どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

64

わらわはこの魔王城の主、名をロアと言う、今訳あって長い廊下を疾走している所じゃ! ぐぬぬっあの場で逃げてしまったのは魔王として悔やまれる……。
しっしかし仕方無いではないか……シルクがまさかあんな事をしてくるなんて思わなかったからのぅ、シルクの指先がわらわの口元に触れた時、心がどきっとした、胸が締め付ける様じゃった……だがその行為はわらわにとって物凄く嬉しい物じゃ、なのに…。

「逃げ出してしまったのじゃ」

わらわの馬鹿っ我慢すればあそこから色々出来たものを……だっだが! 突然あんな事をされたのじゃ……恥ずかしくなるのも不思議では無い。

「そもそもあの愚弟が変な事を言うから恥ずかしくなったのじゃ……」

全てあの愚弟が悪い……そう言う事にしておくのじゃ、今頃ヴァームにコスプレさせられてるじゃろう。

「今日はもう寝てしまおう……」

そうと決まれば部屋に戻らねば……あっ!シルクを置いてきてしまった! どっどうしよう……シルク1人では廊下に掛かった魔法をどうにか出来ないではないか!

「もっ戻るか?いっいやしかし逃げてきた手前戻るのは嫌なのじゃ……」

うぅぅ……魔法を解除すると言う手もあるがシルクに伝える手が無い。

「すっすまぬシルク……明日迎えに行くのじゃ」

やはりどんな状況でも感情に流されてはいかんな……大きな失敗をする事がある、それを見事に体現してしまったのじゃ……わらわはシルクに心から謝りながら自分の部屋に戻る。


「もう完全に日も落ちる頃かのぅ……」

部屋に着き、窓の方を眺める……夕焼けだった空が薄暗くなっていく。

「寝ると決めたがまだ眠くないのじゃ……」

何時もなら寝る時間は遅い方のわらわはまだ眠くない……さて、どうしたものか、この部屋に置いてある本は読み飽きてしまったしのぅ、1人だと何もする事が無いのじゃ、うむ……困った。

「そう言えばこの部屋に1人なのは久し振りじゃの……」

シルクが風邪を引いた時も別の部屋でわらわは1人ぼっちじゃったな……寂しい事を考えてしまった。

「適当にくつろぐとするかの」

そんな思いを吹き飛ばそうと何かをしようとする、しかしじゃ……やはりする事が無いのじゃ、ぐっ寂しすぎるのじゃ……やはりシルクが側に居らんとわらわは……。

「寂し過ぎてどうにかなってしまう」

そろそろ座ろうかの、ずっと部屋の入り口で立ち尽くす必要も無いしの。

「……はぁ」

重い足取りでベットに近付きそのままダイブする、ぼふんっーーとバウンドするわらわ、このベットの柔らかさは最高じゃの、それでいて寝心地も最高……隣にシルクがいれば尚良かったんじゃが。

「うぅぅ……シルクぅぅ」

寂しいっ寂しいのじゃ! わらわの失態が無ければこんな事にはならなかったのじゃ!

「うぐぁぁぁぁっシルクぅぅっ!」

感極まって叫んでしまう……だって仕様が無いではないか! 何時もならわらわの隣には最愛のシルクがいたのじゃ……。

「そうわらわの隣に……」

シルク……何時もわらわと寝る時恥ずかしがっていたのぅ、ガチガチに緊張して中々眠らなくて寝付く時は日付が変わる頃じゃった。

「この辺りにシルクが寝ていたの……」

クールな雰囲気を出す女の子の様な男……恥ずかしがり屋で体力が無くて少しいけずな男、じゃがとても一途な男じゃ……恋人がいると言ってわらわの告白を断った。

「ぅぅぅ……」

わらわは、ごろんっと何時もシルクが寝ている場所へと寝転がる。

「すんすん、仄かにシルクの香りがする…はぅぅ良い香りなのじゃぁ……」

くねくねと身体をくねらせながらシルクの残り香を堪能する、あぁ……興奮してきた、わらわは髪の毛を掻き分け首裏へと持っていく、シーツに顔を埋めてダイレクトに匂いを嗅いでみる。
ぐっ……この行為、ちょっと変態的ではないか? いっいや……今気にする必要は無いのじゃ。

「そもそも誰も見ていないしの、ちょっと位大丈夫じゃろぅ」

わらわは掛け布団を被る、そしてその中でもごもごと身体を動かし服だけをベットから投げ捨てる、一応言っておくが下着は着けておるからな? さて……たっぷりと寂しさをまぎらわすとするか、掛け布団の中で火照っていく身体……今の状況でより身体の火照りが加速するのじゃ。

「はぁ……はぁ……シルク」

わらわは自分の指先をじぃっーーと見つめ自分の胸へと持っていく、その時布団の中の薄暗かった景色が、ぱっーーと明るくなる。

「ナニしてるの?姉上……」

硬直するわらわ……後ろで愚弟ラキュの声が聞こえたのじゃ、まさかそんな事はと思いそっちの方を見てみる。

「………っ!」

そこには愚弟ラキュが掛け布団を片手に苦笑して立っていた、因みに着ている服は探偵服 (女物)じゃった、薄茶色と白のシンプルな物ふむ……中々似合っているじゃないか、いや……そんな事はどうでも良い。

「姉上……取り敢えず服着たら?」

こいつ……急に現れた挙げ句、掛け布団を剥ぎ取りわらわの下着姿を見て何時も通り話掛けてきおった、わらわの顔が赤くなっていく、わらわは物凄く恥ずかしいのにこの愚弟は謝りもしない……。

「こんの…愚弟がぁぁぁっ!」

わらわはベットから立ち上がりハイキックを愚弟ラキュの首筋に当てる!

「ごぶへばぁっ!」

バチィッーーと大きな音が鳴る、身体が宙に浮くラキュ……透かさずわらわは正拳突きの構えをとる、奴の鳩尾みぞおちに狙いをすませて……一気に放つ!

「ちぇいやぁっ!」
「がばっ!」

それを喰らったラキュは真っ直ぐ壁へと吹っ飛ぶ、そしてビタァンッーーと壁に激突したラキュはそのまま気を失う。

「姉弟にも礼儀と言う物があるじゃろうが、しかもあのタイミングできおって……」

はぁ……もう何とも言えぬ雰囲気になってしまったではないか! わらわはベットから降りて自分の服を手に取る、それをゆっくりと着て深いため息をつく。

「ラキュが起きたら何故此所に来れたかを聞くか……あと1000回顔をしばくのじゃ」 

あれではお仕置きが足りぬからな……いや起きたらでは無く今から叩き起こすか、そう思い倒れた愚弟ラキュの方へ近付き冷たい視線を向けわらわはゆっくりと足を上げるらそしてラキュの腹付近を見つめる、そのまま思いっ切り足を下ろす、その後ラキュが大絶叫をあげた後また気を失ったのは言うまでもない。

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