どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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クーを背負って地上に出て、出来るだけ素早く魔王城へ向かう事だけを考えた。
はやく、はやく行かないと……。

その甲斐あって、素早くメェの元へと辿り着いた。
今日も変わらず白衣を着てる。

「ほへぇ、見事に気を失ってるですぅ」

ベッドに寝かしたクーを観たメェはそう言った。
それは分かってるよ、僕が聞きたいのはそう言う事じゃない。

「大丈夫なの? 何処か悪くしてない?」
「あぁ、その心配はないです! ただ気を張り過ぎて倒れちゃっただけです」

そう、良かった。
って、気を張りすぎて倒れるって……ほんとに大丈夫なの?

「だから、安心するです」
「それ、安心して良いの?」
「良いですよぉ」

呑気に笑いながら言われたら今一信じられないんだよね。
まぁ、医者のメェが言ってるんだから間違いないんだろうけど。

「そう。だったら僕は行くよ、クーに伝えといて、あんまり無理しちゃダメだよって」
「えぇ……。そう言うの自分で伝えた方が良いです」
「そうだけど、僕はやる事があるんだ」
「え、やる事……それってなんです?」

そう、大切な事なんだ。
それは……クーの被り物を探す事だ。
あれないとクーはまた、倒れるかもしれない、だから探すんだ。

多分、クーの家を探せば見付かると思う。
だから、さっさと探そう。

「そうですかぁ、でも……どのみち自分で言う事になると思うですよ?」
「え? それって……どういう事?」

全く意味が分からない。
今言えないじゃん、だってクー寝てるし。

「メェに抜かりはねぇです! 既にゲンキナッテー・ハヨメザメールGて言うお薬注射して、もう目覚める頃です!」
「え、なにその薬……」

名前からして、効果は大体分かるけど……それ、変な副作用とか無いよね? 例えば性変換とか、髪型変わっちゃうとかそう言うの……。

「にひひひ、メェのとっておきのお薬の1つです!」

やけに自信たっぷりに言うんだね。
胸なんて張っちゃって……それ、止めといた方が良いよ。
目線に凄く困る。

「そう。で? 副作用は?」
「……なんで副作用ある前提で聞くですか」

いや、そんなジト目で言われても。
今までがそうだったじゃん。

「まぁ、あるですけど」
「あるんじゃん。で? その副作用は何なのさ……変な事にならないよね?」

それが原因で大事件……なんて事は止めて欲しい。
そんな心配をしてると、メェは妖しく「にひひひ……」って笑った。

なにさ、その笑いは……すっごく嫌な予感がするんだけど。

「心配しなくても良いです! メェ、学習したですよ? 副作用は軽く抑えたです」

この際、副作用は無くせよ! とは突っ込まない。
ぶっきらぼうにこう言ってやる。

「あぁ……そうなんだ。で? それを早く言いなよ、無駄に引き伸ばさないでさ」

そう言うとメェが、寝てるクーを指差し……。

「身長が1cm伸びて、体重が1キロ減るって言う副作用ですっ。1日経てば元に戻るですよ」

そう言った。
あぁ……へぇ……そうなんだぁ……ふぅん。
本当に軽い副作用だったね、正直思いっきり疑ってたよ。
と言うかそれ、副作用じゃないよね? 微妙だけど嬉しい作用だよね。

「どうです? メェは天才だからこんな事出来るですよ?」

うわ、どや顔してきた、うっざいなぁ……。

「ちょっ、なんですか! その顔は! うざい人を見るような目をするのは止めろです!」
「なんだ。分かってるんだ、やっぱりメェは天才だね」
「ムキィィィッ! そんなんで天才って言われても嬉しくねぇですぅぅっ!」

騒がしく叫ぶメェは、拳を振りかぶりながら僕に向かってくる。
だから、僕はメェのおでこに手を当てて動きを止める。

「ぐっ! このっ! アホ! ドラキュラ! 男の娘!」
「くふふふ、ごめん……今なんて言ったの?」
「うぎゃぁぁぁぁっ! あっあたま、あたまがぁぁぁっ!!」

不愉快な事いったから、思いっきり手に力を入れてやろう。
って、少し落ち着いた方が良いかもね。
だって、さっきから暴れ過ぎだもん。

それで事が大きくなるの嫌だからね、もうちょっとメェにお仕置きしたかったけど、ここは我慢しよう。

そう思って、手を離した時だった。

「……っ、んっ……んー……っ!? あ、あれ? こっここ……どこ?」

クーが目を覚ました。
薬の効果が出たんだ、目覚めたクーは周りの景色の変化に戸惑った。
そして、僕の方を見る。

「ラキュ……くん?」

きょとんっとしたクーは、じぃっと僕を見つめ、ぼぉっとした。
ふむ、見たところ、まだ状況が掴めてないみたいだね。

じゃ。
それも含めて言おうか、何が起きたのかをね……。

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