どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

501

アヤネの指示で色々とやっている最中、俺はふと思った。

さっきは色々あって思わなかったが、アヤネってサバイバルの知識が豊富なんだな。
ん? なんでそう思うのかって? それはな。

テキパキし過ぎなんだ、行動の何から何までな。
それが気になって仕方無い、ふむ……だったら一度聞いてみるか。

「アヤネ、やけにサバイバルの知識が豊富だがどうしてだ?」
「んう? そう?」

いや、そうだよ。
普通の人ならこんなにテキパキ行動できないぞ?

「んー……詳しいかどうかは分かんないけど、そう思ってくれるのは嬉しい。ありがと」
「おっおぅ」

なんだか良くわからんが……自分で意識してないけど知識はある、と考えておこう。

「あ」
「ん、どした?」

アヤネが突然手を止めた、そして、じっと俺を見てくる。

「もしかしたらあれかもしれない」
「あれ?」
「そう、あれ」

……いや、全くわからんのだが? あれってなんだよ。
俺が良く分からないぞ? って顔をすると、アヤネがくすっと笑いだす。

「私ね、シルクを探しに来たでしょ?」
「あぁ、そうだな」

アヤネは俺を探すためにここに来た。
今更言わなくてもそれは分かってるぞ。

「その時にね、野宿したの」
「……ほぉ。そうなのか」
「うん、そうなの」

なるほどな。
その経験があって知識を得たのか。

「でも、前々から野宿の知識はあったんだろ? じゃなかったら、ぶっつけ本番で野宿は出来ないもんな」
「ん? ぶっつけ本番だよ」

……まじか。
だったら経験とか知識とか関係ない気がしてきた。
ただのアヤネの生命力と本能で生きてるだけじゃないか。
いや、それでも充分凄いか。

「私強いから出来たの」
「へっへぇ……」

得意気に胸を張るアヤネ、俺は苦笑するしかなかった。
もはや運を超越した生命力を持っている……アヤネよ、お前……本当に人間なんだろうな?

「それにね、私勘鋭いから平気だったの。きっとそう」
「あぁ……えと、うん、そっそうなのか、すごいなー」

はははは……乾いた笑いをした後そう言うと、アヤネは嬉しかったのか微笑んだ。

「じゃ、シルク。そろそろお喋りはおしまい、仕事しよ」
「おっおぅ」

そう言われて手を動かす。
……ほんと、アヤネは凄いよ。
色々と規格外だ、なんか男の俺が惨めに思えてくるぞ。
俺、体力ないもんなぁ……近くに人間場馴れした体力を持つ奴がいると悲しくなってくるぞ。
はぁ……。

って、ん? ちょっとまて……と言う事はだぞ? アヤネが集めてきた食べ物も怪しいよな……。

俺は一旦手を止めてその方を見る。
見た目なんの変鉄も無いキノコに見える……その横の野草? もなんの変鉄もなさそうだ。
だがしかし、何にも無いように見えて実は猛毒だったなんて事は……実にあり得る訳で非常に怖くなってきた。

「なぁ、アヤネ」
「ん?」

だから声を掛けてみた、アヤネは今、火を起こしている。

「……アヤネが集めてきた食べ物って、毒とか無いよな?」
「無いよ。その点は安心して……美味しい食べ物の知識はバッチリ」

そっそれは安心していいのか? すっごく不安だ。
正直、毒がある疑惑たっぷりの食べ物なんて食べたく無いぞ。

毒キノコは焼いたって毒は抜けないって良く聞くし……ほっ本当に大丈夫なんだよな? 普段のアヤネを見てたら……その、なんだ……信用できないんだ。
だって、アホな事ばっかり言うし……。

あ、そんな事思ってたらアヤネが俺の事を見てきた。

「シルク……」
「なっなんだ?」

やばい、今思ってる事を悟られたか? 直ぐ様視線を反らして適当に手を動かし誤魔化してると……。

「火、着いた」

そんな事を笑顔で言ってきた。

「……あ、ほんとだ」

メラメラと火が靡いてる。
うん、火起こし出来るって凄いな……。
それと、悟られて無くて良かった。

「じゃ。適当にすわってお昼にしよ」
「適当に座るって、思いっきり地べただが……良いのか?」
「良いの。魔王城行くまでずっと地べたでご飯食べたりしたから慣れた」

そっそか、慣れたのか。
だったら良いが……服とか汚れるぞ? 本当に良いのか? なんて思いつつ、俺はアヤネの言われた通りにその場に座った。
秋の森、涼しい中で外で食べるキノコと野草……さど美味しいんだろうなぁ。

そう思いながら、俺とアヤネはキノコを棒に刺した。
それが良い感じに焼かれるまでぼぉ……っと待った。

あ、今ふと思ったんだが焚き火って人生初だな……なんか、良いもんだな。
そんな事を思いながらキノコが焼けるのを待った。

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