異世界リベンジャー
沈まぬ大敵
烈弥に向かって自然と体が動く。
ようやく得た勝機に、俺は追撃の手を加える。
だが、それは罠だった。誘われたのだ。
烈弥の手にある折れた魔剣。再び魔力が燈っていく。
「魔剣蛤 火達磨の型 発動」
烈弥の声に合わせて剣が炎に覆われる。
折れたはずの剣が剣の形状を取り戻していく。
そして、文字通りの火力が俺に向かって放射される。
緊急回避。体を捻りながら横へ飛ぶ。だが、避けきれない。
業火が体の一部に浴びる。
俺は熱さを感じる前に肉体変化で体の神経を閉じる。
炎を浴びた部分が炭化していく。それと同スピードで失われた肉体を治癒魔法で回復させる。
急激に体の一部を損傷したために、大きくバランスを崩す。
今度は烈弥の猛攻が始まった。
その攻撃はまるで二刀流。烈弥の剣と炎が同時に襲ってくる。
普通なら、到底捌けれる攻撃の数ではない。……普通ならだ。
俺は、向かってくる炎を―——切り裂いた。
「やはり魔法切断か。その魔法切断で魔剣本体ごと折ったのか」
間合いを取った烈弥は忌々しいような言葉を言う。
そう、烈弥の言う通りだ。
こちらのタイミングを殺す魔剣。ならばと、魔剣から放出されている魔法そのものを断ち切ろうとしたのだ。刀身そのものが折れたのは、流石に狙い以上の効果だった。
魔法切断を始めてみたのは映像で『魔王』が使用したのが1度目。
2度目は肉眼で捉えれ切れなかったが、ついさっきクルスが使っているのは2度目。
2度も見れば、再現自体は難しい事ではない。
「おい、ユズル。お前、魔人相手に戦うのは初めてだろ?」
「……それがどうした」
俺はできるだけ話を長引かせようとする。先ほど、炎を浴びた部分。表面上は完治して見せているが、内部は丸焦げ状態。戦いに影響しない程度に回復するには、まだ時間が必要だ。
「例えば、俺は炎を操る魔法が得意だ。しかし、魔法を一瞬でトレースできる魔人に、魔法の得意、不得意が、なぜあるのか、わからないだろ?
その理由は―——こうだ!」
烈弥の腕から火炎が放出される。
一瞬で効果と魔力を把握。俺は魔力で再現させた火炎に火炎をぶつける。
先ほどの烈弥VSクルス戦であった巨大な魔力の衝突みたいな膠着状態にはならない。
低威力の魔法。同等の魔力のぶつかり合いで火炎は相殺される。
魔法が消滅する。そう認識した次の瞬間には、二撃目の火炎が正面に迫っていた。
再び相殺。消滅していく火炎の熱量が、烈風として俺を襲う。
そして、三撃目の火炎。相殺は不可能。俺は剣を振るい魔法切断。
直後、背中にプレッシャー。目で確認する事を放棄し、カンのみで避ける。
だが―—— (誘導弾!?)
拳大の火球が俺を追いかけてくる。それも2つ。
相手の烈弥から目を離し、回避運動に集中する。
魔法の相殺も、剣の魔法切断も追いつかない。
ならばと俺は、単純な魔力を衝撃として、即興の防御壁を造り、火球を防ぐ。
だが、別の攻撃。烈弥が上段から剣を振り落す。
それは剣で受けようとするが―——
「ガッ!」
剣と剣を合わせるタイミングが大きくずれた。
思いもよらない衝撃に口から空気が漏れた。
(ここに来て、蜃気楼だと……)
刀身がぶれた剣を受け切れず、片膝を地面につける。
気がつくと顔面に向かって膝のドアップが視界を覆う。
膝蹴りが俺の顔面に入った。
重い衝撃。どこかで小枝が折れるよう音が聞こえた。
後方へ倒れそうになるのを、体を丸めて後ろ回り。そして間合いを取ると同時に立ち上がる。
目前に烈弥の魔剣が通過していく。あのままダウンしていたら、剣を避けられなかっただろう。
俺は冷や汗を流す。いや、冷や汗だけではない。涙が落ちている。
顔面に真っ直ぐ入った膝蹴り。素人がよくやる蹴り上げるような膝蹴りではない。
腰を押し出すよう強烈な一撃が顔面に入ったのだ。
鼻の軟骨が折れ、衝撃が眼球を押し付ける。
俺の意思に反し、瞳から大粒の涙が滝のように流れ落ちてるのだ。
もはや、烈弥の蜃気楼でなくとも、視界が滲んでぼやけている。
