どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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ハロウィンも終わって、数日過ぎたある日、服も元通りにし、何気ない日々を送る……筈だったのじゃが、そうはならんかった。

シルクは今日も部屋からは出てこない。
しかし食事をおけばきちんと食べるし、服を置けばきちんと取る。
つまりは何度か扉を開けるという事が分かるの。

それを踏まえて、わらわはある作戦を決行しようとしておる。

「…………」

あむあむっもぐもぐっむぐむぐっーー
その部屋が見える位置、わらわは陰から監視しておった、鬼騎に作ってもらった"あんぱん"なる食べ物と牛乳を手にしてな。

ふむ、美味しい……実に美味じゃ。
その味に舌鼓しながら、じぃっと扉の方を見る。

出てこん、シルクは出てこん……。
今中で何をしておる? じゃが、ずぅっと部屋の中にいないと言う事は分かっておる。

準備は出来ておる、何時でもいける。
後はタイミングじゃ、ぬかるでないぞわらわよ。

ごくりっ……。
「中々出てこんな」

こうやって監視してると気持ちが焦ってしまうのぅ。
はよ出てこい、はよ出てこい。

焦り過ぎて、足をパタパタさせてしまう。
焦りを静める為に、あんぱんをパクリ……はふぅ、美味しい。

おっと、食ってる場合ではないか。
しかしのぅ、待ってる間暇じゃしなぁ……はよう出てこんかなぁ。
じっと待ってるのは苦手じゃ、身体が疼いて仕方無い。

「あぁもうっ、焦れったい!」

あれじゃ、もうあれじゃ! わらわに待つと言う物は無理じゃ! と言うかこちとら既に長い事待ったんじゃ。

たった数日かも知れんが、わらわにとっては長い年月待ったのと同じじゃ!
じゃから突撃じゃ! 今すぐ突撃じゃぁぁぁっ!!

「うぉぉりゃぁぁぁぁっ!!」

ダダダダダダダッーー

叫びながらダッシュする! その勢いのまま扉を、ドォォォッン!! と蹴っ飛ばす。

「っ!!」

そしたら、驚いたシルクを見付けた。
ベットに寝そべっておる、髪はボサボサ、目にはクマふむ、相当思い悩んでる事があるらしい。
まぁ、それは一旦置いといて……。

「連行じゃ!」
「っ!」

驚いてシルクが何かを言う前に、颯爽とシルクに近付き担ぐ。
今はお姫様抱っこは無しじゃ、肩に担いで荷物扱いじゃ!

「ろっロア?」
「うるさい! ちと黙っておれ!」
「えっ……あ……はい」

戸惑うシルクを黙らせ、部屋から出ていく。
出ていく時、扉が壊れてたのが目に入ったが……今はスルーじゃ。
今はシルクから話を聞くことが先……だと思ったんじゃが。

「…………」

うむ、流石に臭うの。
酸っぱい臭いがする、いつものシルクの匂いはしない。

これはあれかの? 何日も風呂入っとらんからか?
確実にそうじゃろうなぁ、まったく……部屋を抜け出したのなら入ればよいのに。

まぁ……引きこもりたかったから、誰かに見付かりたくない為なのは分かるがな。

黙ったまま、ずんっずんっーーと歩いていく。
担がれたシルクは戸惑っておる、やたらとオロオロしてるのを感じる。
そりゃ突然わらわが現れて担がれればそんな反応も取るじゃろう。

じゃがな、そうさせたのはシルクじゃぞ? わらわは心配したのに……理由も話さんのは、酷いではないか。
もっとわらわを頼らんか。

そう思いの丈を心の中でぶちまけた所で、やることをやってしまうかの。

「シルクよ」
「……なんだ?」

戸惑いはそのままで、低い声で話してくる。
ふむ……元気ないのぅ、いつもの声音はどこ言った。

「色々聞きたい事があるが……まずは風呂じゃ。話はそれからじゃ」
「……ふろ?」

そう、風呂じゃ。
まずは身体を綺麗にせねばならん。
臭いと汚れを落として、まずはサッパリしてもらう。

もちろん異論はなしじゃ。

「隅々まで激しく洗ってやる。精々心の準備をするんじゃな」

若干睨みを据えて言ってやった。
いつもなら顔真っ赤にして「はぁぁっ!?」と言ってくる筈なんじゃが……今のシルクは。

「……そうか」

とだけ。
えぇぇぇ……なんじゃそれ、受け入れはしてくれたものの、それじゃとシルクじゃない感じがするのじゃぁ。

なぁんかやる気なくしたのぅ、じゃがしかし! やらねばならんのじゃ。

わらわはシルクが大好きじゃ。
大好きな人には何時も笑顔で居てもらわねばならん。
じゃからシルクよ、多少……いいや、かなり激しくやらせて貰うぞ。
覚悟するのじゃ!

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