どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

74

俺は今、物凄い物を目にしている。

「めぎゃぁぁぁっ、ヴァっちゃんなっ何するですかぁぁっ」
「お黙りなさい駄目医者」

何だか知らないがヴァームがメェをしばき回している、もう殴る蹴るの嵐だ……俺はその様子を見て唖然、と言うか何故こうなった? それは少し前に遡る。


「やっやめろ!」

にじりよって来るメェに対して俺は悲鳴を上げる、こんな声を上げた所で状況は何も変わらないのは分かっている……だが、叫ばずにはいられなかったんだ。

「ふふ……」

ヴァームも此方へやって来る、くっ! また恥辱を受けてしまう、それを写真に取られてしまうのか……俺は全てを諦める、もう目を瞑っていよう、そしたら苦しみが軽減するだろう……そう思って目を瞑った、だが引き起こったのは予想外の出来事だった。

「んう?ヴァっちゃん……何でメェの頭を握り締めてるです?」
「ふふふふ……それはですね」

何か話してるみたいだ……何もしてこないのか? いやいや、そんな事は無い……そう思って俺は恐る恐る目を開けた。

「貴女が私の服を薬で溶かしやがったからです……」
「めぎゃっ! しまったですぅっ」

そこに写ったのはヴァームがメェの頭をアイアンクローして吊り上げている所だった……じたばた暴れるメェだが逃れずにいた。

「ナニコレ……」

もうその声しか出なかった、俺の目の前で狩りが始まった。

「あっあれはメェのちょっとしたお痛ですよ!許してですぅぅっ」
「あらあら……私の服作った服を溶かしておいて、ちょっとしたお痛? どうやら罪の意識が無いようですね」

いや、作ったって……あの服元々俺のだからな? と言うかそろそろ降ろしてあげないか?メェの顔からメキメキ鳴ってるぞ?

「みっみぎゃぁぁぁっ!痛いっ割れるっ潰れるですよぉ!メェの顔がスプラッタに砕け散るですぅぅ」
「安心して下さい、その際は私がキチンと掃除して血液一滴も残しません」

メェの悲痛な叫びが響く……ヴァームはメェに構わずににこにこの笑顔でアイアンクローを続けている、おっそろしい光景が俺の前で引き起こる、窮地きゅうちは逃れたけど……ある意味これも窮地きゅうちじゃないか?

「ぐっぬっぬぬっ……この鬼っ悪魔っドラゴンっ」
「うふふふ……」

いや……窮地なのはメェだ、だが俺は同情はしない……今までの報いを受けたのだ、だまぁみやがれと言う奴だ。

「離すですよぉっ! あいだだだだだっ……つっ爪ぇぇ爪が食い込んでるですぅぅ」

おっと……ヴァームは服を溶かされた事に大変ご立腹なのか少々やり過ぎている。

「私とした事が失態ですね……爪を研ぐのを忘れました」
「こっこのドラゴン……メェを殺しに来てるですぅぅ!」

少々じゃなかった、盛大にやりすぎだ、だから止める訳にも行かない……俺は縛られて上手く動けない、縛られていなくても俺にヴァームは止められない。

「さぁメェ……懺悔なさい」
「こっ此処までされたら……謝る気なんて起こらないですよ!」

変な意地張らないで謝れば良いのに……ヴァームの眉がピクリと動いた、怒りに怒りを重ねてしまったみたいだ。

「私が笑顔で素直に謝るのをお勧めしま……」
「うっさいっこの偽乳メイド!」

ピシッ! と言う擬音が響く位この場が凍り付いたのを感じた、同時にメェの言った言葉に俺は衝撃を得た、ヴァームの胸ってパットなんだ……初めて知った、と言うかヴァームが今まで見た事が無い位歪んだ笑顔をしている、これからやばい事が起きるのは確実だ!

「ふふ…ふふふふ……全くこの獣は中々にふざけたお言葉をお使いやがりますねぇ……」

その瞬間、ヴァームの身体からどす黒いオーラが吹き出た……とても禍々しくて恐ろしい物だ、ヴァームはメェをそのまま上に投げる、殺戮の時間が始まってしまう!

「めっめぎゃ!?」

投げられた事に困惑するメェ……その下でヴァームは構えを取る、あっあれはアッパーカットの構え!

「その身に罪を刻んであげます」 

風を切るかの様な動きでヴァームはメェのあごめがけてドラゴンブローをぶちかます!

「みぎゃぁぁぁっ!!」

べこんって不気味な音が響いた……顎外れたんじゃないか? ふわっと風で靡いた羽の様に浮き上がるメェ……目が回ってる、ん? ヴァーム……今度は蹴りの構えをしている。

「ありがたく受け取りなさい」

閃光の様な蹴りがメェの横腹に炸裂する! ばきょっ! て鳴ったけど……大丈夫だよな? 流石に心配になってきたぞ。

「ぐめぇ……やっやめ……うっ」

あっ……メェが意識を失った! もうやめろっメェのライフはもう零だ!

「まだ逃がしませんよ……」

構わずヴァームは横にぶっ飛ぶメェの顔を掴んで床に叩き付ける、ビタァァァンッーーと爽快な音が鳴った、あぁこれ骨の1、2本は逝ったんじゃないか?

「さぁ、起きてください……まだ私の怒りは治まってませんよ?」

倒れたメェを歪んだ笑顔で見つめるヴァーム……まだこのデスコンボが続くと言うのか? 俺は震えた、今までで一番の恐怖体験だ、鬼騎の顔の怖さなんて可愛い物だ……そう言う事が瞬時に脳裏に過る。

「さて、続けましょう……」

そしてヴァームはメェを強制的に起き上がらせる。


そして今に至ると言う訳だ……。

「す……すびばぜんでず」
「うふふ……やっと謝りましたね、ではその言葉を後10000回言って下さい」
「ばい…ずびばぜん」

ぼっこぼこにされたメェは土下座で力なく謝る、よし……俺はヴァームの胸の事実を聞かなかった事にしよう、下手に口走ったら死んでしまう、俺は今の記憶を必死に消そうとする、だがそれは無理だった、あんな衝撃的な事を見てしまったんだ、しっかり脳に記憶されてしまった、これが一生残るとか嫌だぞ?

「あっシルクさん」
「ひゃい!?」

びっビックリした……話し掛けて来た、笑顔なのは変わってないんだが、まだ歪んだ笑顔のままだ。

「私の胸は本物……良いですね?」
「分かりました」

俺は即答した、それもう光よりも早く答えた! じゃなきゃ命の危険を感じたからだ。

「では復唱してください、ヴァームのおっぱいは巨乳……はい!」
「ヴァームのおっぱいは巨乳!」

俺は言う通りに言った、普段はこんな言葉なんか絶対に言わない!言わないけど……今言わないと次にデスコンボを喰らうのは俺だ!

「では後1000回言いましょうか……」
「分かった……ヴぁっヴァームのおっぱいは巨乳!ヴァームのおっぱいは巨乳!」

じっ地獄だ……何でこんな事言わないといけないんだ、くそっ全てメェのせいだ! 恥ずかしさで死んでしまいそうになりながら俺は言い続けた……それが100回を超えた時ロアがやって来て「なっなにをしてるんじゃ?」と困惑され話がややこしくなった、あぁこの世に神はいない、この一瞬で俺はそう感じ一筋の涙を流したのであった……。

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