どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

378

ロアが暴れだした頃、シルクは一人でロアの部屋にいた……。

「もう夕方だぞ、流石に遅すぎないか?」

はぁ……とため息を吐いて、まだかまだかとロアを待つ。
ロアに部屋にいる様に言われて暫くたったが、一向にこない、来る気配が無い。
流石にアヤネの事とか色々な事を考えるのは一旦止める。

テラスに立って外の様子を見る。
太陽は既に傾いて、街が茜色に染まってる。

「一体何処で何をしてるんだ?」

ぼけぇっとしながら色々考えてみる。
もしかしたら外に出ていたりするのか? そうだとしたら、もう暗くなるから速く帰って来て欲しい。

それとも城の中にいるのか? だったら、そろそろ俺の所に来てくれないかな。
ずっとロアの部屋にいて暇で暇でしかたない。
本棚にある本は魔界の文字か? そういうので書かれてるから分からないし、ずっと寝そべってる訳にもいかないから暇を潰せない。

もうどうしようか、と思ってた矢先、考え付いたのが外の景色を見る事だ。
別にロアの言葉を無視して出ていっても良かったが、これまでの経験上でそれは止めておいた。
言うことを無視して、コスプレなんてされたくないからな…。

「あぁ、ほんと遅いなぁ」

ぐぐぅっと背伸びして身体を解す。
んー…実際何をしてるんだろう、また俺の為に色々してくれてるんだろうか? そうだとしたら申し訳無い。
その時は、きっちりとお礼の言葉を言おう。

「はぁ…」

ため息をつきながら手すりに腕を置き、その上に顔を乗せて思い悩んだ。
ロアは俺の事が本当に好きなんだな…いつもいつも笑顔を見せて「好き好き」言ってきて、抱き付いたり触ってきたり、コスプレさせに来たり色々してくる。

鈍い俺でも分かるよ、ロアの俺への気持ちは本物だ。
それ故に、あいつがまた告白してきた時、俺はなんと言えば良い?

俺がナハトを想う気持ちは本物だ。
だから俺はまた、告白を断らなければならない。
……っ!? いっいやちょっと待て、こっこんな事、今まで考えもつかなかった。

1回目の告白の時は、 こんな事は思わなかった。
なのにだ……なっなんでだ? 気持ちの変化か? それとも、アヤネを振って悲しむ顔を見たからか?

「こっ今度、ロアの告白を断ったら…ロアはどんな顔をするんだ?」

気付いたら、疑問を口に出していた。
焦りが満ちた顔で想像する、悲しい顔をするのか? それとも泣いてしまうのか? 色々なロアの悲しい表情が思い浮かんで来て……凄く恐くなった。

カタカタと手が震え、頬に冷たい汗が伝う。
嫌だ…もう2度と、あんな悲しむ顔を見たくない。
そんな恐怖に襲われて、がくっと下を向く。

と、その時だ。
ばさっ……ばさっ……
何かが羽ばたく音が聞こえた。
いや、羽ばたく音にしては大きすぎないか? 風圧がここまで来てる。

「なん……だ?」

その音が気になり、上を見上げる、そこには……。

「なっ、あっあれは!!」

どっドラゴンだ! 緑色のドラゴンがいるっ。
色々な悩みが一気に吹き飛び、そのドラゴンに釘付けになってしまう。

「……あっあのドラゴン、下に降りるぞ」

ばさっ……ばさっ……ばさばさっ
大きく雄大な翼を器用に羽ばたかせ、ドラゴンは地面に着地する。
場所は、この城の入り口前だ。
その性で、城前にいるケルベロスのケールが『ばうっ、がぅっ、わぅっ』と吠える。
そんな威嚇に全く意に介さないドラゴンは、ばふぅぅん……と強すぎる鼻息を吹く。
そしたら、その鼻息でケールは『きゃいんっ』と悲鳴をあげ軽く吹き飛んでしまった。

おっおいおい、まさか……あのドラゴン、襲撃に来たんじゃないだろうな? そんな事を思ってしまい焦る。
ん……あっあれ? ドラゴンの背中に誰か乗ってる? 偉く気品の良い服をを着た男…か? 遠くからだから良くわからないが、多分そう言う奴が乗っている。
その男がドラゴンから降りて、ドラゴンに一礼した。

そうした後、男は城へと足を進めていく。
ふっ不審者だ、間違いなく不審者だ、こんなのが普通の来客な筈がない。
これは早急に伝えた方が良いかもしれない。

「ロアに、ロアに伝えないと!」

そう思い立った俺は、素早くテラスを出て、部屋を飛び出した。
たっ頼む…どうか俺の思い過ごしであってくれ。
そう願いながら走っていった。

「どうやら魔王は俺と結婚したいらしい」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く