どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
392
ヴァームが姉上を抱き締める。
大きな胸に顔を埋めて声を圧し殺して泣いている。
暫くこのまま泣くのかな? そう思った姉上は何処かに座ろうとした。
「ありがとうございます。大分落ち着きました」
だけど、早くもヴァームは落ち着きを取り戻した。
すっと姉上から離れて、キリッとした顔になる。
え? 変わり身早くない?
「はや! 変わり身はや!」
あ、姉上も同じ事思ってたみたいだ。
確かに早い、さっきまであんなに落ち込んでたのに……なんて変わり身の早さ、まるで何事も無かったかの様にしれっとしてる。
「え、その……ヴァームよ。お主、その……平気なのかえ?」
「何がでしょうか?」
あっ、それ言っちゃうんだ。
今までの事なんて無かったように振る舞うんだね。
「いっいや、だってほら。止めるとか言ってたし? その……なにかあったんじゃ無いのかえ?」
オロオロしながら言うけど、ヴァームは涼しい顔で。
「あぁ、ありました。ですがもう大丈夫です」
「……」
こんな事を言ってきた。
これには姉上、何も言えず「えぇぇ……」と渋い顔して困った。
くははは……。
もう全く気にしてないんだ、ヴァームって不思議な所があったんだね。
と言うより、あまり思い悩まないタイプなのかも知れない、にしても変わり身速すぎだけどね。
「ロア様」
「なっなんじゃ?」
やたらと警戒する姉上、ずざっと後ろに下がって身構える。
「改めて言います。先程は失礼しました……」
真っ直ぐ姉上を見て、また謝った。
そんなヴァームに一瞬驚き、警戒を解く。
「あぁ……ん、うん。まぁ……許す。謝ってくれたからの」
そう言いながら視線をずらし気まずそうに頭をコリコリかく。
そして……なんだか喋りにくそうに口をモゴモゴさせてる。
ん? 何か言うつもりなのかな?
「まぁそのぉ……教えてくれんかの。さっき、なんであんな事言ったのじゃ?」
……そうか、姉上は寝てたからその理由を知らないんだ。
「それは……」
言い辛そうに唇を噛む。
そして意を決したのか……少しずつ、ゆっくり淡々と理由を話始めた。
◇
「と言う訳です……」
時間を掛けて理由を話せたヴァーム、その間姉上は黙って話しを聞いていた。
その話が終わって、姉上は目を瞑る……暫く何かを考える様に腕を組み、目を開けた。
「ふむ……なるほどのぅ」
そう言いながら大きく息を吐いた。
「ヴァーム、あとラキュ。率直に聞くぞ」
そして、キリッとした顔をする姉上。
ん、なに? 何を聞かされるの?
「わらわってそんなに自分に自信が無いように見えるのか?」
「はい」
「そうだね」
そう思ってるから直ぐ答えてあげた。
そしたら、がくっと肩を下ろした。
「そっ即答……じゃと」
いやだって、そう思うもん。
そんなに驚く事なのかな?
