どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「出来たぞ、ゆっくり味わって食ってくれや」

鬼騎は出来たばかりの料理を其々の前に置いていく、今日も見ただけで旨いと分かる料理だ……つい涎が出てくる。

「ふふふ……肉ぅなのじゃぁ」

ロアに出されたのはハンバーグ、付け合わせはニンジンとポテトだ、少し分厚いステーキはミディアムレアで出されている、噛んだらそこから肉汁が溢れてくるんだろうな……。

「では頂くのじゃ!」

嬉しそうに微笑みながら直ぐ様ナイフとフォークを手に取る。

「おぅ…良く噛んで食えや」

早速ステーキをナイフで切り分け口に頬張る、そして旨そうに目を細め咀嚼そしゃくする、あぁ何て旨いんじゃ……そんな心の声が聞こえて来そうな表情をしている。

「じゃ、僕も頂くよ」

ラキュも同様にスプーンを手に取る、出されたのはミネストローネだ、これも鬼騎が人間界のメニューを見て勉強して作ったんだろう……これは勉強の成果が出たと言っても良いだろう、何故なら本当に旨そうだからだ、トマトの酸味の良い匂いは勿論、スープの色もとても旨そうだ……あぁ一口食べたい。

「ん、どうしたしぃ坊……食わんのか?」
「たっ食べるぞ!」

おっといけない……もう目の前に料理が出されてるんだ、冷めない内に食べてしまわないといけない。

「頂きます」

俺はそう言って出された料理を今一度良く見てみる、ごくりっーーあぁよだれが出て来そうだ、それはトローリ濃厚なチーズとほくほくのポテトが乗ったピザだ、サイズは1人分、少し小さめのピザだ。

「じゃ早速……」

食べよう! 既にピザはカットされている、それを手で掴み口に頬張りゆっくり味わう……あぁ、この濃厚なチーズの味わい……最高だ!

「……旨い」

ついつい言葉に出てしまう、それは仕方の無い事だ。

「へへへ……」

鬼騎は照れ臭いのか鼻を掻いて横を向く、鬼騎の料理はもっと誇るべきだ……だって旨いんだから!

「シルク君ってさ……顔に感情が出るよね?」
「えっ……そうか?」

ラキュはミネストローネをスプーンですくい口に頬張り話し掛けてくる、ふむ……自分ではそんな事は無いと思う。

「確かにそうじゃのぅ……ラキュの言う通りじゃ!」
「いやいや……そんな事は無いだろう」

ロアにも言われてしまった……そんなに顔に出てたか?

「前にクータンの家に行った時に出されたケーキを食べた時だってそうだったよ?」

あぁ、あのカボチャケーキの事か…あれも本当に旨かった、出来ればもう一度食べたいな……そう考えながらピザを手に持ちかじる、うん旨い!

「ほら、今も顔に出てる」
「うっ……」

なんか……指摘されると恥ずかしいな。

「くふふ……顔が真っ赤じゃぞ?」
「煩い!」

何だろう……この姉弟、2人して俺をからかって来てないか?

「顔に出ちゃ悪いかよ……」

俺は、こほんっーーと咳払いし話す、ラキュは首をふって直ぐに答えてくる。

「そんな事は無いよ、見ていて楽しいよ」
「楽しい!?」

それ、自分がからかいたいだけじゃないか? すると腕組みをしてラキュを睨み付ける人……じゃくて鬼が口を開いた。

「相変わらず良い性格しているな貴様は……」
「ねぇ、それって皮肉? 喧嘩売ってるよね……」

ラキュも鬼騎を睨み返して険悪な雰囲気になる、おいおい……また喧嘩するのかよ、そう思った時だ。

「よもや食事中に喧嘩なんてせんよなぁ?」

ものっ凄い低い声で恐ろしい程の覇気を発して語るロア……この3人の中で一番恐ろしい、それを見た鬼騎とラキュは直ぐ様姿勢を正しにっこりと笑う。

「姉上……こんな所で喧嘩なんてするわけ無いだろう?」
「そうだ! するわけ無いぞ? かっかっかっ!」

明らかな作り笑顔……成る程これが魔王の威厳か、ちょっぴり格好良いな。

「シルクよ」
「ん?」

おっと、突然話し掛けて来たぞ、何の様だ?

