どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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俺とラキュとアヤネは何処へ行くか決めずに魔王城の廊下をあるいていた。
しかし、このまま廊下を歩き続ける訳にもいかないから、とある部屋へ行く事にした。

その部屋とは……ラキュの部屋である。

「まっかっか。趣味悪い」
「失礼だね」

アヤネよ、それ俺も思った。
部屋全体がトマト家具一式って常識を疑うよな。

「ねぇ、何か失礼な事考えてない?」
「……いや、何も考えてないぞ」
「そう」

ジト眼で見てい来たから、直ぐ様ごまかす。

「まぁ、座りなよ」

そう言って、ラキュはトマト型のソファーを指差す。

「……トマトだ」
「あぁ、この部屋の家具は全てトマト型で統一してるんだ」

じぃっと、トマトソファーを見つめるアヤネ、それに勢い良く座った後、キョロキョロしだした。

「ほんとだ。変なの」

うん、確かに変だ。
だけど、本人を目の前にして良く言えたな、流石アヤネだ。

「えぇ、別にへんじゃないよ。そうだよねシルク君」

え、そこで俺に振るか? 滅茶苦茶困るんだが……これ、答えないとダメなのか。
目が言えって言ってるもんな、仕方ない……答えるか、えと、そっそうだな。

「まっまぁ、こう言うのって人それぞれの感性ってものあるならな」

取りあえずこう言っておくか。

「なんか曖昧な返事だね。まぁ良いや、シルク君も座りなよ。飲み物用意するよ」

良かった。
納得いってなあ顔をしてるが誤魔化せた。
ふぅ……と胸を撫で下ろし、ラキュに言われた通り、ソファーに座る。

相変わらず、ふわふわしてて凄く良い座り心地だ。
アヤネもそうなのか、満足そうに、ゆさんさと身体を上下に揺らして楽しんでる。

「私……フルーツジュースで良いよ」

そうしながら、そんな事をいった。
すっごく図々しいな……そこは「お構い無く」とかそう言う風な事を言っとけよ。

あと、ここではフルーツジュースは出ないぞ。

「ごめん、トマトジュースしかないんだ」
「えぇぇ……」

な? 無かっただろ。
ここに来て、出される飲み物はトマトジュースだけだ。

「まっ、いっか。トマトジュース嫌いじゃないから」
「あ、良いんだ」
「うん。細かい事は気にしない」
「そうか」

きっと「今はフルーツジュースを飲みたい気分」とか言うだろうなと思ったが……言わなかったな。
まぁ、アヤネが良いならそれで良いか。

「シルク君も良いよね?」
「あぁ、良いぞ」

俺がそう言うと、ラキュは早速準備をしに行った。
……そう言えば、ここに来たら、必ずトマトジュースを飲んでる気がするな。

あと……今、ふと思い出したんだが、あんまり良い思いでが無い気がする。
前の記憶を引っ張り出すと……そうだな、ヴァームから逃げた時、ここにやって来てくつろいでたら、急に次元に穴を開けてヴァームがやって来て酷い目にあった事がある。

あれは嫌な思い出だ。

「どしたの?」
「いや、なんでも無いんだ。なんでも……」

アヤネは不思議そうにしてたが、俺の言葉を聞いて「そか」と呟き、再び身体を揺らしはじめた。

俺は、虚しい顔をしながら遠くを見る。
よそう、こんな事思っても仕方ない、もう過ぎた事なんだ。

それに、今はヴァームから逃げてる訳じゃない。
だから、こんな事思い出して怖がる必要なんて無い。

「お待たせ」

と、考えてる間にラキュがトレイの上にトマトジュースを入れたグラスを持ってきた。
それをテーブルに置く、そしてラキュはソファーに座った。

「味わって飲むと良いよ」
「はぁい」
「あぁ」

にこっと笑うラキュ、俺とアヤネはグラスを持って、トマトジュースを飲んだ。

うん、今回のトマトジュースも美味しい。
こんなに美味しいものを味わってる時に、嫌な思い出の事を考える必要はない。

今は、皆が起きるまでティタイムとしゃ込もう。
そして、色々話をしようじゃないか。

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