異世界リベンジャー

チョーカー

戦争と洗脳

 「もしもし?聞こえてますか?どうぞ?」
 「うん。聞こえているよ」

 ここからの会話は、盗聴の危険性があるという火野烈弥の意見を尊重して、魔法による無音会話を行う事にした。
 そんな会話方法を俺は試した事すらなかったが、実際に試してみれば、意外と簡単なものだった。 

 「この世界が狂ってるって思うのは、俺たち側の価値観によるもんだ。それはわかるか?」
 「俺たち側の価値観?」
 正直、それは実感のある言葉ではなかった。
 「そうだな。例えば、俺たちだって国が違えば文化も違う。風習も違う。倫理やモラルもだ。
 グロイ話をするなら、アフリカ系の某民族なら獅子ライオンを倒したら勇者扱いだ。
 その勇者なら生理前の少女をはべらかす権利が貰える。こいつは実際の話だが、少しばかり俺たちには嫌悪感がくる話だろ?」
 「……随分と酷い話を例えに選ぶんだな」
 「そうだ。酷いだろ?だが、そいつが酷いと思う事すら価値観の相違ってやつだ」

 火野烈弥は、そう説明した。
 少女とそういう行為してはいけない理由を脳内で考えてみたが、おそらく精神的にも肉体的にも、未熟で行為に向いてないという事ではないだろうか?
 いや……この会話は、あくまでたとえ話だ。突っ込んで考えるのはメンタル的に良くない。
 そう判断すると同時、それまで思考の一部をシャットダウンさせる。
 そして、会話の意味を探る。火野烈弥は、なぜこんな話をしているのか?
 価値観の相違 この世界 魔人……
 それらのキーワードは、俺にとっていまいち――――

 「ピンと来ないって感じてるだろ?」

 火野烈弥の言葉に、反射的に頷いてしまった。

 「それは、お前さんが洗脳されてるからだ」
 「洗脳!俺がか?」

 あまりにも予想外の言葉。思わず、魔法を利用した会話である事を忘れ、口から声がでそうになった。

 「そうだ。魔人って言うのは、この世界において奴隷と同意語みたいなもんだ。おまえだって聞いた事あるだろ?」
 「……確かに」

 確かにそうだ。元々、魔人はこの世界にとって都合がいいから召喚されて、使われていた。
 むしろ、使われていたというよりも消費されていたと言った方がいいかもしれない。
 消費……つまりは消耗品。

 「だから、こうなってんだろ?」
 「こう?」

 次の火野烈弥の言葉……その二文字はシンプルでありながらも奇妙な説得力があった。

 「戦争」

 それについては納得せざる得なかった。

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