烈弥の剣が正確に見えない。
「どうだ?同じ魔法が使えるからといっても、使い慣れた魔法じゃないなら魔法の速射力、回転力―——要は手数の差が如実に出てくるだろ?それに、一言に魔人っていっても魔法に個性が反映されんだぜ」
烈弥の言う通りだった。
巨大魔法の打ち合いなら膠着状態になりやすい。そのまま勢いが負けた方が敗北へ一直線……
しかし、通常の魔法合戦なら違う。単純に魔法の先出しが、アドバンテージを取れやすい。
だから、初動の速さに繋がる、魔法の練度―——仕上げ具合がものをいう。
魔法の得意、不得意の意味はわかった。だが———
「随分と親切なんだな」
「ああん?」
「俺は敵だぜ?そんな俺に、わざわざ戦い方を教える必要なんてないはずだ」
「……そんな事か」
烈弥は、さも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの口調で言う。
「お前だって『魔人』だろ?この世界を『魔王』が制したら、お前も仲間じゃねぇか」
「……」
俺は口を閉じた。この不遜な男を持って、『魔王』への信頼感。
いや、『魔王』の強さに対しての信頼感か?それほどまでの実力なのか……
「どうした?新入り魔人?これで終わりじゃねぇだろ」
「あぁ、心配するな。まだまだ、これからだな」
俺は、言葉と同時に烈弥に背を向ける。
そのまま、腰を落として一回転。遠心力を利用しての回転切り。
烈弥は反応して、魔剣で受けようと―——しかし———
剣戟の音とは思えない「コッーン」と軽い金属音が鳴っただけだ。
回転切りはフェイント。背中を見せながらしゃがみ込み、その反動で足の踵を烈弥のアゴに向けて、下から上へと上昇させる。
確かな感触が踵に伝わってくる。会心の一撃だ。
グラつきながら、後退していく烈弥に拳を打ち込む。
連撃に次ぐ連撃。止めに剣のフルスイングを烈弥の頭部へ叩き込んだ。
だが———
それでも烈弥は沈まない。
こいつ、どうやってら倒れるんだ?
そんな感想を抱く。まだまだ、決着には遠く及ばないみたいだ。
ようやく得た勝機に、俺は追撃の手を加える。
だが、それは罠だった。誘われたのだ。
烈弥の手にある折れた魔剣。再び魔力が燈っていく。
「魔剣蛤 火達磨の型 発動」
烈弥の声に合わせて剣が炎に覆われる。
折れたはずの剣が剣の形状を取り戻していく。
そして、文字通りの火力が俺に向かって放射される。
緊急回避。体を捻りながら横へ飛ぶ。だが、避けきれない。
業火が体の一部に浴びる。
俺は熱さを感じる前に肉体変化で体の神経を閉じる。
炎を浴びた部分が炭化していく。それと同スピードで失われた肉体を治癒魔法で回復させる。
急激に体の一部を損傷したために、大きくバランスを崩す。
今度は烈弥の猛攻が始まった。
その攻撃はまるで二刀流。烈弥の剣と炎が同時に襲ってくる。
普通なら、到底捌けれる攻撃の数ではない。……普通ならだ。
俺は、向かってくる炎を―——切り裂いた。
「やはり魔法切断か。その魔法切断で魔剣本体ごと折ったのか」
間合いを取った烈弥は忌々しいような言葉を言う。
そう、烈弥の言う通りだ。
こちらのタイミングを殺す魔剣。ならばと、魔剣から放出されている魔法そのものを断ち切ろうとしたのだ。刀身そのものが折れたのは、流石に狙い以上の効果だった。
魔法切断を始めてみたのは映像で『魔王』が使用したのが1度目。
2度目は肉眼で捉えれ切れなかったが、ついさっきクルスが使っているのは2度目。
2度も見れば、再現自体は難しい事ではない。
「おい、ユズル。お前、魔人相手に戦うのは初めてだろ?」
「……それがどうした」
俺はできるだけ話を長引かせようとする。先ほど、炎を浴びた部分。表面上は完治して見せているが、内部は丸焦げ状態。戦いに影響しない程度に回復するには、まだ時間が必要だ。
「例えば、俺は炎を操る魔法が得意だ。しかし、魔法を一瞬でトレースできる魔人に、魔法の得意、不得意が、なぜあるのか、わからないだろ?
