すると子供はお母さんのお腹いっぱいに成長するけれど未熟児、お母さんも、大きさが5キロ程だから、小型の犬で、お腹がパンパンになって、最後は帝王切開。確か、ロウディーン公主は、とても可愛いと気に入られて飼っているそうだよ」
咲夜は、遼を見上げる。
「病気に、この体で、その子の面倒を見られますか?」
「私もいるし、大丈夫だよ。今日聞いてみるから入院している間に、部屋にいるかもしれないね」
「そうなんですか!!わぁぁ……」
目をキラキラさせる咲夜。
そしてそのまま入院となったのだった。
「咲夜は入院だね。大丈夫かな?」
ロウディーンの言葉に、共に夕食を囲んでいた遼が、問いかける。
「ロウディーンさま。前に見せていただいた犬なのですが、一頭譲っていただけませんか?」
「あぁ、出産前のあの子ね?」
残念そうな顔になる。
「実は、母体は無事出産は出来たんだけれど、生まれた子がね……後ろの足が立たない。生まれた命だけれど、一生その体では……」
「では、その子を譲ってください!!確か、犬用の車イスを作っている工場があるそうです。それまでは、前足だけで歩くようにして、車イスに慣れさせて……」
「どうするつもりだい?まぁ女の子だから子供が産めたら良いけれど……」
「咲夜のペットに。負けないように、頑張れと……応援させたいと思います。咲夜は優しく賢い子です。きっと可愛がるでしょう」
「じゃぁ……」
傍に控えていた侍従に、二言三言話をすると、小さなかごを持ってくる。
「遠藤さま。ゲージや餌に、トイレのシートなどは別にお運びいたします。この子です」
見ると、後ろ足が歪んでいる。
しかし、プークー……と気持ち良さそうに眠っている姿はあどけなく、可愛らしい。
「ありがとうございます!!この犬は……」
「咲夜のプレゼントに。何なら馬も……」
「いえ、あの子は、まだ歩くことも出来ませんし……」
「そうだね。では、車イスも受注しておこうか」
いくつか会話を交わし、遼は、咲夜の病室に向かう。
空気感染する病であり、無菌室にしばらく入院となっている。
初期と言うことは、結核菌が、体内に入り、疲労が溜まったときを狙い、発病寸前だったのだろう。
ホッとしつつ、かごを抱えたまま、室内に入り、服を着替える。
ふわふわのぬいぐるみのような子犬は一応消毒液を噴射したが、鼻をピスピスさせたままスープーと眠っている。
おっとりしているのか?
「咲夜?」
「あ、遼さま」
安静にと言われ、横になっていた咲夜はにこっと笑う。
「あのね?ロウディーンさまに聞いたら、この間私が会った、出産前の母犬が、子供を産んだんだ」
「そうなんですか!!お母さんも赤ちゃんも大丈夫ですか?」
「それがね?お母さんは元気なんだけど、赤ちゃんがね……」
椅子に座ると、膝にかごを乗せ、咲夜を見る。
「出産の時のものかは解らないけれど……この子はね……」
かごから出し、咲夜の膝に乗せる。
黒い毛玉が、目を覚まし、そしてあまり目が見えないのだが臭いを頼りに咲夜に近づく。
「……この子……後ろ足が!!」
「うん。ロウディーン公主は育てるつもりだと言っていたけれど、犬の世話をしている人達は殺そうと思っていると言っていたよ。せっかく生まれた命なのに……最近はね?犬用の車イスがあって、この子のような不自由な子も動けるようになっているんだ」
咲夜は戸惑う……どうするのだろう。どうすれば……。
その様子に、
「ねぇ、咲夜?私と一緒にこの子を育ててあげよう。今はまだ這いずっているけれど前足がしっかりしたら、動き回るよ?甘えん坊らしいよ?構って、構ってって来るからね。ちゃんとしつけして、可愛がろうね?」
「大丈夫でしょうか?私はこんな体で……」
「だいじょうぶ。私がいるでしょ?だから、名前を決めようね?女の子だよ」
「柚子姫……か、可愛いから」
「それは可愛いね。じゃぁ柚子姫。咲夜にはじめましてって言える?」
抱き上げるとあぁぁ~んと大あくびをする柚子姫に二人は笑う。
二人の絆が強まった瞬間だった……。
「何をしているの?」
言語が、英語とドイツ語とイタリア、フランスまでは話せるものの、トウリャンの言語は東アジアの言語であり、覚えているところである。
