どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

447

ジュゥゥ……ジュゥゥ……ジュワァァァァ……。

おにぎりを作るに当たって聞こえない筈の音が聞こえる。
しかも、すっごく良い匂いをさせている。
あぁ……お腹減ってきたなぁ。

アヤネはコンロに火を付けてフライパン暖めて水を入れた。
それから、水気が無くなるまで炒めて……卵、ベーコン、ネギを加えて、お玉でカシャカシャ炒めてる。
あと、醤油か何かを入れてた。

うん、美味しそうだ……完成が楽しみだなぁ。

「一度、おにぎりって奴を教えてやりたいぜ」

鬼騎、それは言ってやるな、俺はもう思わない様にしてる。
だって、変な事起こらなさそうだ、だから何も不満は無い。

「ふふ。良い感じ」

おぉ、そうか……良い感じなのか、それは良かった。

「さて、アヤネさんの様子はそこそこにロア様の様子を見てみましょう」

あ、そうだな。
ロアの方もみてみよう。
……おっおぅ、ロアの方は米が炊けたみたいだ。
で、その米を……アンコで包んでる。

「こっちもこっちで可笑しな事してるよ……」
「えぇ、そうですね」

ヴァームとラキュが苦笑いで話し合う。
うっうん……そうだな、最早これが何の勝負なのか分からなくなるな。

「くふふふ……。わらわの素晴らしいアレンジに言葉も出ん様じゃな」

あぁ、ロア? 得意気に笑ってるけど……お前が作ってるの、おにぎりじゃないからな。

「ロア、甘い。私のアレンジの方が凄い」
「くふふふ……凄い自信じゃのぅ」

なんか、二人が笑いあってる。
アレンジか……なるほど、アレンジな。
じゃぁ2人共、違うもの作ってるとって知らないで調理してるのか。
……それってある意味凄くないか?

「さて、審査員のシルク様、ラム様。お二人の様子を見て……どうでしょう? なにか思った事はありませんか?」

って、うぉぅ。
話し振ってきた、何か思う事って言われてもなぁ……えーと。

「あぁ、うん……あれだ、頑張ってるんじゃないか?」

取り敢えず、こう言った。
かなり手抜きの感想だ、いやだって……それしか思う事、無いんだ。
違う料理作っててバカみたいって言う訳にもいかないからなぁ、難しいもんだ……。

「ロア様もアヤネさんも独特な調理をしていますわ。気になるのは……やはり味ですわ。ロア様のは美味しいに決まってますけど」

こっちは、それらしく言ったな。
凄いなぁって言いたい所だが、後半自分の想いが入ったな。

「そうですか。ありがとうございます」

そう言ったヴァームは、視線をロアとアヤネに移す。
そして……。

「なにはともあれ、先行きが楽しみ……と言う事ですね」

そう言った。
そしたら、それを拍車に2人の動きが素早くなる。
アヤネはお玉でフライパンをカチャカチャ鳴らしながらフライパンを振るう。
様になってる……なってるけど、素直に凄いと思えないのは何故だろう。

ロアの方は「くふふふふ」と笑いながら調理を続ける。
だんだん、おにぎりとは違う物が出来ていく……。

そして、暫く時間が経ったと時……。

「完成じゃ!」
「出来た」

ロアとアヤネが作ってる物を皿に盛り付け、同時に言い放った。
出来たか、うん……今回はどちらも食べれる料理が出来た。

お題とは全く違う物だけどな。

「シルク様? なんですのその顔、どうかしましたの?」
「あ、いや……気にするな」
「……?」

ラムが、俺が苦笑いしてるのが気になって覗き混んで来た。
色々突っ込んでやりたい事が山程あるが……それを言うのは、もうちょっと後で良いだろう。

まぁ、取り敢えずあれだ……いよいよ試食の時が来たな。
いただこうか、2人の料理を。

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