どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

6

お姫様抱っこのまま連れられる俺、さっきの騒動で心が疲れたので暴れない…暴れたとしても俺の力じゃ不可能、自分の非力さが憎い…くそぅっ

で、俺は何処かに連れ出されている、しっかしヴァームは本当に表情を変えないなぁ……ずっと笑顔のままだ。

「俺を何処に連れていくつもりだ?」
「衣装部屋です、これから商談に行きますのでそれなりの服装をして頂きます」

なんか勝手に話が進められているんだが……こう言う事がこの先何度も起こるんだろうなと思ってしまうのは何故だろうか?

「何で行く前提で話を進めてるんだよ、そもそも俺は他に服を持って無いぞ」
「安心して下さい、服は沢山用意してあります」
「いや、あっても俺はいかないからな」

優しい目で見下ろしてくるヴァームに対し素っ気なく返す、どんな事をされようが俺は拒否し続けてやる。

「良いんですか? 外に出られるんですよ?」

……外に出れる? っ!? 外に出られるだと!?  これは良い事を聞いた……逃げ出すチャンスじゃないか! これに乗らない手はないっ!

「外に出られるなら行こう…」

此処からは逃げる事を悟られない様にしないといけないな…ばれたら終わりだ、そう、これはステルスミッション……失敗は許されない!

「そうですか……そう言ってくれて嬉しいです」

それだけ答えるとヴァームは口を閉じてしまった、よしっ、これからどんな事があっても俺は耐えるぞっ、なんせ逃げられるかも知れないんだからな!


「なぁ…」
「はい、何でしょう?」

まっ、話しはそう簡単にいかなかった……どんな旨い話しには必ず裏がある、その言葉が今身に染みて分かった所だ。

「これは何だ?」
「これはメイド服ですね…私の着ているのは違い白メイド服でふりふりが付いています」
「そんな事は聞いてないっ!」

さて、話しを戻そうか……俺がヴァームに連れられた所は衣装部屋だ、そこに入ったらやっと降ろしてくれた、ふむ此処が衣装部屋か……まぁ服を着替えるんだから此処に来るのは当たり前だろう……しかしあれだな、城ともなると立派な衣装部屋があるのか……少し羨ましいな、周りを見渡してみると広い部屋一杯に色んな服がハンガーに掛けられている、その中には『ヴァームコレクション』と紙を張ってある大きなクローゼット…なっ何だろう……この凄まじい嫌な予感は、でだ、今まさにヴァームがそのクローゼットの中からメイド服を取りだし爛々と俺に見せつけて来る、厄介なのはロアだけじゃなかった訳か、くそっ……因みにメイド服以外にも色々な服があった、いや…この中の服はなんと言うか普通のとは明らかに違う、なんと言うか……可愛すぎるのだ、その他にも際ぞい服も多くある…と言うか明らかに男が着る服じゃない、ってそう言うのはどうでも良い。

「俺が聞きたいのは…これは何の冗談だと言う事だ! 服を着替えると言ったよな? まさか、俺がこれを着るんじゃ無いだろうな?」

まだお姫様抱っこ状態の俺は下からヴァームを睨み付ける、すると「うふふふ」と笑いながらヴァームは嬉しそうに答えた。

「察しが良くて助かります」
「ふざけるな! 俺は絶対こんなの着ないからなっ!」

必死に訴える、だってこんなの可笑しいだろ? 男が女の服を着るなんて間違ってる、ここは何がなんでも分かってもらわないと……それを着てしまったら男として何かを失うぞ! 絶対に俺はメイド服なんか着ない! ってあれ? ヴァーム、何か凄く睨んでくるんだが…何でだ?

「こんなのとはどう言う事でしょうか?」

眉をピクピク動かしている、あれ? もしかして怒ってるのか? えっ笑顔だから……おっ怒ってないよな? もしも怒ってるのなら……何で怒ってるんだ?

「どっどう言う事って……っ!」

急に突き飛ばされる俺は盛大に尻餅をつく、いってぇ何するんだ!
見上げてみると、口元は笑っているが冷たい目線が俺に向けられてるではないか……やっべぇ、超怖いんだが……。

「シルク様はメイド服と言う物を過小評価している様ですね」
「はっ?」

いっいきなり何を言ってるんだ? もっ物凄く怖いんだが…。

「良いですか? メイド服と言う物は人類が研究に研究をかせね努力して創られた史上最強にして全知全能を司り神を越える絶対なる衣服なのですっ、それをこんなものと言う等言語道断です! 謝ってくださいっ」
「いっいや……言ってる意味が分からないぞ? メイド服はそんなに凄い物なのか?」
「ふふっ……うふふふふ…実に、実に嘆かわしいですよ」

口元を手で覆い苦笑しながらびしっと俺を指さす、どきっと身体が震え反射的に正座してしまう。

「では、何も知らないシルク様にも分かる様に説明しますね、いいですか? 第一にメイド服と言う物は……」

そこからは凄かった……早口でメイド服の凄さを話す、そのヴァームが怖すぎてきちんと話しを聞く俺、本当は聞きたくない……だなそれは無理だ、いやだって…凄い目で見下ろしてくるから怖いんだよ、何か取っ手食われる勢いだ…メイド服に指差しながら細部に至るまで事細かに説明してくる、俺はそれを黙って聞く、此処で何か言おう物なら何が起きるか分かったものじゃない、だから何も喋らない…と言うか喋ってはいけないのだ。