「うぐぅ……そのぉ、なんじゃぁ。ダメじゃ、何言って良いか分からん」
難しい話だったもんね、言うことが出てこないのは仕方無いよ。
「複雑じゃなぁ、頭が痛くなってきたのじゃ」
そうだね、複雑だよ。
でも、難しく考える必要なんて無いんじゃない? ただ姉上は自分に素直になれば良い話だもん。
……ん? 姉上、腰に手を当てたね、そしてヴァームを見つめた。
「ヴァーム」
「はい」
「わらわを思って色々してくれたのは正直嬉しい、じゃが……一部間違った行動をしたのは、分かるな?」
……そうだね。
間違った行動、アヤネを失恋させるように導いた事。
結果、そうなるとしても他人がやって良い事じゃない。
ヴァームは、姉上の言葉を聞いて頷いた。
「はい」
「うむ、では……きちんと謝らないといかんな。まぁかなり難しいと思うけどのぅ」
そうだね、難しいね。
今はこんな状況だし、言うにしても、とても言い辛い事だ。
でも、ヴァームは真っ直ぐ前を向いて「はい、必ず」と答えた。
それを聞いて姉上は「そうか」と言って微笑んだ。
「よし、じゃぁ一旦この話しは保留じゃ!」
パンっ! と手を叩いて「くはははは」と笑う。
保留にするんだ、でもそうか……アヤネに謝る前にする事があるもんね。
「取り合えず、まずはシルクをなんとかする! まぁ……どうするかなんて考えが出てこんがな」
「まぁ……そう、だね」
姉上の言う通りだ。
どう関わって良いかわからない、だから同意した。
ヴァームも同じ意見なのか黙って首を振っている。
「……じゃが、始めにするべき事だけは分かる!」
「え、そうなの?」
「うむ。ってラキュよ……やっと喋ったな。さっきまでずぅぅっと黙ってたのに」
「うっ煩いよ。話に入るタイミング分かんなかったんだよ」
そんな事は良いから、始めにする事を教えてよ。
そう姉上に言うと、突然不適な笑みを浮かべ腕を組む。
あ、これあれだ。
きっとアホな事言う流れだ、僕には分かる。
「始めにするべき事、それは……食事じゃ!」
そう言いきった後、姉上のお腹から"ぐぅぅぅぅっ"と音がなった。
ほらやっぱり、アホな事だったよ。
なんだよそれ、いまの状況で言うことなの? なんて思ったけど、そうだね……姉上の言う通りお腹が空いた。
暴れた姉上を止めたり、難しい話とかしたからね……同時に疲れもしたよ。
「という訳で、行くのじゃ」
にっと笑った姉上は、僕とヴァームの手を握って部屋を飛び出した。
あぁもぅ、手握んなくても自分で行けるっての。
そんな事を思って、食堂へと引っ張られていく。
なにはともあれ、仲直りは出来た……後はシルク君とアヤネの事だけ、しっかりと解決しないといけないね。
でもその前に、腹ごしらえしようか……ちゃんと解決出来る様に。
大きな胸に顔を埋めて声を圧し殺して泣いている。
暫くこのまま泣くのかな? そう思った姉上は何処かに座ろうとした。
「ありがとうございます。大分落ち着きました」
だけど、早くもヴァームは落ち着きを取り戻した。
すっと姉上から離れて、キリッとした顔になる。
え? 変わり身早くない?
「はや! 変わり身はや!」
あ、姉上も同じ事思ってたみたいだ。
確かに早い、さっきまであんなに落ち込んでたのに……なんて変わり身の早さ、まるで何事も無かったかの様にしれっとしてる。
「え、その……ヴァームよ。お主、その……平気なのかえ?」
「何がでしょうか?」
あっ、それ言っちゃうんだ。
今までの事なんて無かったように振る舞うんだね。
「いっいや、だってほら。止めるとか言ってたし? その……なにかあったんじゃ無いのかえ?」
オロオロしながら言うけど、ヴァームは涼しい顔で。
「あぁ、ありました。ですがもう大丈夫です」
「……」
こんな事を言ってきた。
これには姉上、何も言えず「えぇぇ……」と渋い顔して困った。
くははは……。
もう全く気にしてないんだ、ヴァームって不思議な所があったんだね。
と言うより、あまり思い悩まないタイプなのかも知れない、にしても変わり身速すぎだけどね。
「ロア様」
「なっなんじゃ?」
やたらと警戒する姉上、ずざっと後ろに下がって身構える。
「改めて言います。先程は失礼しました……」
真っ直ぐ姉上を見て、また謝った。
そんなヴァームに一瞬驚き、警戒を解く。
「あぁ……ん、うん。まぁ……許す。謝ってくれたからの」
そう言いながら視線をずらし気まずそうに頭をコリコリかく。
そして……なんだか喋りにくそうに口をモゴモゴさせてる。
ん? 何か言うつもりなのかな?
