どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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俺は今、ラキュからロアの過去を聞いてる真っ最中。
途中で何度も突っ込んでやろうと思ったが……話が止まるから黙って聞いていた。

「て、感じに色々してたんだよ。驚いた?」

ラキュはにっこり笑って言ってくる。
うん、驚いた、それもかなりな……まさか俺が幼い頃そんな事されてるなんて知らなかった。
普通に犯罪だぞ! って思う所が沢山あったな。
だがまぁ……。

「おっ驚いた。なんと言うか……ラキュ、お前も大変だったんだな」
「あ。分かってくれる?」

あぁ分かるさ、振り回される大変さはな。

「ほんと、大変だったよ。姉上って知っての通り強引だからさ」

それはよく知ってるよ、その強引さのせいで色々されたからな……。

「だからさ姉上がこっそり人間界に行って、それがヴァームにバレて怒られた時はスカッとしたよ」

くははは。
と軽快に笑いながらそう言うと、ふぅ……と一息ついて遠くをみる。

「なぁラキュ。気になるんだが……ロアが人間界に行った時、なんでお前がロアの行動が分かったんだ? 一緒には行ってないんだろ?」

そんなラキュに聞いてみた。
ふと気になったんだ、話の腰を折ってごめんな。
だって気になるんだ。
一緒に行ってないのに詳しすぎる、もしかしてコッソリ着いていったのか?

「ん、あぁ……その事か。簡単だよ。話に出てた魔鏡を使ったんだよ。あれで姉上を見てたんだ。ずっと部屋にいるのも暇だったからね」

なるほど……それでか、どうりで詳しすぎる訳だ。

「……って、シルク君」
「ん、なんだ?」

なんか、呆れた顔されてる。
なんだ突然、話を変えたの不味かったか?

「質問間違ってるよね? と言うかそろそろ突っ込んでよ。幼い俺に何やってんだ! って」
「…………あ」
「いや、あ……じゃないよ」

いや、まぁ……うん。
忘れてたな、と言うか……ここに来てから、され慣れてるから疑問にも思わなかった。
まぁロアならするだろうなぁ……って感じに聞き流してたよ。
いやぁ……慣れって怖いな。

「しっかりしてよ? 姉上のやった事って殆ど夜這いと変わりないんだから」
「うっ……ごめん」

あれ? 俺、説教されてる、なんか常識を教えられてるぞ……。

「……まぁ良いよ。取り敢えず、話を戻すよ」

困惑してたら、こほんっと咳払いして言ってきた。
そっそうだな、そう言う話だったな。
ラキュのロアの過去の話はまだ続きそうだ……その続きもしっかり聞こうじゃないか。

「えと、姉上が父上に話をしに行く所からだったね」
「あぁ、そこからだな」
「えと、姉上はね……」

多分、いや絶対に今言う話は大切な話だろう、ちゃんと聞かないと。

バタァンッーー
「シルク、お客さん追い払ったよ……って、あれ? らっ君がいる」

……と思ったのに、強く扉を開けてアヤネが入ってきた。

目をパチクリさせてキョトンとしてる。
あぁそうか、ラキュが来たことアヤネは知らないのか。

「……ま、いいか。らっ君おはよ」
「うん。おはよ」

まぁいいのか。
普通に挨拶してしまった、なんかこう、もっと言っても良いんだぞ? いつ来たの? とかさ。

「で、シルク。」
「おっおぅ。さらっと話を帰るんだな」
「んぅ?」
「あ、いや……別に良いんだが」
「……そか。でね、そろそろ戻った方が良いかも、仕事しないとダメだよ」

仕事に戻れ。
なんかアヤネに言われるとしっくり来ないな。
何でだろう……だがまぁ、その通りだ、仕事に戻らないとな……あ、でも。

「そうだな。でも今はラキュと話してるから、もう少ししたら……」
「ダメ。今行って」
「いや、でも」
「行かないとダメ」

うっ。
いつもなら「そか、分かった」とか言って分かってくれそうなのに……今は真面目な事いってくるなぁ。
いやまぁ、それが当たり前なんだが……正直、ラキュの話は気になる、だから最後まで話をしたい。

「アヤネ。僕もシルク君に話があるんだ、だからもう少しだけ良いかな? どうせ来るのはコスプレさせるのが目的の奴等だろうからさ」

ラキュもそうなのか、そう言うと、アヤネはふるふると顔を横に振る。
って、さらっと酷いことを言ってる、だが間違いじゃないな。

「それなら、変わりに私が聞く」
「え」

いや、代わりって……なんでそうなるんだ。

「話聞いて、後でシルクに伝えれば何の問題もない。だから仕事して」
「……出来れば、自分で聞きたいんだが?」
「ダメ、仕事するの」
「え、ちょ! 背中押すなっ! って……うぉっ!?」

アヤネにぐいぐい背中を押され、部屋から出されてしまった。
直ぐに入ろうと思って扉を開けようとしたが……ダメだ、開かない。
ドアノブをガチャガチャ回して押してるんだがビクともしない、くっそぅ開かない様に押してるな?

どうやら何としても俺に仕事させたいらしい。
……まぁしなきゃダメだんだがな、気になるんだよラキュの話が。

だから先に聞いておきたかった。
だけど、これじゃぁ聞けない……。

「なら仕方無いか」

早々に諦めよう。
で、アヤネが言った様に後で何を話したのか聞こう。

……今思ったんだが、なんでそんな回りくどい事をするんだ? 普通にラキュから話を聞けば良いだけだと思うんだけど……。

って、気にしても仕方無いか。
しょうがない、仕事するか……来るのは迷惑な奴ばかりだけどな。

そう思った俺は、内心ラキュの話の続きが気になりながらもカウンターの前にたった。

あのあと、ロアは父親になって言ったんだ? すっごく気になるな。

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