どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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すぅ……と、軽く深呼吸した、これからどうするか……今しっかり考えた。
だから、それをキッチリ伝えるよ。

「私、シルクにアプローチいっぱい仕掛けて付き合うの。それでね……ぜっったい結婚するのっ!」

ふんっ、と鼻を鳴らして言い放った。
私の声にビックリしたのか、パパは目をまぁるくしてる。
ママは「まぁ……」って呟いた。

「おっおぉ。ハッキリいったな。そうか、なるほど……」

ちょっぴり戸惑ってる。
変な事……言ったかな? 言ってないよね? 思った事言ったから……変じゃない筈。

そんな心配をしてたら、パパが、「ふむっ」て言いながら顎をさすった。

「それはつまり、家には帰らない。そう言う事か?」
「……そう言う事に、なる」

恐る恐るそう言った。
シルクと付き合うまで、私はここにいるつもり、そう決めた。
だから意見を変える気なんてない、帰ろって言われても帰んないから。

そんな意味をこめて、睨んでやった。
そしたらパパは、ふぅ……と息をはく。
困っちゃった? 困っても意見は変わらないから。

「また振られても、意見は変わらないのか?」
「変わらない」
「シルク君が他の娘と付き合う事になってもか?」

っ!! そっそれは……。
いや、迷っちゃダメ! そうなったら……駄々をこねるっ。
付き合ってくんなきゃヤダって言うもん。

「帰らない。その時は……なんとかする」
「むっ。曖昧な返事だな」
「だって、先の事なんて、分かんないもん」

だからこんな言い方しか出来ない。
でも……私本気だもん、その気持ちを伝えるために、じっとパパを見つめた。
そしたら、無言のまま見つめ返してきた……うっ、なんかプレッシャー感じる。
ちょっぴり怖い。

「その通りだな」

っ、ビックリした……急に喋った。

「ふむ。そうか……それがアヤネの答えか。なるほど……」

うんうん、と頷くパパ。
なんか納得したみたい、ママは「アヤネちゃんらしいですねぇ」と言って笑ってる。
……よく分かんない、私らしいって、どういう事?

「それが、アヤネのやりたい事か」
「……うん」
「そうか。やりたい事をここで見つけたか」

そう。
ここで見つけた、だから……お家には帰んない。

「まさかここまでハッキリと答えを示すとはな、予想外だ」
「そぉですねぇ、予想外ですねぇ」

予想外なんだ。
……それは分かったけど、結局の所、パパとママは何が言いたいの? まったく分かんないよ。

「アヤネ」
「なっなに……」

びくっ、と肩を震わせて答えると、パパはにこっと笑った。

「それだけ言えれば、問題ないか」
「え、どゆこと?」
「気にしなくて良い」

えぇ……そう言われても気になる。
って、あ……パパが椅子から立ち上がった、ママも私の後ろを離れちゃった。

「ここに残るなり、家に帰ってくるかり好きにすれば良い」
「……え!?」

うっうそ、ほんとに? ほんとうに本気で言ってるの? だったら、ここにいるよ? 
でっでも、一応本気で言ってるのか確認しよ。
嘘だったら嫌だもん。

「ほっほんとに、残って良いの?」
「うむ」
「えっえと、剣を継ぐのは……」
「あぁ、それは……なんとかなるだろう。多分だが」

たっ多分……すっごくあいまいだ。
でっでも、そうか……私、ここに残って良いんだ。
パパは嘘はついてない、澄んだ目をしてたもん。
私には分かる。

「アヤネちゃん」
「なに、ママ」

私の前に来たママはぽんっと肩を叩いてきた。
いつもにっこり顔なの、今は真面目な顔をしてる。

「ふぁいと、ですよ! シルク君の心を射止めるんですっ!」
「ん、頑張る」

励まされた。
じゃ、ママもここに残って良いって思ってるんだ。
嬉しい……ちょっぴりほっこりした、思わず微笑んじゃった。

と、その時……。

「……ここに残って良いが。心配はしてるんだからな、必ず元気でいるんだぞ」

パパが、私に背を向けてそう言って来た。
心配、してくれるんだ……かなりワガママ言ってるのに、家出しちゃったのに……心配してくれるんだね。

嬉しい。
だから、ちょっぴり涙が出てきちゃった、だからその涙を拭って……。

「うん、元気でいるよ。あと……心配してくれて、ありがと。嬉しい」

微笑みながらそう言った。
そしたら、ママは背を向けてるパパの側へと小走りする。

「じゃ、ふぅちゃんとママは帰りますっ! 風邪引いちゃダメですよぉ」

ぶんぶん手を振った後、パパと同じ様にママも背を向けて……部屋から出ていった。

……そっか。
もうパパとママ、帰っちゃうんだ。
その事は直ぐに分かった、だから私は直ぐに部屋を飛び出した!

そして、もう遠くにいるパパとママに向けて……。

「パパっ! ママっ! 私っ、頑張るよ!」

大声で伝えた。
2人は前を向いたまま、手をあげて応えてくれた……パパとママ、応援してくれてる……。

そんな気持ちを感じ取って、気合いが入る。
手をぎゅっと握って闘志をメラメラ燃やす。
頑張らないと。
今さっき頑張るって言った、応援もしてくれてる、だから頑張ろ、例えシルクが……ロアの事を好きだとしても。
私、頑張るよ!

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