「まぁそのぉ……教えてくれんかの。さっき、なんであんな事言ったのじゃ?」
……そうか、姉上は寝てたからその理由を知らないんだ。
「それは……」
言い辛そうに唇を噛む。
そして意を決したのか……少しずつ、ゆっくり淡々と理由を話始めた。
◇
「と言う訳です……」
時間を掛けて理由を話せたヴァーム、その間姉上は黙って話しを聞いていた。
その話が終わって、姉上は目を瞑る……暫く何かを考える様に腕を組み、目を開けた。
「ふむ……なるほどのぅ」
そう言いながら大きく息を吐いた。
「ヴァーム、あとラキュ。率直に聞くぞ」
そして、キリッとした顔をする姉上。
ん、なに? 何を聞かされるの?
「わらわってそんなに自分に自信が無いように見えるのか?」
「はい」
「そうだね」
そう思ってるから直ぐ答えてあげた。
そしたら、がくっと肩を下ろした。
「そっ即答……じゃと」
いやだって、そう思うもん。
そんなに驚く事なのかな?
「うぐぅ……そのぉ、なんじゃぁ。ダメじゃ、何言って良いか分からん」
難しい話だったもんね、言うことが出てこないのは仕方無いよ。
「複雑じゃなぁ、頭が痛くなってきたのじゃ」
そうだね、複雑だよ。
でも、難しく考える必要なんて無いんじゃない? ただ姉上は自分に素直になれば良い話だもん。
……ん? 姉上、腰に手を当てたね、そしてヴァームを見つめた。
「ヴァーム」
「はい」
「わらわを思って色々してくれたのは正直嬉しい、じゃが……一部間違った行動をしたのは、分かるな?」
……そうだね。
間違った行動、アヤネを失恋させるように導いた事。
結果、そうなるとしても他人がやって良い事じゃない。
ヴァームは、姉上の言葉を聞いて頷いた。
「はい」
「うむ、では……きちんと謝らないといかんな。まぁかなり難しいと思うけどのぅ」
そうだね、難しいね。
今はこんな状況だし、言うにしても、とても言い辛い事だ。
でも、ヴァームは真っ直ぐ前を向いて「はい、必ず」と答えた。
それを聞いて姉上は「そうか」と言って微笑んだ。
「よし、じゃぁ一旦この話しは保留じゃ!」
パンっ! と手を叩いて「くはははは」と笑う。
保留にするんだ、でもそうか……アヤネに謝る前にする事があるもんね。
「取り合えず、まずはシルクをなんとかする! まぁ……どうするかなんて考えが出てこんがな」
「まぁ……そう、だね」
姉上の言う通りだ。
どう関わって良いかわからない、だから同意した。
ヴァームも同じ意見なのか黙って首を振っている。
「……じゃが、始めにするべき事だけは分かる!」
「え、そうなの?」
「うむ。ってラキュよ……やっと喋ったな。さっきまでずぅぅっと黙ってたのに」
「うっ煩いよ。話に入るタイミング分かんなかったんだよ」
そんな事は良いから、始めにする事を教えてよ。
そう姉上に言うと、突然不適な笑みを浮かべ腕を組む。
あ、これあれだ。
きっとアホな事言う流れだ、僕には分かる。
「始めにするべき事、それは……食事じゃ!」
そう言いきった後、姉上のお腹から"ぐぅぅぅぅっ"と音がなった。
ほらやっぱり、アホな事だったよ。
なんだよそれ、いまの状況で言うことなの? なんて思ったけど、そうだね……姉上の言う通りお腹が空いた。
暴れた姉上を止めたり、難しい話とかしたからね……同時に疲れもしたよ。
「という訳で、行くのじゃ」
にっと笑った姉上は、僕とヴァームの手を握って部屋を飛び出した。
あぁもぅ、手握んなくても自分で行けるっての。
そんな事を思って、食堂へと引っ張られていく。
なにはともあれ、仲直りは出来た……後はシルク君とアヤネの事だけ、しっかりと解決しないといけないね。
でもその前に、腹ごしらえしようか……ちゃんと解決出来る様に。
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