異世界リベンジャー

チョーカー

荻原みどりの攻撃

 「はぁ・・・はぁ・・・・・・」

 乱れに乱れた呼吸。俺は岩の影に隠れ、呼吸を整える。
 強引に吸い込んだ酸素が、僅かながら思考の速度を回復させる。

 「なぜ、俺がここにいると分かった?読まれていた?……まさか。作戦を読んでいても俺の居場所まで正確は把握できるなんて―――」

 俺は独り言を中断する。
 音。空気を切り裂き、轟音を唸らせる落下音。
 俺は、身を潜めていた岩から飛び出す。
 ―――直後。俺が隠れていた岩よりも、遥かに巨大な岩が落ちてくる。
 いくつもの石礫いしつぶてと砂煙が発生。
 膨大なエネルギーが衝撃に変換し、距離を取っていたはずの俺を飲み込む。
 まるで散弾銃ショットガンだ。

 魔人 荻原みどり

 俺は、彼女の攻撃を受けていた。
 『魔王』が言う四天王の1人であり、この場所である『プラント』の支配者。
 土属性の魔法を好み、大地と植物を操るスタイルらしい。
 つまり、このむき出し地面と木々が覆う『プラント』という場所は、彼女に取ってのホームゲーム。

 なぜ、全面戦争の真っただ中、彼女がこの場所にいるのか?
 わからない。
 なぜ、俺の居場所を正確に把握してたいのか?
 わからない。
 わからないが……想像なら思いつく。

 『裏切り者』

 ナシオンの中枢に裏切り者がいる可能性。
 なにより、俺が裏切り者と疑われている筆頭ではあるが……
 もしも、裏切り者が存在していて、情報を手引きしているとしたら……

 「くそッ!?」

 悪態を一言。
 空を見上げれば、浮かんでいる岩が俺を見つけると同時に落下を開始してくる。
 まるで隕石の如しだ。

 「どこにいる?どこから俺を狙っている」

 戦いが始まってから、荻原みどりは一度たりとも姿を見せていない。
 いきなりだった。いきなりの奇襲攻撃。
 俺は、彼女の攻撃から逃れるために、気配を消したり、姿を消したり……と
 あらゆる感知の無効化に魔力を費やした。
 しかし、彼女は正確に俺の位置を把握し、攻撃を続けてくる。
 彼女の攻撃の正確さ。精度の高さ。
 それらを逆に言うならば、彼女は俺の近くに身を潜めていて、目視による確実な攻撃を行っている証拠。
 すぐ近くに隠れているはずだ。
 だが、わからない。どこにいるんだ?

 荻原みどりの攻撃を見切るために上空に浮かぶ岩を見る。
 空高くまで覆い茂った植物の枝と葉によって、視線は遮られている。
 悪路が続く森。道をいう道はなく、下手な獣道よりも険しい。
 逃げ場が限られた場所で、落下する岩々を回避し続けれているのは幸運でしかない。

 「何とか、何とか打開案を―――」

 空を見る俺の視線に異物が入る。 
 それは―――

 「つる?」

 つると言っても鳥の名前ではない。
 つる植物のつるだ。
 代表的な植物はあさがお……か?細長い糸のようなつるが、空から大量に降り注いでくる。
 不意をつかれて回避行動が遅れる。
 俺は腰から剣を抜刀。それと同時に落ちてくるつるを剣で振り払う。
 その光景は、無数の蛇が襲ってくるように見える。
 数が多すぎるのだ。斬りもらしたつるが、俺の体に巻き付いてくる。
 ただが、細いつるだ。俺は強引に引きちぎる。
 しかし、動きが鈍る。こうして、動きを鈍らせた所に岩を落とすつもりか!?

 ……? あれ?

 空を見上げても岩が落ちてこない。

 「絞め殺し植物と言うのをご存じかしら?」

 不意に話しかけられる。それも背後から。
 反射的に振り返ろうとする。だが、それはできなかった。
 俺の体は、何かに体を固定化されたように押さえつけられていたのだ。
 一体何に?いつの間に?
 植物が俺の体に巻き付いていた。その太さは、人の腕と同等適度か?

 「植物と言うのは上へ上へと伸びるもの。
 光を求めて、栄養に変換する。それが植物同士の戦いだから。
 そう、植物だって戦っているのよ。それも貪欲に」

 声が近づいてくる。しかし、俺の体は動けない。
 次から次に、降り注いでくるつる植物が巨大化し、俺の体をさらに捕縛していくからだ。 

 「でもね。つる植物というのは、それらの植物と真逆のベクトル。
 他の植物に纏わりついて下へ下へと伸びていく、
 やがて、地面に到達すると……土の含まれた養分を吸い上げ、巨大化。
 ついには、纏わりついた植物の光合成を阻害し、腐らせ、取って代わる。
 まるで貴方のような植物よ。ユズル・イートー?」

 「……何を?言っている?」

 「わからない?そう貴方はわからない。だからね。貴方だけは私が殺してあげるの」

 寒気が背筋を通り抜ける。
 緊急回避。
 俺は魔力はデタラメに放出。
 体を固定する植物を吹き飛ばす。
 それと同時に、背後を振り向き、荻原みどりの姿を確認を急ぐ。
 しかし、できなかった。
 既に彼女の姿は消えていたのだ。

  

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