「聞いてるんですかシルクさん?」
「ちゃっちゃんと聞いてる、本当にすみませんでした」
「本当に心から謝ってますか?」
「こっ心から謝ってる、本当にすまない……」

怖い、物凄く怖い…怒りのオーラ的な何かが見える、下手な事を言えばヤられる…。

「では、これを着てくださいますね?」
「……着ます」

くそっ、正直着たくないでもそう言わないと俺の命が危険だ。

「嫌そうですね……本当は着たくないんですか?」
「きっ着させて下さい!」

嫌そうな顔を極力直しつつ深々と頭を下げる……あぁ何でこうなるんだよ! 俺が不本意ながらもその言葉を喋るとヴァームが俺に手を差し出してくる。

「では着替えましょうか、うふふふ……」

ヴァームの満面の笑み、さっきの怒りの目とは大違いだ、俺がため息をつくとヴァームが何故かメイド服をクローゼットに戻す、ん? それに着替えるんじゃ無いのか? まぁそれを着ないなら嬉しいんだが……と思った時だ!

「っ! おっおいやめろっ! 服を脱がしにくるな!」
「何を言うんですか!コスプレとは相手を脱がせるのが面白いんでしょう!」
「そんな訳あるかぁぁっ!」

強引に俺の服を脱がしに掛かるヴァーム、させまいと彼女の腕を掴んで阻止するが、俺には力が無かったのであっさりと脱がされてしまう。

「実に可愛らしい乳首です、女の子見たいですね」

ヴァームははぁはぁと興奮しているのが分かる、俺はその仕草に恥じらいを感じつつもいってやる。

「やかましいっほっといてくれ!」

胃がきりきりする…何故俺は、会って数日の奴に服を脱がされなくてはいけない? なぜ、俺の乳首を見られなければいけない! しかも可愛らしいと言ってくる、まぁ俺の身体は痩せている……全く男らしくないし、顔の性で女性と間違えられる事が沢山ある、だが俺は男だ、それは紛れもない事実だ!

「このまま女性似の身体を見つめていたい所ですが……」

まったく失礼だ、まぁ筋肉質では無いが…女性と間違えられる程の体格では無いだろう、と考えていたらヴァームが俺にメイド服を見せ付けてくる、ぐっ……やはり着なければ駄目なのか? と言うか何故外に行くのにメイド服なんだ……言ってやりたいが言ったら最後、また謎の説教が始まりそうだ、不本意だが黙っておこう……。

「では、ばんざいして下さい 」

言われるがまま万歳ばんざいする、するとヴァームは馴れた手付きでメイド服を俺に着せる、くっ……以外と着心地が良いのが何か精神にくるな……。

「では、次はスカートを履きましょうか、さぁズボンを脱がしますよ」
「待て! それは俺がやるっ、俺にやらせて下さい!」
「駄目です! わたくしが着せたいんです! そんな事を言うのならブラジャー付けて貰いますよ!」
「りっ理不尽過ぎるだろう!」

何なんだちくしょう! ヴァームは俺のズボンを下ろしに掛かる、それを阻止する俺! 渾身の力を振り絞り何とか耐える、が……力不足で徐徐に脱がされていく、決めた俺無事に脱出したら筋トレしよう……。

「随分、恥ずかしそうですね?」
「あっ当たり前だ! 脱がされて喜ぶ奴なんて……」
「いますよ? ラムなら喜びますね……」

……うっうん、あのスライムなら喜びそうだな、だが俺は喜ばない奴だ! 一緒にするんじゃない!

「顔を真っ赤にして……可愛いですねぇ、うふふふ」

にこーっと笑ってくるヴァーム、くっそ! こいつ力強すぎるっ、駄目だ! もう耐えられないっ! すぽーんっとズボンを脱がされる、ぐぬぬぬっ、超恥ずかしい……。

「トランクスですか……」
「なっなんだよ! 悪いかよ……」

何、じろじろ見てるんだ! この際スカートでも何でも良いから下を着させろ!

「スカートの中がトランクスではかなり問題がありますねぇ」

かなり神妙な顔だが、ヴァームさん? 頼むから変な事を言うのは止めてくれよ?

「よし、これを履きましょう」

そう言って取り出したのは白いパンツだ、しかも可愛い……明らかに女性用だ。

「全然全くちっとも完全によろしくないのは分かってるよな!」
「大丈夫です、これは今朝私が買ってきたパンツです、履き心地抜群ですよ?」
「大丈夫じゃない所が沢山あるよ! ふざけんなっ、絶対俺ははかないからな! トランクスで良いだろうがっ!」

なーんて俺の叫びは虚しく響く、抵抗したのだが……ヴァームにトランクスを脱がされ女性物のパンツをはかされる。

「やめてくれぇぇぇぇっ! 男としての何かが崩れていくぅっ!」
「シルク様、ご存知ですか? 世の中には『おとこのこ』と言うのがあるんです、シルク様はまさにそれなんです、だから需要有りです、あっ因みに『おとこのこ』は『男の娘』と書くんですよ?」

ずびしっと親指を立て満面の笑みを見せるヴァームに向かって赤面しながら俺は腹の底から叫んでやった。

「俺にそんな要素は無いしそんな知識いらない! やっやめろぉぉぉぉ!!」

あぁ…胃が痛い、速くこの時間が過ぎてくれるのをただ待つしか無い俺は力を付けなかった事を深く後悔したのであった。

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