「そのピザと言う物、わらわも欲しいのじゃが……」

何だ、そんな事か……。

「良いぞ、ほらっ」

そう言ってピザが乗った皿をロアの方へ寄せる、するとロアは、ぷくっーーと頬を膨らませて元の位置に戻してくる。

「えと……ロア?」

なっ何だ……欲しいんじゃ無いのか?  意味がわからない……するとロアは目を瞑り口を開けて来た……あぁ成る程、そう言う事か。

「自分で食べろ……」

そう言ってまたロアの方へと皿を寄せる、そんな事をされたロアは当然黙ってはいない。

「なっ何でじゃ! おなごが可愛らしく口を開けて待っているんじゃぞ? そしたら物を入れるのが当たり前じゃろうが!」

がくがく俺を揺すりながら話し掛けてた来た。

「残念ながらお前の当たり前は世間一般的には当たり前とは言わないぞ?」

格好良いなと思ったらこれだ、自分じゃ収拾がつかないと思い助けを求めようとラキュの方を見てみる、そしたらラキュは口元をにやつかせていた……おい、今なに考えてるんだ? 変な事は絶対に言うなよ?

「そう言えばシルク君……風邪引いた時誰が看病してくれたんだったけ?」

……は? 何で今そんな事を言うんだ?

「それは皆だろう」

そのお陰で俺は元気になったんだ、感謝の思いしかない。

「まぁそうだけどさ……一番シルク君の事を心配して看病してくれたのって……姉上だよね?」
「んなっこの愚弟今そんな事……そう言う事か」

恥ずかしがるロアだが、途中でラキュの方を見て怪しい笑みを浮かべる、?? 何だ? ラキュは何を考えている? 何か知らないが鬼騎が額を押さえている……。

「ねぇ姉上……看病って大変だったよね?」
「それはもう大変じゃった……愛するシルクの為に頑張って看病したのじゃ」

何処か芝居じみているな……あれ? この流れなんか不味い気がして来たぞ。

「それは大変だったよね……ねぇシルク君」
「なっ何だ?」

何だその満面の笑みは……無性に逃げ出したくなってきたぞ。

「お礼にしてあげなよ……例のあれ」

……こいつ言いやがった、俺に『例のあれ』をやれって言いやがった! 絶対面白がって言ったよな。

「あのなラキュ」
「まさかしないの? シルク君ってそんなに恩知らずなんだ……」

良心にぐさっと来る言葉を言うな! 断り辛くなるだろう!

「ほらシルク君、姉上待ってるよ」
「ん……っ!」

そんな言葉を言ってくるラキュ、嫌な予感がするも後ろを向いてみる。

「……」

そこには口を開けているロアがいた。

「ほらシルク君早く食べさせてあげなよ」
「……後で叩いてやる」

もう断れない……此処で断ったら絶対に煩くなる、もう『例のあれ』をしなくちゃいけない……そう『例のあれ』とは『あーん』の事だ。
人に食べ物を食べさせてあげるあれだ。

「……これっきりだからな」

そう呟いて俺はピザを一切れ持つ、みにょーんと伸びるチーズを上手く巻いて取る。

これ……思ってた以上に恥ずかしいな、さっさと済ましてしまおう。
そう思ってピザをロアに食べさせる。

「あちゅいっ!」
「あっ……すまん」

熱かったのか、それは俺をこんな目にあわせて罰だ。

「はぅ……はぅぅっ!」

ロアは口の中でピザを「あつあつ」言いながら噛んで呑み込む。

「全く……食べさせる前にふぅーふぅーしておかんか」
「すまんな、言ってなかったからやなかったんだ」

ロアを思い切り睨んでやる俺、だが本人は何処吹く風……仕様がない奴だ。

「あははははっ!いやぁ面白かった」

俺の隣で腹を抱えて笑うラキュ……今一瞬殴りそうになってしまった。

「お前等早い所食ってくれ、冷めちまうだろ」

呆れながら鬼騎は語る「それもそうじゃな……」と言って何事も無かったかの様に食べるロア……色々言いたい事があるが今は突っ込まない、鬼騎の言う通り早く食べてしまおう、冷めてしまったら鬼騎に悪いからな。

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