「あ、あの……遼さま。あの、あまり布をいただけませんか?」
「あまり布?テディベアのモヘアのだよね?」
「はい!!この間、モクランさまと、カランさまに習いました。パッチワークと言うものがあって、布のはし切れを、繋いで作るのが元々なのだとか。なので……」
「あまり布でパッチワークは難しいと思うんだけど……」
遼がごそごそと探す。
「あの、こんなの作ったんです」
ポケットから恐る恐る取り出したのは、様々な色、毛の長さ、も不思議な……。
「作ったの?」
「は、はい!!もったいなくて、でも、ダメでしょうか」
「いや、これはこれですごいと思うよ。綺麗に色がうまく配置されていて、これはすごいな……」
感心する。
「モヘアのはし切れだけど、元々の布はそれぞれの質は最高品で、捨てるのもと思っていたけれど、こんな風に使うなんて、咲夜も考えたね」
「もったいないなぁって……すみません。昔の……」
「いや、これは素敵だよ。ここの引き出しに、あまり布があるから、探して作ってみるといいよ」
「本当ですか!!ありがとうございます!!」
遼が残しておいたあまり布を、より分け、使える部分で、型紙をとる。
その時には、本来は毛の流れなどを考えるのだがあまり布のため、考えず、型紙がとれるように置き、切り取り、縫い始める。
遼が驚くのが実は、咲夜の縫い目の丁寧さと、正確さ。
その上早いため、本職の自分すら負けた!!と思うほどである。
咲夜は本当に器用だなぁと見つめていると、
「どうしましたか?」
「いや。咲夜は器用だなと思って。早いし丁寧だし、母上に習ったの?」
「はい!!本当に上手に縫えてますか?母がきっと喜びます」
頬を赤くして嬉しがる咲夜に微笑むと、ノックの音がして、
「おい、遼。咲夜ちゃんのリハビリの時間だ。もう少し前から始めていれば良かったが、ダメだったし……」
「あ、そうですね。咲夜。布と針と糸はここに置いておいて、行くよ」
「リハビリ……ですか?」
「そうそう」
祐司と3人で車イスで出ていくと、リハビリルームに移動する。
「じゃぁ、練習と言うか、咲夜ちゃんの体の筋肉の具合を確認するから、このマットに下ろしてくれ」
遼が下ろすと、ゆっくりと動かない下半身の筋肉を確認する。
「……かなり落ちてるな……ここは?痛い?」
「?えっと……解りません」
「ここの神経も駄目か……。ある程度筋肉を付けるために、定期的なリハビリが必要だな」
祐司は厳しい顔をして、咲夜のカルテに記入する。
「それと、紫と咲夜ちゃんのこれからのリハビリのために撮ったレントゲンで発見したんだが……」
言いにくそうに、告げる。
「肺結核の初期だった。悪化すると向こうの世界では日もおかずに苦しんで死んでいたかもしれない。でも、ここではすでに治療薬があるから、しばらく入院して治療をすること。それと他は、無理をさせないことだ。良いか?」
「分かりました」
「あの、祐司先生。この間、病院にいったときに、松葉杖は見ましたが、あの、えっと……」
言葉につまり、
「こ、こんな感じで、おばあさんが、持ち上げてよいしょって……あれは私は使えませんか?」
「あぁ……あの補助器具か、あれは足の神経があって、歩いて運動できる足を持つ人の道具で、咲夜ちゃんはあれは使えない。腕の筋肉をつけても、腰から下が言うことを聞かない……歩いてみたいのなら他の方法を考えてあげるよ」
「ほ、本当ですか!!わ、私頑張ります!!ちょっとでもいいので、歩きたいです!!それに、馬に乗りたいです」
「馬に?乗れるのか?」
「はい。それに、犬もウサギも鶏も、面倒を見ていました。猟をしていたので、犬は見よう見まねですが、しつけました。そうすると、父がビックリして、今度鷹の雛を……」
黙り込みそしてへにゃっと顔が笑い泣くような顔になり、遼が、
「そう言えば、咲夜?今度ロウディーンさまに聞いてごらん?何かね?すごく珍しい犬を飼っているらしい。ベルギーの犬で、ベルギーでは、出産確率が5割。残りは親かもしくは子供が死んでしまう。日本では7割生存できるようになった犬でね、とても賢い小さい子だよ」
