どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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ヴァームの話を聞いてから、数日経った。
あの話を聞いてから、俺はため息ばかりついている。

「はぁ……」

自分の鈍感さがここまでだとはな……本当に呆れて物も言えない。

「のぅ、ヴァームよ……。なんか最近シルクの様子が可笑しくないかえ?」
「えぇ……そうですね」

それを心配する周りのヒソヒソ話が止まらない。
不味いな、少し控えた方が良いかもしれない。

いま、ロアの部屋にいる俺はそう思って咳払いし何とかため息を抑える様に努力する。
いや……しかしな……うん。

「……っ」

ロアを見てると、その、やっぱり色々と思いが込み上げてため息がでてくる。

「うぐっ、いっ今シルクがわらわを見て目線をサッ! と反らしたぞっ。もっもしかしてわらわ……嫌われた!」
「いえ、そんな事はありません」

二人が向こうで色々話してる、だが聞こえない。
……なんか、ここに居ずらくなってきた、離れよう。
という事でゆっくり立ち上がる。

「ん、シルク。何処に行くのじゃ?」
「……うん」

ロアに話し掛けられたが、素っ気なく返して俺は静かに部屋を出ていった。
なんだか……ロアと同じ場所にいるだけで、罪悪感が生まれてくる。

暫く、距離を取ろう……そんな気分になってしまった。
ごめんロア、俺はお前に好かれる資格の無い男だ……。



「ヴァームよ」
「はいロア様」

ゆったりと椅子に座るわらわは、隣でしゃなりと立つヴァームに話す。
ちと聞いておきたい事があるのじゃ。

「わらわの過去の話し、きちんと話したんじゃよな?」
「はい、包み隠さずお話ししましたよ」
「うむ、そうか」
「はい」
「その……ありがとなのじゃ」
「ふふふ、どういたしましてです」

ふむ、きちんと話したと……なるほどな。
話したのか……それは良かった、それはそれで安心した。
しかしじゃ……。

「ならば、シルクはわらわに対して赤面するなり上手く話せなくなる。って感じの反応を見せるかと思ったんじゃが……」
「はい、私もそうおもってましたが……見せませんね。それどころか、ロア様と話そうともしませんし、目も会わそうとしませんね」

そうじゃな、その通りじゃ。
あれから日にちが経っておるのに……ビックリする位何の進展も無い。
いや、むしろ……酷く悪化してるかの様に思える。

そんな事を考えたわらわは、すぅ……と一呼吸した後、眼を瞑り……カッ! と眼を見開き、勢い良くヴァームを見て言い放つ!

「シルク辛そうな顔して出ていきおったぞ!」
「そっそうですね……」

椅子をガタンっ! と揺らして、なぜじゃ! と思いつつわらわは慌てる。
ヴァームもしっかりシルクが変なのを感じておるらしい。
おっ可笑しい、明らかに可笑しい、さっきのシルクは凄く変じゃった。
なんと言うか、どよーんって感じに落ち込んでたぞ!

「なっ、何があったと言うんじゃ」
「それは分かりません、ただ……」
「たっただ?」

なっなんじゃ、気になる言い回しじゃな。
まっまさか、何か心当たりがあるのかえ?

「私がロア様の過去の事をを話し終わった時から様子が変になった……そんな気がします」
「……」

え、なんじゃそれ。
思い悩みながら何を言うかと思えば……。

「げっ原因、それじゃないのかえ?」
「……それは分かりません」

いや、分からんて。
わらわはそうとしか考えられんのじゃが?

「いっ一応確認じゃが」
「はい、なんでしょう」
「何も変な事は言っておらんよな?」
「…………はい」
「え、えらく間があるのぅ。嘘は言っておらんな?」
「勿論です」

ふむぅ、すんなり言ったの、まぁ……ここは信じてやるか。

…………。

「どうしよう! わらわ、やらかしたかもしれん!」
「おっ落ち着いてください、ロア様は何もやらかしてません」

焦ったわらわは立ち上がって、ヴァームをがくんがくん揺らす。
それを抑えながら頭を優しく撫でてくるヴァーム。

「やっやらかしておらんって……わっわらわ、自分が言うべき事を他人に言ってもらったから……しっシルクは、わらわに幻滅したんじゃないのかえ?」

うっうぅぅ。
そうとしか思えん……きっとそうじゃ、絶対に……そうなんじゃ。
わらわが自信が無いから、勇気が無いから……しっシルクは……。
あ、だっダメじゃ、かっ身体が震えてきた、もっもしかしなくてもわらわ……完全にシルクに嫌われ……。

「そんな事はありませんっ! 絶対に!」

ぱこんっーー
「ひゃぎぃっ」

いっいた、え? え……わらわ、叩かれた? なっなんで?

「良いですかロア様?」
「おっおぅ……ふぁ!?」

なっなんっ、なっ……かっ顔ちか……。
なんか、ずいっ! と近寄って来たのじゃ!

「好きな人を信じてください。幻滅されたとか、嫌われたなんて2度と思わないでください! 昔にも言いましたよね? シルク様はそんな事を思う人なんですか?」

っ!
ヴァームの言葉が、わらわの心に深く突き刺さる。
……そうじゃよな、シルクがそんな事を思う筈がない。
様子が変なのはきっと体調が悪いとかそう言うのじゃ。

そうでなかったら……えと、あれじゃ。
……っ! ただの照れ隠し! そうに違いない!

「ヴァーム、ありがとなのじゃ。お陰で気が楽になった」
「いえ、お気になさらないで下さい」

にこっ、と笑うヴァーム。
その笑顔に釣られてわらわも笑った。
……ん? 急にヴァームが扉の方に歩いて行きおった。

「ヴァーム、どこへ行くのじゃ?」
「少し用事を思い出しました。と言っても簡単な用事です……少ししたら戻ります、では失礼しました」

そっそうか……用事か。
にしては顔が怖いのぅ、よっ余程大事な用事なのかえ? そんな事を思いながらヴァームを見送った。

部屋に独りになったわらわは、また椅子に座り暫くぼぉっとする。
……ぼぉっとしておる場合ではないか。

「シルクが元気になる為に何かするかの」

パンっーー
気合いを入れるため、手を叩いたわらわは、また立ち上がり行動に移る。
シルク、何があったか知らんが……わらわが元気付けてやるぞっ、じゃから……暫し待っているのじゃ!

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