どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

429

二度寝した俺、そこから何分か経った頃、いやなん10分のかも知れんが……。
ようやく、目が覚めはじめた。
あぁ……なんだ? なんか、頭が妙に柔らかい物に触れてる気がする。
少しずつ眠気が薄れてきて、それを感じ始めた。

「……ん、んん……ふっあぁぁあぁぁっ……ん?」

大きな欠伸、そして上に向かって手を伸ばす、それをやった後、気付いた。
なんか手に当たったな、むにって感触がしたぞ。
柔らかい……なんだこれ? しかも妙に良い匂いしないか? それに……顔から下が妙に固い、可笑しいな、俺……ベットで寝てた筈なのに。

眠たさで重かったまぶたを少し開けてみる。
景色が掠れはしているが……大きくて丸いものが2つ見えた。

……なんだこれ、朝から妙な物を見てしまった。
気になるので、指で突っついてみた。

「ひゃっ! な……じゃ!」

……声がした。
しかも、何か怒ってる気がする。
ふむ、訳が分からない……しかしまぁ、起きれば分かるだろう。

という訳で、まだ眠気は取れてないが起きる事にした。
重たい身体をぐっ! と起こし上体を起こした。
そしたら、顔に柔らかいのが当たった、その瞬間……。

「ぬわぁあぁぁぁっ!!」

叫び声が聞こえた。
……朝から騒がしい、なんだよ、寝起きなんだから叫ばないでくれ、頭に響くだろう。

なんだよ……そう思いながら眠たい眼を擦る、そしたらようやく景色がハッキリしてきた。

「……なに、してるんだ? ロア」

なんだか知らないが、今俺はロアに膝枕されている。

「そっそれは、こっちの台詞じゃ!」

顔を真っ赤にするロア、ずざっと後ろに下がる。
そしたら俺は膝から落ちて、床に頭を打ち付ける。

「っ……」

痛い……酷い奴だ。
後ろに下がるなら一言なんか言ってから下がれよ、俺を膝枕にしてたの分かってるだろう。

……いや、まて、可笑しい。
なんでロアが俺を膝枕してるんだ? 何があってそんな事が起きてるんだよ。

がばっ! と起きて立ち上がる。
そしたらロアも立ち上がった。

「説明、してもらえるか?」

また勝手に膝枕したんだろうが、理由は聞いておかないとな。
ジッとロアを見つめると、狼狽える様に俺を指差してきた。

「せっ説明するのは、しっシルクの方じゃ!」

……ん? なんだろう、怒ってる様に見える。
腕をぶんぶん振ってるな、しかも地団駄も踏んでる、器用な奴だ。
なんて思ったが、とりあえず聞いてみる。

「えと、怒ってるのか?」
「怒っておるわ!」

見て、なんとなくそうだと思って聞いてみたら……怒ってた。
なぜだ、なんで怒ってる? 心当たりなんて全くないぞ。

「何を怒ってるんだ?」
「なっ何を……じゃと! ぐぬぬっ、可愛い顔して惚けるのか!」
「可愛いって言うな」

惚けるも何も心当たりが無いからどうしようもない。
あとな、何度も同じ事を言わせるな、俺に可愛いって言うんじゃない!

「むぐぐぐぐぅ……」

地団駄を止めて、ギリギリと歯軋りするロア。
相当怒ってるな、すっごく睨まれてる……俺が何したって言うんだよ。
困ってため息をついた時だ……。

「どうやら困ってるみたいだね」

そう言って、ラキュが俺とロアの間に割って入ってきた。
……起きてたのか、じゃぁアヤネも起きて……ないな「くかぁぁ」ってイビキかいて寝てた。

「シルク君、なんで姉上が怒ってたか教えてあげようか?」
「え、ラキュは知ってるのか?」
「知ってるよ、朝早くからあんなに暴れれば眼も覚めちゃうよ」

おっおぅ、俺は構わず寝てた。
普通そうだよな、騒げば起きるよな……あまりに眠たかったから寝てしまったな。

と言うか、ラキュ……やたらニヤニヤしてるな。

「なっ! ラキュっ……あの時の事っ、見ておったのか!」
「さっき見てたって言ったじゃん……」
「よりにもよって、こやつに見られるとは……」

ふむ、なんだか良くわからんが、俺……ロアに知らない内に何かしたらしいな。
だったら知るべきかも知れない、そして謝るべきだ。

「じゃぁ、その話を教えてくれないか? 悪い事してたら……謝りたいからさ」
「あ、良いよ。教えてあげる」

申し訳なさそうにそう言うと、すんなりラキュが答えてくれた。

「んなっ! べっ別に知らなくても良い! そっそれに……わっわらわっ、おっ怒っておらぬっ」
「いや、さっき怒ってるって言ったが……」
「きっ気のせいじゃ! じゃからラキュ! 言わんで良いぞ! あっあの時は……その、いっイキナリで驚いたからな……そっそれでちと慌てただけじゃ! それ以外の何物でもない! 以上っ、この話しは終わりじゃ!」

……やたら長々と話したな。
なんか誤魔化してる気がする。
眼も泳いでるし、明らかに慌ててる……それに顔が真っ赤っか、これは何かあるな。

「くふふふ、姉上。シルク君には全てを知ってもらうべきだよ、だから言うね」
「言うなぁぁぁぁっ!!」

しゅばっ! とラキュに向かって飛び掛かるロア。
しかし、ラキュはそれをヒラリと交わす、そしたらロアはそのまま床にビタァァンッ! と身体を打ち付けてしまった。

「いだぁぁぁぁぁっ!!」
「姉上大丈夫? 転けたからそこでじっとしてなよ」
「くっ、こやつ……意地でも止めてやるぞ!」

キッ! と顔をしかめて再びラキュに襲い掛かるロア。
そんなロアの制止を無視して、ラキュは不適に笑いながらロアの攻撃を交わしつつ話し始めた。

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