その理由は―——こうだ!」
烈弥の腕から火炎が放出される。
一瞬で効果と魔力を把握。俺は魔力で再現させた火炎に火炎をぶつける。
先ほどの烈弥VSクルス戦であった巨大な魔力の衝突みたいな膠着状態にはならない。
低威力の魔法。同等の魔力のぶつかり合いで火炎は相殺される。
魔法が消滅する。そう認識した次の瞬間には、二撃目の火炎が正面に迫っていた。
再び相殺。消滅していく火炎の熱量が、烈風として俺を襲う。
そして、三撃目の火炎。相殺は不可能。俺は剣を振るい魔法切断。
直後、背中にプレッシャー。目で確認する事を放棄し、カンのみで避ける。
だが―—— (誘導弾!?)
拳大の火球が俺を追いかけてくる。それも2つ。
相手の烈弥から目を離し、回避運動に集中する。
魔法の相殺も、剣の魔法切断も追いつかない。
ならばと俺は、単純な魔力を衝撃として、即興の防御壁を造り、火球を防ぐ。
だが、別の攻撃。烈弥が上段から剣を振り落す。
それは剣で受けようとするが―——
「ガッ!」
剣と剣を合わせるタイミングが大きくずれた。
思いもよらない衝撃に口から空気が漏れた。
(ここに来て、蜃気楼だと……)
刀身がぶれた剣を受け切れず、片膝を地面につける。
気がつくと顔面に向かって膝のドアップが視界を覆う。
膝蹴りが俺の顔面に入った。
重い衝撃。どこかで小枝が折れるよう音が聞こえた。
後方へ倒れそうになるのを、体を丸めて後ろ回り。そして間合いを取ると同時に立ち上がる。
目前に烈弥の魔剣が通過していく。あのままダウンしていたら、剣を避けられなかっただろう。
俺は冷や汗を流す。いや、冷や汗だけではない。涙が落ちている。
顔面に真っ直ぐ入った膝蹴り。素人がよくやる蹴り上げるような膝蹴りではない。
腰を押し出すよう強烈な一撃が顔面に入ったのだ。
鼻の軟骨が折れ、衝撃が眼球を押し付ける。
俺の意思に反し、瞳から大粒の涙が滝のように流れ落ちてるのだ。
もはや、烈弥の蜃気楼でなくとも、視界が滲んでぼやけている。
烈弥の剣が正確に見えない。
「どうだ?同じ魔法が使えるからといっても、使い慣れた魔法じゃないなら魔法の速射力、回転力―——要は手数の差が如実に出てくるだろ?それに、一言に魔人っていっても魔法に個性が反映されんだぜ」
烈弥の言う通りだった。
巨大魔法の打ち合いなら膠着状態になりやすい。そのまま勢いが負けた方が敗北へ一直線……
しかし、通常の魔法合戦なら違う。単純に魔法の先出しが、アドバンテージを取れやすい。
だから、初動の速さに繋がる、魔法の練度―——仕上げ具合がものをいう。
魔法の得意、不得意の意味はわかった。だが———
「随分と親切なんだな」
「ああん?」
「俺は敵だぜ?そんな俺に、わざわざ戦い方を教える必要なんてないはずだ」
「……そんな事か」
烈弥は、さも馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの口調で言う。
「お前だって『魔人』だろ?この世界を『魔王』が制したら、お前も仲間じゃねぇか」
「……」
俺は口を閉じた。この不遜な男を持って、『魔王』への信頼感。
いや、『魔王』の強さに対しての信頼感か?それほどまでの実力なのか……
「どうした?新入り魔人?これで終わりじゃねぇだろ」
「あぁ、心配するな。まだまだ、これからだな」
俺は、言葉と同時に烈弥に背を向ける。
そのまま、腰を落として一回転。遠心力を利用しての回転切り。
烈弥は反応して、魔剣で受けようと―——しかし———
剣戟の音とは思えない「コッーン」と軽い金属音が鳴っただけだ。
回転切りはフェイント。背中を見せながらしゃがみ込み、その反動で足の踵を烈弥のアゴに向けて、下から上へと上昇させる。
確かな感触が踵に伝わってくる。会心の一撃だ。
グラつきながら、後退していく烈弥に拳を打ち込む。
連撃に次ぐ連撃。止めに剣のフルスイングを烈弥の頭部へ叩き込んだ。
だが———
それでも烈弥は沈まない。
こいつ、どうやってら倒れるんだ?
そんな感想を抱く。まだまだ、決着には遠く及ばないみたいだ。
「その他」の人気作品
書籍化作品
-
-
140
-
-
107
-
-
4
-
-
26950
-
-
4
-
-
1978
-
-
147
-
-
93
-
-
1
コメント