「えぇぇ!!子犬っていっぱい生まれる……」
「その犬は、一頭しか子供を産めないんだ。元々中型犬だったのを、小型に改良をした。すると子供はお母さんのお腹いっぱいに成長するけれど未熟児、お母さんも、大きさが5キロ程だから、小型の犬で、お腹がパンパンになって、最後は帝王切開。確か、ロウディーン公主は、とても可愛いと気に入られて飼っているそうだよ」
咲夜は、遼を見上げる。
「病気に、この体で、その子の面倒を見られますか?」
「私もいるし、大丈夫だよ。今日聞いてみるから入院している間に、部屋にいるかもしれないね」
「そうなんですか!!わぁぁ……」
目をキラキラさせる咲夜。
そしてそのまま入院となったのだった。
「咲夜は入院だね。大丈夫かな?」
ロウディーンの言葉に、共に夕食を囲んでいた遼が、問いかける。
「ロウディーンさま。前に見せていただいた犬なのですが、一頭譲っていただけませんか?」
「あぁ、出産前のあの子ね?」
残念そうな顔になる。
「実は、母体は無事出産は出来たんだけれど、生まれた子がね……後ろの足が立たない。生まれた命だけれど、一生その体では……」
「では、その子を譲ってください!!確か、犬用の車イスを作っている工場があるそうです。それまでは、前足だけで歩くようにして、車イスに慣れさせて……」
「どうするつもりだい?まぁ女の子だから子供が産めたら良いけれど……」
「咲夜のペットに。負けないように、頑張れと……応援させたいと思います。咲夜は優しく賢い子です。きっと可愛がるでしょう」
「じゃぁ……」
傍に控えていた侍従に、二言三言話をすると、小さなかごを持ってくる。
「遠藤さま。ゲージや餌に、トイレのシートなどは別にお運びいたします。この子です」
見ると、後ろ足が歪んでいる。
しかし、プークー……と気持ち良さそうに眠っている姿はあどけなく、可愛らしい。
「ありがとうございます!!この犬は……」
「咲夜のプレゼントに。何なら馬も……」
「いえ、あの子は、まだ歩くことも出来ませんし……」
「そうだね。では、車イスも受注しておこうか」
いくつか会話を交わし、遼は、咲夜の病室に向かう。
空気感染する病であり、無菌室にしばらく入院となっている。
初期と言うことは、結核菌が、体内に入り、疲労が溜まったときを狙い、発病寸前だったのだろう。
ホッとしつつ、かごを抱えたまま、室内に入り、服を着替える。
ふわふわのぬいぐるみのような子犬は一応消毒液を噴射したが、鼻をピスピスさせたままスープーと眠っている。
おっとりしているのか?
「咲夜?」
「あ、遼さま」
安静にと言われ、横になっていた咲夜はにこっと笑う。
「あのね?ロウディーンさまに聞いたら、この間私が会った、出産前の母犬が、子供を産んだんだ」
「そうなんですか!!お母さんも赤ちゃんも大丈夫ですか?」
「それがね?お母さんは元気なんだけど、赤ちゃんがね……」
椅子に座ると、膝にかごを乗せ、咲夜を見る。
「出産の時のものかは解らないけれど……この子はね……」
かごから出し、咲夜の膝に乗せる。
黒い毛玉が、目を覚まし、そしてあまり目が見えないのだが臭いを頼りに咲夜に近づく。
「……この子……後ろ足が!!」
「うん。ロウディーン公主は育てるつもりだと言っていたけれど、犬の世話をしている人達は殺そうと思っていると言っていたよ。せっかく生まれた命なのに……最近はね?犬用の車イスがあって、この子のような不自由な子も動けるようになっているんだ」
咲夜は戸惑う……どうするのだろう。どうすれば……。
その様子に、
「ねぇ、咲夜?私と一緒にこの子を育ててあげよう。今はまだ這いずっているけれど前足がしっかりしたら、動き回るよ?甘えん坊らしいよ?構って、構ってって来るからね。ちゃんとしつけして、可愛がろうね?」
「大丈夫でしょうか?私はこんな体で……」
「だいじょうぶ。私がいるでしょ?だから、名前を決めようね?女の子だよ」
「柚子姫……か、可愛いから」
「それは可愛いね。じゃぁ柚子姫。咲夜にはじめましてって言える?」
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