どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

471

外は暗闇、誰の声も聞こえない。
あれから時間が経って夜になった。

人も魔族も夜は寝る。
まぁ、全員が全員そうとは限らないが……魔族も大概は夜になったら寝るのだ。

「これぞ絶好の機会と言うやつじゃな」

そんな中、城を抜け出す怪しい影が1人……ロアである。
黒いローブを身にまとい、そろりそろぉりと城から出ていく。
その甲斐あってか、 城付近で寝ているケールにも気付かれず抜け出す事に成功した。

「ちょろいもんじゃのぅ……と、油断はいかんな。気を引き締めよう」

ふんっ、と鼻を鳴らして城から離れていく。
夜に見る魔王城は、とっても怖い雰囲気がある。
人間が見ればそう思うだろうが、ロアは違う……生まれた時から魔界育ちだから何とも思っていない。

と、そんな事はおいといて……ロアは暗い城下街を歩いていく。

「なるべく目立たん場所でやりいのぅ」

なにやら、良からぬ事をするみたいだ。
その為に城を抜け出したのか? 悪い娘がここにいる。

「父上はそうでもないが、ヴァームの勘は鋭いからのぅ。場所選びは大切じゃ」

ボソボソと呟きながらキョロキョロする。
だが、ロアが言う目立たない場所は見付からないのか相当困りながら歩いてる。

「……と言ってものぅ、ヴァームの奴、城下の事は知り尽くしておるからのぅ。わらわの様な協力な魔力を使えば、どんな目立たぬ場所でもすっとんで来るじゃろうなぁ……」

魔力? もしかしてロアは魔法を使おうとしているのか? 一体なんの? そんな疑問が残るなか「んー……」と唸り立ち止まる。

「と言うかもうバレてそうで怖いのじゃ。まぁ……大丈夫じゃとは思うがのぅ。一応わらわの部屋にダミーを置いて来たから大丈夫な筈じゃ」

そう、ロアは城を抜け出す際……ある裏工作をしたのだ。
万が一、夜ヴァームがロアの部屋を訪ねた時の為の工作を……。

「しっかりと脅し……ごほんっ、協力して貰ったから大丈夫な筈じゃ。わらわの弟を信じようではないか!」

ぐっ! と拳をつくりながらそう信じる事にした。
と言うか……いま、確実に脅すと言った。
誤魔化したが言い切ったから時既に遅い。

あぁ、因みに……今、ロアが言ったことは全て真実だ。
ここに来る時、ラキュを訪ねて「今夜、わらわに変装してわらわの部屋で寝るのじゃ」と言ったのだ。
勿論ラキュは「はぁ? なんでさ……」と言った、当然の反応だ。

しかしだ……。
ロアは直ぐ様言ったのだ「理由は言えぬ」と。
そんな事言われたら、当然納得が行かなくて「断るよ。なんか面倒に巻き込まれそうだしね」と言ったのだ。

それで話はお仕舞い。
ロアの裏工作は失敗におわっ……たりはしなかった。
ここからが、ラキュにとっては可哀想な事が起きる。

それはロアの理不尽な言葉から始まった。

『黙れ。姉の言うことは素直にきけい。さもなくば……お前が、たまらなく可愛い服とか着たいと言ってたとヴァームに言うぞ?』

これを言った瞬間、ラキュは慌てて「はぁぁっ! そんな事言ってないよ!」と抗議する。
しかし「あぁそうじゃな。じゃからそう言った様に仕立て上げると言ってるのじゃよ……くふふふふ」と言いながら悪い顔をして言い放った。

ラキュは顔をひきつらせた。
この姉、実の弟を脅して来た……そう思った矢先、ロアは急に笑顔になり「嫌だったら分かっとるよな?」と言った後、さっさとその場から去っていった。
酷い姉である、もう一度言う……ひっどい姉である!

まぁ、ラキュもその脅しに屈して現在は言い付け通りロアに変装してロアの部屋で寝ている。
小声でロアに対する文句を言いながら一夜を過ごすんだろう……。
その事は当然、ロアは知らない。

「ま、ラキュの事じゃ。快くやり遂げてくれるじゃろう」

違う、思いっきり不満を抱いてやっている。
自分の気持ちを押し付けるのはそろそろ止めた方がいい。

「それよりも、早いところ目立たぬ場所を探さぬといかん。探してる内に夜が明けてしまったら目も当てられんからのぅ」

ラキュの事を、それよりもの一言で片付け場所探しを開始する。
実は先程から大通り、魔物の通りが少ない場所を歩き回ってるのだが……これと言った所は見つからない。

「むぅ……。こう探してる内に夜道を歩いておる魔物に出会しでもしたら確実に父上に告げ口されてしまう。うぁぁぁっ、そうなったらわらわ泣くからな!」

見事に自分勝手な事を言い放つ。
ロアに自分を省みると言う言葉は無いのか? なんて突っ込んでやりたい雰囲気になったその時だ。
ロアの脳裏にビビッ! と電流が走った。

「っ! こっこれじゃ!」

目を見開いて叫んでしまった、直ぐに不味い! と思い口を塞ぐ。
辺りをくまなく見渡す……魔物が声に反応してこっちに来るかと思ったが、来る様子は無い。

どうやら聞こえなかったみたいだ。
それだったらこっちものだ……そう思い、ロアはまた悪い顔をした。

「いける、これならいけるのじゃ。いくらヴァームでもあそこの事は知らぬじゃろ」

くふふふふ……と、不気味に笑いつつロアはある場所へと足を進める。
ある場所、それは……。

「城下街地下、あそこは常時夜の空間。主に夜行性の魔物が好んで生活する場合……しかし、あそこは地下、地面で魔力が遮断され、わらわが魔法を使っても関知されぬわらわにとっては絶好の場所! なんで早くおもいつかなかったのじゃろう……わらわったら抜けておるのぅ、くはははは」

軽快に笑いロアはひっそりとした細い路地を歩いていく。
歩き続けて行く内に行き止まりに行き着いた。

そこでロアはまた、くふふふふ……と笑った。

「さて、では行こうかのぅ……城下街地下へ!」

そう宣言した後、ロアは行き止まりの壁をペシペシと叩く。
そしたら、ゴゴゴゴーーと音を上げて地面から穴が現れた。

その瞬間、ロアはその穴に飛び込んだ。
こここそ、ロアが言う城下街地下への入り口。
改めて言わなくても画面の前の君達なら分かっているだろうが……あえて説明する。

まぁなんにせよ、ロアは城下街地下に行った。
そこで何をするのかは、流石に分からないが……大体の察しはついている。

さて……ロアはこの後どんな事をやらかすのだろうか? 正直、この先不安しか見当たらないのだが……ロアにとっての冒険が今、始まるのである。

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