どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

384

アヤネの事を全てフドウに話した。
そしたら険しい顔をして、テーブルに膝をつき「むぅ……」と唸りだした。

その瞬間、背筋がゾクゾクする緊迫感に包まれる。
くっ……ずっと考え込んでるみたいだけど、何言うのかな? まず初めに怒鳴ったりする? 見た目が厳格そうだから怒鳴りそうだね……勝手なイメージだけど。

あ、でも……初対面の相手にそれは無いかもしれない。
でもこの人はアヤネの父上だからなぁ、どうなるか分からない、だから恐いんだよね。
あぁ、もぅ……ヒヤヒヤが止まんないなぁ、そう思いながら、ぎゅっと手を握る。

ヴァームとヘッグ、脳筋もそんな仕種をしていた。
うつ向いたり、目を瞑ったり、ごくっと唾を飲み込んだり……フドウの出す威圧感に気圧されてる。

「んっんんっ!」

っ! フドウが咳払いした。
その瞬間、僕を含めた全員がビクッ、と身体を震わせる。
そのあと、視線がフドウに集中する。

「あぁ……んー……その、なんだ」

髭を擦りながら言い辛そうに話し出す。
そして、暫く何も喋らなくなった。

え、やめてよ急に黙るの。
妙にピリピリして来るじゃんか。
はやくなんか喋ってよ……なんて思った時だ。

「……なんかぁ、ややこしくないか?」

そんな事をさらっと言ってのけた。
その瞬間、ヘッグと鬼騎がずるっと椅子から滑り落ちかけた。
いっいや、まぁそうなんだけどさ……確かに色々ありすぎてややこしい話だよ? でもさ、他になんか言う事あるんじゃない? 「なんでアヤネが失恋せねばならん!」とかさ。
そう言うこと言われるかと思ったんだけど……言わないんだね。

でさ、「ややこしくないか?」って、あまりにも軽く言い過ぎじゃないかな? それにそう言う事、苦笑いしながら言う?

予想の斜め上を行き過ぎる反応で軽く転けたよ。
怒られるかと思って、身構えた僕のドキドキを返してくれるかな?

「我がここに来るまでそんなややこしい事になってたとは……。人生とは難しいものだ」

フドウはそんな僕の気持ちを知らないで、うんうんって感じに頷く。
いや、うんうんじゃないよ、そんな反応とってないで何か言ってよ。

斜め上見て悟ってないでさ、早いとこ喋ってくれないと困る。
あぁ言う話したから僕等からは話し辛いからさ、頼むよ。

「そうか、失恋したのか……ふぅむ」

ふぅぅぅっ……と、長く息を吐いて腕を組む、そしてまた黙ってしまった。
あぁ話が進まない、これ、ずぅぅっとこの状態が続く気がする。

僕たちに色々聞いたりしないで良いの? まっまぁ……反応は人それどれなんだろうけど、でも……そうなると気まずいんだよ、だからなんか喋ってくれないかな?。

「あぁ……えと、そろそろフドウと会った時の話をしていいかな? 聞きたいだろう?」

と、その時だ。
ヘッグは、苦笑いしながら話を変えようとする。
ナイスだヘッグ、このままだと場がグダグタになる所だった。

「あぁ、うん。聞きたいね」

という訳で、それに乗る為に同意する。
そしたら鬼騎も頷いて応える。

「では、今度こそ話そうじゃないか」

ニヤリ、と不適に笑うヘッグ。
よし、これでこの気まずい雰囲気をなんとか出来そうだ。

「えと、フドウもそれで良いかい?」

ヘッグが一応フドウに確認すると、暫く無反応だったが遅れて。

「構わないぞ」

と答えた。
それを聞いて「ふふ、では話そうじゃないか!」と何時も通りキメ顔でポーズを取る。
そんなポーズをスルーして、ヘッグの話しに集中する。
ちょっと、いや……かなり強引だけど雰囲気の入れ換えは出来たみたいだ。

「そう、あれは今より少し前の事だった」

ヘッグは思い出すかの様に、遠い目をして話し出した。
さぁ……ヘッグとフドウはどうやって会って、なんの経緯でここにやって来たのかが分かる。
その事をじっくり聞こうじゃないか。

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